どんな餃子にも、合う日本酒は必ずあります

焼き餃子、水餃子、蒸し餃子、色々なタイプの餃子にはそれらに寄り添うことのできる日本酒があります。

どんな餃子にも、合う日本酒は必ずあります

餃子も日本酒も大好きなので、これらを合わせてみようと思うのはとても自然です。

「日本酒が和食に合う」ことは多くの人が同意することです。ところが、「日本酒は餃子に合う」というと意外に思ったり、納得しなかったりする人が多いかもしれません。

でも、餃子に合う日本酒はあります。より正確にいうと、どんな餃子にも合う日本酒は必ずあります。餃子のバラエティも広いけど、日本酒の幅も広いのです。

この記事では、どんな餃子とどんな日本酒が合うのか、なぜ合うのか。そして私がどのように胸キュンしたのかをお伝えしていきます。

焼き餃子(YGZ)

まずは焼き餃子。辛口のライトな酒で油を洗い流すという方法が王道ですが、それならビールや酎ハイでいい、日本酒である必要がないというのが私の考えです。

京都・上七軒「三宝」
京都・上七軒「三宝」

日本酒が酸味のきいたタレの役割

まず、日本酒のもつ酸味に注目してみます。餃子のタレを酢と胡椒だけにして食べる方法がありますが、まさにその酢の替わりです。

神戸・元町「瓢たん」
神戸・元町「瓢たん」

タレなしで餃子と酸味のさわやかな日本酒を合わせてみます。リンゴ酸由来の味わいと、柑橘の香りがある日本酒がよいでしょう。

それに加えて苦味があって柑橘ピールのような香味の日本酒を合わせるのもよいです。焼き餃子に柚子胡椒を漬けて食べる時の、鼻に抜ける香り高さに近い効果が期待できます。

🍶 焼き餃子全般に合わせたいお酒は、爽やかな果汁のようなお酒「Fu.」です。

Fu.

肉汁の多い焼き餃子と酸味の強い日本酒

肉汁たっぷりの焼き餃子だと、さらに進んで酸味が強くレモンのような柑橘香がある日本酒と合わせるのもよいでしょう。白麹を使ったクエン酸の爽やかな酸味のある日本酒もおすすめです。

肉肉しい焼き餃子と乳酸菌飲料のような香りの日本酒

肉の味と香りが前面に出て来ている焼き餃子の場合は、乳酸菌飲料のような香りや麹の香りがするライトな日本酒とよく合います。肉の味わいを乳酸菌飲料のような香りが包み込むのです。

京都・上京区「鳳飛」
京都・上京区「鳳飛」

川鶴の「讃岐くらうでぃ」や、

讃岐くらうでぃ

大山 夏の雪 特別純米酒 辛口にごり酒」などがおすすめです。

大山 夏の雪 特別純米酒 辛口にごり酒

野菜中心の焼き餃子と青っぽい香りの日本酒

餡が野菜中心の餃子の場合は、野菜の青っぽさと日本酒のウリや青草など青っぽい香りが同調します。

高松・古馬場町「よって屋」
高松・古馬場町「よって屋」

ウリの青っぽい香りが特徴の「勇心 純米 おいでまい」と、「よって屋」のニラなどの野菜たっぷり餃子とよく合いました。

勇心 純米 おいでまい

カリッと焼けた皮と香ばしい香りの熟成古酒

カリッと焼けた皮に注目すると、やはり香ばしい熟成香のある古酒に合わせたいですね。古酒の丸い甘味と複雑な香味はまた、スパイシーな餡や、タレの胡椒ともよく合います。

神戸・三宮「イチロー」
神戸・三宮「イチロー」

メープルシロップの香りを楽しめる老亀の長期熟成酒と合いそうです。

老亀の長期熟成酒

水餃子(SGZ)

次は水餃子。モチっとした厚皮の羊肉餃子を考えてみます。私の一番好きなタイプの餃子です。

羊肉の厚皮水餃子。黒酢をつけて、どっしり系山廃を合わせたいです。乳酸由来の酸味、米らしい滑らかなテクスチャ、発酵バターのような乳っぽい香り、しっかりとしたうま味。これらが餃子の香味を包み込みます。また、日本酒の米米しいテクスチャーが同調します。

東京・乃木坂「蓮月」
東京・乃木坂「蓮月」

「蓮月」の羊肉水餃子には、不老泉の「滋賀渡船 無濾過生原酒」を実際にあわせました。ドンピシャリの相性でした。

滋賀渡船 無濾過生原酒

黒酢で食べる水餃子

日本酒にある乳酸由来の酸味は、黒酢のまろやかな酸味と同調します。タイプの違う酸味ですが、穏やかさが同調するのでしょう。相性がよいです。

東京・虎ノ門「天然居」
東京・虎ノ門「天然居」

【追記】麻辣水餃子に玉櫻と日置桜の燗酒を合わせました!

蒸し餃子(MGZ)肉汁が主役

肉汁がメインキャラの水餃子でうま味の相乗効果

小籠包のような肉汁がメインキャラの蒸し餃子や水餃子では、うま味の相乗効果を狙いたいですね。

アルコール感があり、うま味のしっかりした日本酒です。アルコールが肉汁の骨格を作り、色々な種類のうま味成分が出会うことによる相乗効果が期待できます。肉汁などのイノシン酸と日本酒のグルタミン酸が混ざってうま味が爆発します。出汁割りの原理です。

肉汁が主役の餃子には、萬歳楽の「甚」がおすすめ。肉汁を引き立て、シャープな味わいにする働きがあります。

萬歳楽の「甚」

大事なのは試すこと、五感と心で感じること

料理とお酒のペアリングで大切なのは、セオリーで考えるだけでなく、実際に試すこと。組み合わせの妙にはパラメータが多いので、実際にやってみると思ったより合わなかったり、反対にびっくりするほど相性がよかったりすることがあります。

それから、五感と心で感じること。味、香り、温度、テクスチャーすべてをひっくるめて感じること。もちろん、要素に分解して分析することも大切ですが、全体の印象を一度に捉えること、言い換えれば「心で感じること」がとても大切です。エモーショナルに感じること、ロジカルに考えることの両輪が必要です。

そして、プロとしては再現性も大切。すごくよいペアリングに出会ったら、すべての要素を記述的に記録し、その理由をロジカルに考え、再現できるようにしたいですね。

高松・古馬場町「よって屋」
高松・古馬場町「よって屋」

この記事は、餃子 Advent Calendar 2017 参加エントリーです。

【追記】大治郎の生酛と焼き餃子

滋賀県の「大治郎」、生酛造りの酸味が焼き餃子のタレの役割でよく合いました。

屋外で食べる餃子にピッタリ!「大治郎 生もと純米生酒」日本酒テイスティングノート
〈日本酒レビュー〉商店街日本酒イベント「おさけ日和」で味わった大治郎の生酛は、焼き餃子によく合った。

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