北陸12号〈酒米の系譜・石川県〉
「北陸12号」は奥羽2号と万石の交配でうまれた酒米(酒造好適米)。
「北陸12号」は奥羽2号と万石の交配でうまれた酒米(酒造好適米)です。新潟県農事試験場上越試験地で1926年に育成され、1935年に命名されました。交配によって生まれた酒米の中ではかなり初期のものになります。大粒で心白の発現がよいのが特徴です。
祖先には酒造りでよく使われる亀の尾。また、たかね錦の母親、美山錦の祖母でもあります。
あまり栽培されなくなってきている北陸12号
平成28年度の検査数量ベース(ほぼ生産高とみてよい)では新潟県75トン、石川県16トン、合計91トンでした。山田錦が3万7千トンであることを考えると、とても少ない数です。
2003年には213トン(新潟県88トン、石川県125トン)だったのが、ほぼ半減しています。石川県の作付け規模は1970年代はじめに100ha以上だったのが、その後激減し、約40haで安定生産されています。
使っている酒蔵はとても少ない
新潟県魚沼市の緑川酒造と石川県白山市の小堀酒造店(萬歳楽)が北陸12号を醸造に使っています。
2017年9月に訪問の際、説明いただいた小堀酒造店の方によると、北陸12号で造る酒は味のばらつきが大きく、土っぽい独特の香味があることで好みが分かれるとのことです。栽培が難しいことに加え、この特性があまり使われなくなった理由だと思われます。
北陸12合を使ったお酒に、萬歳楽「甚」があります。
小堀酒造店「森の吟醸蔵白山」にて
参考資料
- イネ品種・特性データベース検索システム|農研機構
- 米穀の農産物検査結果
- 副島 顕子『酒米ハンドブック 改訂版』文一総合出版、2017年
おすすめ日本酒の本
日本酒や酒米の勉強をするのに役に立った本をご紹介します。
ブルーバックスの『日本酒の科学』和田 美代子 (著), 高橋 俊成 (監修)
酒米はもちろん、日本酒の造り、微生物の働き、熟成など多岐にわたった内容です。科学的な根拠が示されているのでおすすめです。
田崎真也さんの『No.1ソムリエが語る、新しい日本酒の味わい方』
たくさんの日本酒銘柄が原料米別に紹介されています。酒米の種類によってどのような日本酒が出来上がるかを知りたい方におすすめです。
こちらは最近改訂版が出た『酒米ハンドブック 改訂版』副島 顕子(著)。ハンドブックなので手軽に持ち歩けるサイズ。試飲会で新しい酒米に出会った時にさっと取り出せるのがいいですね。
酒米、酒米ではないけど酒造用によく使われている一般米が網羅、米の特徴はもちろん、系譜図と米の写真。これだけの米の写真を集めるには大変な努力を要したことでしょう。米の基礎知識のコラムも充実していてマストバイなハンドブックです。