/ コラム

日本酒を割るということ

日本酒コンシェルジュ 江口崇 aka Umio 日本酒コンシェルジュ 江口崇 aka Umio

日本酒を飲み始めた頃は、「お酒はできたままの状態で飲むのが、造り手を尊重すること」と考えていました。いじったら怒られるのでは、と思っていました。でも、いろいろな酒蔵の方とお話しして言われたのが、「自由に飲んでいい」ということでした。

町家でお酒を楽しむ会で、結構な量の生原酒を飲んで飲み疲れたときに、ある酒蔵の営業さんがすすめてくれたのが、「ちょっと水割り」。アルコール度数20度の原酒が15度くらいになるように少し水を加えたものでした。

すっと飲みやすく、香りや味も広がりました。多くの日本酒ではアルコール度数が15から16度になるように加水されています。その数字には意味があるんだ、と気づきました。

完全発酵を目指した度数21.6の「玉川 白ラベル」。強烈なアタックを堪能したあとは、炭酸で割って楽しみました。すると、酒の山廃らしい乳っぽさが引き立ちました。さらにイチジクのケーキに合わせてみたり。

フランボワーズの香りがする日本酒、伊根満開。日本酒レッスン「フランス惣菜と日本酒」のウェルカムドリンクでソーダ割りをお出ししました。配合は講師の山本稔子先生が甘さと香りと炭酸感のバランスを考えて作りました。

ワインに詳しい方から「ロゼスパークリングワインみたいでかわいくておいしい」とのコメント。ワインの世界の方はこう感じられるんだ、と驚きました。

その後、丹後地酒まつりで伊根満開を造る向井酒造の杜氏さんとお会いする機会がありました。「伊根満開のソーダ割り大好きなんです!」と話したところ、「地元の紅芋酢をちょっと入れるといいよ」とのコツを教えていただきました。ソーダ割りを肯定してもらえたのです。

フランボワーズといえば、ある交流会で日本酒をお出ししたとき、フランス人のエンジニアの方から「フランボワーズのリキュールを白ワインで1:5の割合で割る」という飲み方を教わったことがあります。

日本酒の楽しさをお伝えしたら、地元でのお酒の楽しみ方を教えてもらった。お酒を通したコミュニケーションは、こういうことが楽しいんです。そして、「その割り方、やってみたい」と思いました。

酒を割るのは楽しい。表情が変化していくのを見るのは楽しい、酒と何かの出会いが新しい味わいを生むのが楽しい。お酒が造り手の作品だとしたら、割って楽しむのは飲み手の作品なのです。

酒を割ることは、酒を料理と合わせることや、温度を変えて楽しむことと同じく、飲み手の想像力のなせる技。酔うためのお酒だけでなく、味わうためのお酒、そして楽しむためのお酒。こうやって飲酒文化が花開き、伝わっていくんだなと感じながら日々飲酒生活を送っております。

もっと自由に、お酒を楽しもう!