玉泉清酒は米を感じるクラシックな味わい|Sakeレビュー
台北のどのコンビニに行っても棚に並んでいる玉泉清酒、ぬる燗でも冷やしてもおいしいお酒で、飲むと料理に合わせたくなるのだ。
冷やすとスルスルと飲める軽やかな酒
クラシックな味わいの酒である。きれいな吟醸酒とも、個性を活かした味わいともちがう、飲み屋でただ「日本酒」とだけメニューに書かれている酒だ。昭和の普通酒の味だ。
乳っぽい香りに、アプリコットやバナナの香り。この酒の甘さは香りで成り立っている。飲む。やわらかな口当たりで、少しアルコールの刺激を感じる。アルコール度数は13.5度と控え目なのにだ。口中の香りは次第に白玉粉やウエハースなど米の甘さを連想させるものになってゆき、ゆるやかに切れていく。デーツの香りもかすかにある。
10度くらいに冷やすとすこしシャンとして、骨格ができた。よい! 50度くらいに温めると、ちょっと頼りなくなるけど、そこから少し冷ますと良さが見えてくる。燗冷ましにしたぬる燗がおいしいのだ。

台湾の屋台料理をお手本にしたというMUJIのレトルト・ルーロー飯に青梗菜を添えて、冷やした玉泉清酒と合わせた。とてもよい相性だった。味覚はもちろん、異国情緒を思う気持ちでペアリングするのもまた楽しい。
2018年6月、滋賀県高島市マキノにて
明治の末から続く台湾での清酒(Sake)造り
台湾では明治の末からすでに清酒が造られていた。1914年には冷房設備を備えた建物で四季醸造も始まった。歴史ある清酒醸造は戦後も続くが、1973年についに途絶えてしまう。1997年にこの酒「玉泉」がデビューするまで、24年間、清酒は造られていなかったのだ。TTL(臺灣菸酒股份有限公司)製造部門の張志成さんによると、技術資料は残されており、試験醸造も行っていたものの、再開には苦労が多かったという。
台湾での酒造り空白時代には、TTLが日本の月桂冠からレギュラー酒を輸入・販売していた。今でも輸入は続いているが、玉泉はこのポジションにある。都市部のスーパーやコンビニでは必ず玉泉清酒を見つけることができる。
台湾の晩酌酒
台湾には何度か旅したことがある。その全てが酒のための旅ではないけれども、人々が「玉泉」を飲む姿を見かけることはなかった。「玉泉」は誰がどこでどのようにして飲んでいるのだろうか?
台湾出身で、現在日本の酒販店に勤める謝翠翠さんは、「玉泉は常温でも燗酒でもおいしい晩酌酒です」と語る。うま味があり、主張が強すぎず、値段が手頃(600ml瓶で155NT$、日本円で約560円、2018年現在)だからだ。謝さんと彼女の両親(1950年代生まれ)は家で晩酌用の酒として玉泉を飲んでいるという。もちろん、家庭料理とともに食中酒として。
「華やかでないけど、このくらいがいいと思うようなお酒です。好きな酒です」玉泉で清酒の味を知った謝さんは、台湾ではポピュラーな日本物産展でのアルバイトを通して輸入される清酒と出会い、蔵元さんたちと話すことでこの世界に入ることになるが、いまでも玉泉が好きだという。
台湾の飲酒文化
旅行者である僕が見つけられなかった台湾の晩酌文化と食中酒文化がある! 台湾と日本、両方で酒のキャリアを積んだ謝さんに両国の飲酒文化の違いをレクチャーしてもらった。
「今度飲みに行きましょう!」より「今度食べに行きましょう!」。家庭内での晩酌文化はあるけれども、社交のために飲むことは少ない。台湾では飲み会よりも食事会が社交のツールとして使われる。社会人も学生も飲酒を伴う飲み会やコンパをしない。ここが日本との大きな違いだ(日本でも、会社飲み会をしな方向に向かいつつあるけれども)。
もちろん、台湾スタイルの居酒屋をはじめ、お酒を飲めるところはある。でも、社交よりも酒を楽しむために通う人が多いようだ。ひとり飲みをする人がかなりいて、ネガティブな印象も少ない。謝さんも台湾にいる頃はよく一人で居酒屋に飲みに行っていたという。
台湾の衛生福利部(日本の厚生労働省にあたる)によると、飲酒人口は43.0%(過去1年間に飲酒した人の割合)だ。基準が少し違うので単純に比べることはできないけれども、WHO調査の世界の飲酒人口の43.0%とほぼ同じで、世界的にみても標準的な数だ。ちなみに日本の場合は44.9%(厚生労働省)と少し多くなっている。
台湾の人はあまりお酒を飲まない、という印象だったけど、世界的には普通の水準、そして日本は世界的に見ても多いことは興味深い。
ラベル情報
商品名: 玉泉清酒
醸造元: 臺灣菸酒股份(台湾菸酒公司、TTL)(台北市, 台湾)
タイプ: 穀類醸造酒, アルコール度数: 13.5%
原料米: 彰化産「台中9號」(精米歩合70%)

あわせて読みたい

