若竹の立春朝搾り、熟成垂直飲み|日本酒レビュー
静岡県の居酒屋で、醸造年度がちがう3本の「若竹」の新春朝搾りをいただいた。店主が出してくれただし巻きとの相性は最高だった。
立春を祝う搾りたての酒
旧暦の大晦日に酒蔵で一斉に酒を搾り、その翌日出荷する。この酒は「立春朝搾り」と呼ばれていて、旧暦の正月、立春に出来上がる酒だ。蔵人たちが酒を搾り、瓶詰めしている間に、近隣の神社の神主さんがその酒に関係するすべての人びとの無病息災・家内安全・商売繁盛を祈願する。酒販店は直接その酒を引き取りに来て、地域の消費者に届ける。
この取り組みは日本名門酒会によって1998年にはじめられた。最初の参加蔵はたった一つだったが、2024年には43もの酒蔵が参加している。伝統(立春)、地域性(地域を限定した流通)、そしてコラボレーションをそなえた素晴らしい日本酒マーケティングの例だといえよう。
「垂直飲み」で熟成を楽しむ
新春朝搾りは毎年時期が決まっている季節商品で、スペックもほぼ同じなので、醸造年度のちがう酒を飲み比べたくなる。いろいろな蔵の当年酒を飲み比べるのが「水平飲み」ならば、これは「垂直飲み」である。旅先の行きつけの居酒屋に立ち寄ったとき、ちょうど立春から1週間もたっていないころだった。店主は同じ静岡県内の「若竹」の立春朝搾りの飲み比べを勧めてくれた。
古いものから新しいもの(上の写真の右から左)を飲んだ。3年熟成の平成29年(丁酉)が一番お気に入りだった。やわらかな口当たりと丸い甘味、そこにほうじ茶や杏の砂糖漬けのような熟成香が寄り添う。次の一杯は平成30年(戊戌)、微かなほうじ茶の香りがあるけども、杏や白米の甘い香りと微かな苦みが若さを感じさせた。そして3杯目は当年酒(庚子)、6日前に搾った生原酒だ。力強さとメロンの甘い香り、ピリピリとした刺激、そして心地よい収斂味に満足した。
このお店のだし巻きが、すべてによく合った。とくに一番熟成した丁酉によく合った。
2020年2月、思ひで横丁 藤枝市場(エダバ)(静岡県藤枝市)にて
ラベル情報
醸造元: 大村屋酒造場(静岡県島田市)
平成29年 丁酉
タイプ: 純米吟醸, 生原酒, アルコール度数: 17%
原料米: 非表示(精米歩合55%)
平成30年 戊戌
タイプ: 純米吟醸, 生原酒, アルコール度数: 17%
原料米: 非表示(精米歩合55%)
令和2年 庚子
タイプ: 純米吟醸, 生原酒, アルコール度数: 17%
原料米: 非表示(精米歩合55%)
参考文献
日本名門酒会. (2024-02-03). 立春朝搾り 春を迎える祝い酒. https://www.meimonshu.jp/modules/xfsection/article.php?articleid=377
この日本酒レビューは “Wakatake Aged Sake Flight of Risshun Asa Shibori in a Local Izakaya | Saké Review” の翻訳です。