「熟成古酒ルネッサンス2017」で熟成酒体験の幅が広がりました
長期熟成酒研究会が年に一回開催する熟成古酒ルネッサンス2017。熟成古酒が100種類以上試飲できるイベントです。
長期熟成酒研究会が年に一回開催する熟成古酒ルネッサンス2017。熟成古酒が100種類以上試飲できるイベントです。
もっと色々な古酒を味わいたいと参加
数年前、京都にある日本酒バーよらむで35年熟成のAFSと出会ってから長期熟成酒の世界に引き込まれました。その後日本酒フェアで長期熟成酒研究会のブースでいろいろな古酒を体験、ますます深みにはまり、自家熟成もはじめました。
そして、この「熟成古酒ルネッサンス2017」のイベントページを見て、秒でポチったのでした。
会場に到着
会場に到着すると、すでに受付前には長い行列。やっと中にはいったら超満員。会場のキャパを完全に超えていました。人混みをかき分けないとブースがあることさえもわからないほどの混雑。
熟成古酒は、マニアックな嗜好だと思っていました。自分自身が古酒の魅力に惹かれていった経験から考えて、深いファンが多いとは思っていましたが、こんなにもたくさんの人が興味を持っているとは思いもよりませんでした。
真っ先に、自家熟成ブース
真っ先に向かったのが、会場一番奥にある熟成古酒のブース。名古屋にある飲食店の店長・料理長の斎藤三晃さんが自ら熟成した日本酒が並びます。斎藤さんは17年前から日本酒の熟成を始めたそうです。
斎藤さんは語ります。「熟成古酒は10年がひとつの目安、まず10年寝かしてみること」
写真左から越乃寒梅、るみ子の酒、松竹梅、達磨正宗、吉乃川と並びます。
越乃寒梅の熟成感、味の広がりが印象的でした。るみ子の酒はこのラベルが使われ始めた最初の頃のものだそうです。
「君子蘭」は一升瓶の底のほうに数センチだけ残っていたものを忘れていて10年以上経ったものだそうで、とてもバランスの取れた熟成酒になっていました。
三重県津市にあった飯田酒造の銘柄です。すでに廃業しているそうです。
80年ものの古酒!
自家熟成酒を味わっているときに突然のアナウンスで「参考展示品」が登場しました。82〜84年前の松竹梅です。
瓶の肩の部分には「松竹梅」とエンボスが見えます。ラベルはほとんど剥がれていますが、梅のモチーフが残っています。
残念ながら試飲はできず、瓶を見るだけでしたが、どんな酒になっているのか興味津々です。このあと自然に撮影会になりました。ソーシャルメディアには大量の写真がアップされていることでしょう。
玉川(木下酒造・京都府京丹後市)
次に向かったのが玉川ブース。4年熟成の「Vintage」と同じく4年熟成の「Time Machine」などが出品されていました。
Time Machineは常温と燗の両方を試飲しましたが、燗のほうが甘さがまろやかに感じられて好きでした。甘いお酒が好きなら常温のほうがいいかも。私は両方好きです。
👉 玉川 Time Machine 3種飲み比べと江戸時代の酒造りレシピ解説|日本酒テイスティングノート
以前、熟成期間が1年のTime Machineをあんこに合わせてみたこともありました。こんどは4年熟成とも合わせてみよう。
コウノトリラベルも出品されていました。何度も飲んだことのあるお酒なので、他の参加者に譲るため、試飲しませんでした。
👉 「玉川」関連記事(テイスティングノート・蔵訪問など)
森本仙右衛門商店
三重県にある森本仙右衛門商店の長期熟成酒です。
Morimoto Vintage Sake 1998は、日本酒レッスンその8でもテイスティングしました。ですのでこちらも譲りました。
