美しいイベント

日本酒イベントを重ねていくうちに行き当たった停滞期。それを克服したのが「美しいイベントを作る」という目標でした。

美しいイベント

日本酒コンシェルジュのUmioです。京都で日本酒イベントの開催とブログを通して日本酒の楽しさを伝える活動をしています。

日本酒イベントを始めたきっかけ

日本酒イベントを始めたきっかけは、5年前に京都で感動するほどおいしい日本酒とその造り手の方に出会ったことです。

この時知った日本酒のおいしさやすばらしさを伝えようと、日本酒イベントを始めました。イベントを主催するのははじめてのことでしたが、参加者や仲間に支えられて少しづつイベントの作り方を覚えていきました。

今までに、日本酒初心者のためのイベント「町家でお酒を楽しむ会」、日本酒をそれを支える文化とともに学ぶ「日本酒レッスン」、日本酒恋愛相談バー、日本酒謎解きゲームイベントなどいろいろな企画を主催・共催してきました。

参加者の声に耳を傾け、小さな改善や新しい取り組みを繰り返しました。それにあわせてイベントは成長、参加者数がのべ1,000人に達しました。

停滞

イベントの成長とは裏腹に、時々、何のためにイベントをやっているのかが分からなくなることがありました。燃え尽きてしまったのかもしれません。進むべき道が見えない時期がしばらく続きました。

美しいイベント

そんなもやもやが続いていたある朝のことです。近所を散歩していると、天から突然「美しいイベントを作りなさい」という声が聞こえてきました。

美しいイベントと何か。考えました。ひとりで考えました。

ずっとひとりで、自分と向き合い考えました。今までのイベント開催で体験したことを一つ一つなぞりました。そして、私なりに二つの答えにたどり着きました。

どのように感動を送り届けるか

一つは「美しいイベントとは感動するイベントだ」ということ。イベントの中で感動するよりもむしろ、家に帰ってひとりになった時に噛みしめるように何かを感じてほしい。それは茶席での「相手におもてなしと意識されずにおもてなしをする」という姿勢と同じです。

そのように感動するイベント、美しさを感じることができるイベントを作るには、自分の中に「美しさとは何か」を持つ必要があります。美しさを「伝える」以前に美しさを持たなくてはいけないのです。

そうするとどうしても自分の人生に行き当たる。感動するイベントを作ることは、自分の生きざまを表現することに限りなく近づくのです。そのためには、自分と向き合う時間を持つこと、つねに高い志を持つことが必要だと悟りました。

ともに育つイベント

もう一つは、「美しいイベントとは育つイベントだ」ということです。

新規の参加者が4割、リピーターの方が6割のイベントです。当初、「日本酒の楽しさ、おいしさを知ってもらいたい」との目的で開催していたイベントですが、参加者の方はどんどんお酒を飲んで、体験して、学んでいきます。「もっと深く知りたい」というニーズも出てきます。そこで考えたのが「日本酒と日本酒を支える文化をまるごと学び、楽しむ」という新しいコンセプトでした。

一つ一つのイベントとして捉えるよりも、時間軸で捉えると、その時間軸(=コミュニティ)はつねに変化しています。その変化のしかたが美しいのが「美しいイベント」。イベントが目指すものがより洗練されたものに変化していく。

「日本酒を伝える」から「日本酒を支える文化とともに伝える」への変化。参加者の皆さんに励まされ、支えられながら、ともに変化してきました。

そして、「伝える」ことを目的に、いま私たちがコミュニティとともに活動していることは、日本酒の新しい文化を創り出していることなのかもしれません。

※ このエッセイは、2016年11月22日に外苑前アイランドスタジオで開催された「“食”を通じてつながりをつくる方法 -おいしいイベントの隠し味- イベントサロンvol.12」の2分間ピッチで発表した内容です。