飛び跳ねる鯨のような勢いを感じた|「酔鯨を楽しむ会」イベントレポート
「酔鯨を楽しむ会」に参加! 若い蔵元さん、杜氏さんの勢いのある空気感。蔵が今まさに飛躍している感触が伝わってきました。
(2018年5月26日開催)
「酔鯨」を醸す高知県高知市の酔鯨酒造の蔵元さんと杜氏さんを迎えた、「酔鯨を楽しむ会」に参加してきました。
若い蔵元さん、杜氏さんの勢いのある空気感。蔵が今まさに飛躍している感触が伝わってきました。大きな水しぶきを上げながら跳躍する鯨が心に浮かびました。
酔鯨との出会いは、昨年末に京都でリニューアルされたラベルの新酒。美しい曲線を描く味わいとおしゃれなラベルが印象的でした。
その後、酒屋や飲食店、雑誌などで酔鯨が目につくようになりました。ある日「一位」に立ち寄った際、大将に「今度、酔鯨のイベントやるよ」とお誘いいただき、「来た! この出会い感」と参加を決めました。
中で鯨が泳ぐおちょこに胸キュン
イベント開始を待つまでのあいだ、気になったのがこのおちょこ。酔鯨オリジナルです。内側に泳ぐクジラの絵が描かれており、酒を注ぐとちょうど水面を跳ね上がっているように見えます。
おちょこの裏を見ると「幸泉作」とあります。宇平や小田井と並び、本きき猪口の窯元として有名です。
蔵元さんのお話: 新蔵と酒の役割
乾杯とともにイベントが始まり、四代目蔵元の大倉広邦さんのお話です。
大倉さんからは、今年秋から稼働する新蔵についてお話。手狭になった今の蔵に加えて第2蔵を新設するそうです。よりよい酒を造るためです。日本酒業界は厳しいが、「おいしいお酒を飲み、おいしい料理を食べて語り合うということが皆さんの日頃の癒しになれば」と語られたのが印象的でした。酒が世の中でどういう役割を持つべきなのか、を考え抜いた結果の言葉だと感じました。
杜氏さんのお話: 品質重視で小さな仕込み
次にお話いただいたのは杜氏の松本誠二さん。酒造りへの思いが伝わってきました。
29BYの仕込み本数は232本。数は多いけど小さな仕込みばかりだそうです。新蔵でも品質重視で小さな仕込みを丁寧にやっていきたい、新しい蔵でいい酒を造っていきたいと話しました。
乾杯酒は「酔鯨 純米大吟醸 万」
こちらは乾杯酒、「酔鯨 純米大吟醸 万」です。今風のきれいなお酒ですが、味はしっかりとしています。口に含んでから切れるまでの曲線が美しいお酒です。スタイリッシュなボトルは、贈り物にしたりコレクションしたりしたくなりますね。
カツオのたたきに合う「酔鯨 純米大吟醸 象」
2番めのお酒は「酔鯨 純米大吟醸 象」。口当たりは軽やかで柔らか、白い米のニュアンス。白玉粉の感触のある優しいお酒です。
高知といえばカツオのたたき。こちらによく合いました! カツオのたたきは高知名物として有名だですが、「普段から地元の人が食べてるだろうか?」という疑問を投げかけたところ、「毎日食べてます!」と蔵元の大倉さんが答えてくれました。高知で造った酒に、地のものを合わせるのです、とも。まさに地酒の楽しみ方ですね。
仕込み水
酔鯨の仕込み水は高知市の北部、土佐山地区の湧き水[1]。ここから流れ出る鏡川の水は、環境省の「平成の名水百選」にも選ばれています[2]。高知から仕込み水まで持ってきてくださるとは、ありがたいことです。お酒の80%は水、仕込み水を飲みながらその水で造った酒を飲むと、両者が滑らかにつながる感じがします。
どっしりした料理に合う「酔鯨 純米吟醸 備前雄町」
3番目は「酔鯨 純米吟醸 備前雄町」。爽やかな印象だがフルボディー。フルーツのような酸味はしっかりして、アプリコット、オレンジの香りが心地よいお酒です。
こちらは「一位」名物の厚切りベーコン。これによく合いました。ベーコンに負けない力強さで包み込みます。
お酒は全部で8種類
お酒は全部で8種類でしたが、テイスティングノートを書けたのは上の3つまで。8種類のうち気になったお酒を紹介します。
こちらは原料米に松山三井を使った、「酔鯨 純米吟醸 吟麗 summer」。
そしてこちらの「酔鯨 純米酒 吟の夢60%」は高知県農業技術センターが開発した酒米「吟の夢」を使ったお酒。吟の夢は山田錦とヒノヒカリを交配させて作られた品種「高育酒54号」の愛称です。2002年に品種登録されています。
このお酒だけが、他の酒とは違う水を使って醸されています。「鏡の名水」という高知市の鏡地区に湧き出る水です。
北海道・新十津川産の酒米「吟風」を使った酒「酔鯨 純米吟醸 なつくじら」もいただきました。吟風はここ数年評価が高待っている酒米です。
こちらは特別本醸造。燗酒にしておいしいお酒でした。
酔鯨らしい酒とは
杜氏の松本さんは、酔鯨らしい酒とは「味があって切れる酒」だと語ります。今回酔鯨を飲んで味の広がりを感じました。「酔鯨らしさ」という言葉と飲んだ印象がピッタリと一致した瞬間でした。
味がある、酸味がしっかりあるのは料理に合うようにとのことです。今回の8種類のお酒はすべて米が違いましたが、麹米・掛米で別のコメを使うことはせず、酵母も熊本酵母でほぼ統一しているとのこと。「米の味わいを楽しんでほしい」という杜氏さんの言葉にグッと来るものがありました。
〆の雑炊は一位の名物
もともと雑炊やさんだった「一位」。今でも雑炊が名物なのですが、普段、〆の料理を余り食べないので見逃していました。この日ようやく雑炊デビューです。
やさしい出汁と野菜の旨味。おいしくいただきました。ほろ酔いでお腹もいっぱい。この幸せな気分がずっと続けばいいなー、と思いながら帰途についたのでした。