世界一の日本酒が決まる Sake Competition 2016 表彰式・授賞パーティー レポート〈前編〉
2016年7月29日、世界一おいしい日本酒を選ぶコンペティション「Sake Competition 2016」が開催されました。その表彰式と授賞パーティーの様子をお伝えします。
2016年7月29日、世界一おいしい日本酒を選ぶコンペティション「Sake Competition 2016」が開催されました。その表彰式と授賞パーティーの様子をお伝えします。
市販酒が出品される Sake Competition
Sake Competitionは、株式会社はせがわ酒店が開催する日本酒のコンペです。「消費者が本当においしい日本酒と巡り会えるよう、新しい基準を示したい」という理念で実施されています。
日本酒のコンペでは、酒類総合研究所が開催する「全国新酒鑑評会」は長い歴史があり、業界に大きな影響力があります。
全国新酒鑑評会とSake Competitionには大きな違いがあります。全国新酒鑑評会では技術の粋を尽くした最高の酒が出品されますが、Sake Competitionでは市販酒、一般に消費者が手に入れることができるお酒が出品されます。全国新酒鑑評会は酒造メーカーの技術力の向上を目指し、Sake Competitionは消費者がおいしい日本酒に出会えることを目指しているという方向性の違いがあります。
順序がわかる出品者にとっては厳しい賞
全国新酒鑑評会では、「入賞」するお酒と「金賞」を受賞するお酒があります。出品するお酒の約半分が入賞し、4分の1が金賞を受賞します。その中での順序は公表されません。
今回のSake Competitionでは416の酒蔵から1,483点が出品されました。その中で上位10位の「Gold」、上位40位程度(部門によって違います)までの「Silver」が公表されます。入賞しなかったお酒の場合、順位は公表されませんが、出品者には伝えられます。あと少しで入賞したのか、それとも最下位に近かったのか、がわかるという厳しい賞です。これは出品者される方のモチベーションにつながっているのではないでしょうか。
審査基準
Sake Competitionの審査は全国新酒鑑評会と同じく、銘柄を隠して行われます。審査員は全国で日本酒造りの技術指導をされている方や、蔵元さんたちです。ということは、全国新酒鑑評会の審査員もされている方も多いと推測されます。
Sake Competitionでは味や香りといった酒の品質の他、料理との相性や飲んで楽しむことができるか、ということも審査基準としています。単独で飲んで完成されている日本酒というよりも、日々食中酒としておいしく楽しめる日本酒が評価の対象となっているということです。
主催者のはせがわ酒店・長谷川浩一さんによると、Sake Competitionでは、なかなか手に入らない「幻の酒」よりも「普段のおいしいお酒」を選んでいるということです。また、出品される日本酒は年々レベルが上がっているとのことです。
海外からの出品
今回注目すべきは、海外で造られた日本酒が出品されていることです。米国5蔵、カナダ1蔵、ノルウェー1蔵から合わせて21点が出品されました。現在米国で日本酒を造っているのは5蔵ありますから、すべての蔵が出品したということになります。カナダの1蔵はOntario Spring Water Sake Companyです。ノルウェーの1蔵は、Nøgne Øです。
残念ながら海外からの出品は入賞していなかったですが、日本を離れた場所で先入観なく造れるという点で、今の日本酒の枠組みを超えた酒ができてくるのではないかという期待が持てます。
豪華な授賞式
Sake Competitionは「純米酒部門」「純米吟醸部門」「純米大吟醸部門」「吟醸部門」「Super Premium 部門」の5つの部門で審査が行われました。それぞれの部門で1位を受賞した日本酒を紹介します。
授賞式では、偉大なサッカー選手で250以上の酒蔵を訪問したという中田英寿さんや、芥川賞作家の又吉直樹さん、女優の高梨臨さん、梨衣名さん、そしてフレンチレストラン「レ・クレアクレアシヨン・ド・ナリサワ」のオーナーシェフ・成澤由浩さんなどの豪華なゲストプレゼンターが登場、セレブ感あふれる華やかな授賞式となりました。
各部門で1位を受賞したお酒をご紹介します。
純米酒部門
純米酒部門の1位を受賞したのは新澤醸造店(宮城県大崎市)の「あたごのまつ 特別純米」。リーデルのトロフィーが贈られました。
新澤醸造店の蔵元・新澤巌夫さんは「去年は2位だったが順位は紙一重。技術力はもちろん、最後の最後のコンマひとつの運まで味方にできる蔵でないと1位を取るのは難しいと思っていた」とコメントしました。