こちらはなんとにごり酒! 3年ものを持ってくるつもりが間違えて6年ものしか残っていなかったのでそれを持ってきた、と蔵の方。うれしい誤算とはこの事(消費者にとって)。
さっそく試飲。6年経ってるのにまだガス感が感じられます。濁りの熟成っていいなー。こちらは販売されていたので購入しました。
いい色合いでしょ。
花垣(南部酒造場・福井県大野市)
つぎに引き寄せられたのが、花垣のブースです。一本一本丁寧にお酒の説明をする蔵元さんのもとに人だかりができていました。
花垣の南部酒造場では、長く熟成酒に力を入れているとのこと。
写真真ん中の一升瓶は「全麹」。すべて麹で仕込んだお酒です。酒税法の関係で清酒の原料を米と米麹にするために少しだけ、5〜10%くらい蒸し米を入れているそうです。
写真右側の細い瓶は「貴醸年譜」シリーズ。1、3、7、10年と年齢が違う4種類の貴醸酒の熟成酒です。使用米は地元産の五百万石とハナエチゼンを70%精米。蔵元さんによると貴醸酒は一般的な日本酒に比べて熟成速度が3倍とのこと。
「貴醸年譜」1年は透明感のある甘味と米を感じさせる香りのお酒でした。
7年は食前酒にはちょっと重たいかな。料理と合わせるのはむずかしいけど、食後酒として楽しんだり、アイスクリームやブランマンジェにかけて食べたいと思いました。
7年のぬる燗(38度)も試飲。こちらは、テクスチャと甘味が軽やかになりました。
龍力(本田商店・兵庫県姫路市)
龍力のブースです。「龍力 純米大吟醸 神功」という熟成酒が出品されていました。
「神功」はマイナス3度の低温で5年間熟成した低温熟成酒。熟成による味わいの深み、丸みを感じましたが、老ね香のような熟成香が全くないお酒でした。
写真にはありませんが、シェリー樽で熟成させた「J. Saliq」は冬場だけ半年熟成させたものだそうです。
👉 長期熟成酒 J・SALIQ ジェイ・サリック|日本酒テイスティングノート
木戸泉(木戸泉酒造・千葉県いすみ市)
木戸泉ではafsシリーズを試飲しました。思えば、私がはじめて飲んだ熟成古酒はafsの35年熟成でした。「純米afs生」もお気に入りの一つです。
下の写真は、1年、5年、10年、20年と飲み比べることができた木戸泉の「純米原酒」と「秘蔵古酒」。
若い順に飲み進めていくと、5年で熟成感をしっかり感じ、10年では軽やかになし、15年ではまた別の熟成感を感じました。別の熟成感が出てきたのです。
5年の延長線上で10年の熟成感、しかし15年で質の違う熟成感を感じたのは驚きでした。
岩の井(岩瀬酒造・千葉県夷隅郡御宿町)
木戸泉の隣りにある岩の井・岩瀬酒造。ブースも隣でした。
「古代黒米酒」を試飲しました。今まで飲んだ中で感じることのなかった香りを感じました。ヨード香です。知識では知っていたけれども、はじめてヨード香を感じ取ったお酒になりました。
車坂(吉村秀雄商店・和歌山県岩出市)
車坂のブースでは熟成酒3種類をテイスティング。タイプは違いましたが、それぞれの奥にどこか車坂らしさを感じました。
20年熟成の古酒は、後にテイスティングする機会に恵まれました。
熟成古酒ってこんなに幅広いんだ!
自家熟成から蔵元での熟成、低温熟成から常温熟成まで、色々なタイプの熟成古酒をいちどに試飲できたのはとても貴重な体験でした。熟成古酒体験の幅が広がりました。「こんな熟成の方法があるんだ」「この蔵元さんはこういうふうに考えて熟成させてるんだ」と感じました。熟成酒についての知識が広がり、深まったイベントでした。
最近でこそ日本酒の熟成が注目されていますが、古くから熟成酒を研究し、広める活動をされてきた長期熟成酒研究会の活動は本当に素晴らしいと思います。