また、宮城県の7つの酒蔵が集まって共同醸造しているDATE SEVEN(ダテセブン)について、「7つの蔵でお互いに勉強をしあうという目的で始めたが、その成果が出てきたのは大変うれしい。皆、上位に入っている。パフォーマンスで売ろうと言うのではなく、純粋に技術を上げていこう、飲んでいただく方に喜んでもらおうという気持ちが形に現れたのがよかった」と語りました。
「今の時代に飲み手のニーズに答える形で造っているのか」という質問に対し、新澤さんは「コンペの結果を分析して来年作ると半歩遅れる。自分が信じている道をもっと先に行って、飲み手にプラスになるような、同じ値段でもっとおいしいものが飲めるようにしていきたい」と答えました。
驚いたのは副賞。JA全農岡山より赤磐雄町米がなんと仕込みタンク1本分! タンクの大きさや想定精米歩合にもよりますが、玄米で1,800kgから2,000kgでしょうか。なんとも豪華です。
純米吟醸部門
純米吟醸部門の1位は仙台伊澤家勝山酒造(宮城県仙台市)の「勝山 純米吟醸 献」。昨年に続く二連覇を達成しました。こちらの副賞はタンク1本分の特A地区山田錦。
仙台伊澤家勝山酒造12代目蔵元の伊澤平藏さんによると「比較的きれいな旨味を出すように心がけた」とのこと。料理との相性についても「旨味をきれいに出していく食中酒、普段飲んでもらいたいお酒、どのような料理にも合わせやすい酒を目指している」と語り、それが評価されたことが本当にうれしいと語りました。
純米大吟醸部門
純米大吟醸部門の1位を受賞したのは愛友酒造(茨城県潮来市)の「愛友 純米大吟醸 備前雄町」。初出品での受賞です。
こちらの副賞もタンク1本分の酒米。特A地区の山田錦です。雄町でなかったのがちょっと残念。
七代目当主の兼平紀子(かねひらみちこ)さんは原料米の備前雄町について「学生時代に、雄町が一度は途絶えた米だということを知り、その時の思いがあったのかどうしてもこの米で作りたかった。なかなか思うようにならない米なので杜氏は使いたがらなかったが、最終的には皆一生懸命造ってくれた」と語りました。
吟醸部門
吟醸部門の1位は此の友酒造(兵庫県朝来市)の「但馬 大吟醸」。
蔵元・木村祥三さんによると、此の友酒造の杜氏さんは但馬杜氏で一番若いくらいの世代だそうです。但馬杜氏の造る酒は低温発酵で長期もろみ、丸みのある酒に仕上がるとのこと。
吟醸部門はアルコール添加をした吟醸酒を対象としています。木村さんは、「一般にはだめだという人もいるが、アルコール添加をすることで香りが立ちやすくなる。最高のものを目指すには少量のアルコール添加が必要」と、アルコール添加技術の重要性について語りました。
Super Premium 部門
今年から新設された Super Premium 部門は、小売価格が四合瓶で8,000円、一升瓶で15,000円以上の日本酒を審査対象としています。
1位に輝いたのは来福酒造(茨城県筑西市)の「来福 超精米 純米大吟醸」。
このお酒には茨城県オリジナルの酒造好適米「ひたち錦」が使われています。来福酒造の10代目蔵元・藤村俊文さんによると、とても硬い米で味の乗りが悪いので、茨城県の他の酒蔵は敬遠しがちだそうです。
「硬いなら硬いなりの特徴を活かそう」ということで限界までの磨きに挑戦。大吟醸のお酒は40〜35%くらいの精米歩合にすることが多いですが、それを遥かに超えるものをやってみたいと考えたそうです。最初は25%、翌年は19%、15%、まだまだ行けるということで数年かけて1桁に到達、いまは末広がりの8%で止めているとのこと。
藤村さんは、「誰もやっていないことをやってみたいということで挑戦し続けた。ここまで削るともったいないなどの批判やSNSでの炎上もあったが、飲んだ方には一切雑味もなく上品で気品のある酒という高い評価を受けている」と話しました。
「どんな人にのんで欲しいですか?」という質問に対し、藤村さんは「海外から来た方や、高級料亭で飲んで欲しい、何よりも批判をされた方に飲んでもらいたい、チャレンジを買ってほしい」と熱く語りました。
また、茨城県の酒蔵が3部門でベスト3に入っていることについて、今後の励みになる、茨城県の名を売るチャンスになると話していました。
その他の受賞酒
この記事では、各部門1位のお酒を紹介しました。このほかの受賞酒については、公式サイトの「Sake Competition 2016 受賞酒リスト」をご覧ください。
後編では 豪華な授賞パーティーの模様をお伝えします。
Sake Competition 2016
- 世界一の日本酒が決まる Sake Competition 2016 表彰式・授賞パーティー レポート〈前編〉
- 世界一の日本酒が決まる Sake Competition 2016 表彰式・授賞パーティー レポート〈後編〉
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