/ 日本酒レビュー

Zenkuro Sake 全黒|世界のSakéテイスティングノート

日本酒コンシェルジュ 江口崇 aka Umio 日本酒コンシェルジュ 江口崇 aka Umio

ニュージーランド唯一の酒蔵

大阪にあるHana Sake Barで開催された、世界のSakeが楽しめるイベント Sake World Cup で、ニュージーランド唯一の酒蔵、NZ Sake Brewers が醸す「全黒」を味わう機会に恵まれました。そしてなんと、杜氏で取締役の デービット・ジョールさんもいらっしゃったので、お話をお伺いしました。

_s-sakeworldcup-DSCF0657

ジョールさんは17歳のときに交換留学生として来日、その後日本の大学で学びました。就職して新橋のサラリーマンになった時、時代はちょうど吟醸ブームの真っ只中でした。ジョールさんはこの時たくさんの吟醸酒に出会ったといいます。ニュージーランドに帰国後日本人旅行者のガイドなどを務め、2014年には酒造りに挑戦することになります。

Jollさんが酒造りを始めた場所はガレージで、最初の原料は飯米とパン用のイーストでした。スタートアップ感あふれる、ワクワクするエピソードです。その後、カナダの酒蔵YK3の春日井杜氏について酒造りを学び部事になりました。数多くの議論を交わしたとジョールさんは語ります。

軽やかでフローラル

今回テイスティングした2本は、2018年醸造のものと、当年酒2019年の無濾過生原酒です。2018年の酒は軽やかな熟成感とゆりの香り、2019年のは爽やかでメロンとすみれの香りを楽しみました。いずれも軽やかで切れのよい酒です。

_s-sakeworldcup-DSCF0640

地域をどう表現するか

現在、5人のチーム(Zenkuro Team)で全黒の酒を醸しています。酒蔵のあるクイーンズタウンは豊富な軟水に恵まれています。ニュージーランドでは米がほとんど栽培されていないので、いまは原料米としてアーカンソー産のカルローズや富山県産の五百万石を使っています。。

「地元の米を使ってこそ地酒である」という考えがあります。地元の米が使えればより地域を表現できるでしょう。でも、米作りに向いていないとされる土地で無理に栽培するよりも、「可搬性」という米ならではの特徴を活かし、地元の水と食文化に寄り添うことで発展するのではないかと考えます。

すでに、全黒を日本料理以外と合わせる取り組みが酒蔵自身により進められています。地元ニュージーランドのレストラン向けにはSakeとのペアリングの提案をしているとのこと。さらに、日本にあるニュージーランド料理店で全黒を提供しています。日本酒文化の伝播の次に来る「逆伝播」がすでに起こっているのです! 日本国外で醸造される清酒(Saké)が日本酒のコンテクストを離れて、もう一度日本酒に影響する、これがリアルタイムで起きていることを知って、少し身震いしました。

(日本酒文化の伝播と逆伝播については、日本酒が世界酒となって、これからグローバルな食文化の中でどうなるかを書いたエッセイです)

(こちらは、上のエッセイのベースとなる考え、餃子の日本への伝播と世界への逆伝播を示した書籍の紹介です)

このほか、地元のレストランに酒粕料理を紹介するなどで、廃棄物になりがちな酒粕を活用して「酒造りのエコシステム」を地域でつくろうとしていることは注目に値します。

テイスティングコメント

Zenkuro Sake 全黒は軽やかな熟成感

麹米はササニシキ、掛米はアーカンソー産のカルローズと富山県産の五百万石を使用。

12度くらい。はちみつやユリの花の香り。甘味は控えめでやや酸味がある。蜂蜜の香り。切れがよく、余韻はゆりの香りと苦味、アルコールの刺激。軽やかな熟成感がよい。

Zenkuro Sake 全黒 無濾過生原酒 はやや甘味があって爽やか

今年の無濾過生。富山県産五百万石100%を使用。

12度くらいでテイスティング。やや甘味があって、爽やかなテクスチャ。メロンと若草の香り。切れはよく、余韻は長い方で、すみれの香りとほのかに干草の香り、そしてアルコール感が持続する。

(テイスティング日: 2019年4月13日)

ラベル情報

Zenkuro Sake 全黒

  • 〈醸造元〉 NZ Sake Brewers Ltd.(クイーンズタウン(ニュージーランド))
  • 〈仕込み水〉 -
  • 〈原料米〉 麹米: ササニシキ、掛米: Calrose, 五百万石
  • 〈精米歩合〉 -%
  • 〈特定名称/種別〉 純米酒
  • 〈アルコール度数〉 15度
  • 〈原材料〉 -
  • 〈製造年月〉 -
  • 〈その他情報〉 2018年 Batch No. 2527/1802

Zenkuro Sake 全黒 無濾過生原酒

  • 〈醸造元〉 NZ Sake Brewers Ltd.(クイーンズタウン(ニュージーランド))
  • 〈仕込み水〉 -
  • 〈原料米〉 五百万石
  • 〈精米歩合〉 60%
  • 〈特定名称/種別〉 純米酒
  • 〈アルコール度数〉 16.5度
  • 〈原材料〉 Rice, Koji, Yeast, Water.
  • 〈製造年月〉 -
  • 〈その他情報〉 2019年 無濾過生原酒 Batch No.43

sakeworldcup-DSCF0654

参考資料

  • 幅広い食事に合う食中酒としてマッチングを提案しています. 日本酒見聞録. 酒蔵萬流 021.
  • NZの関心事に結びつけて日本酒をアピール. 日本酒見聞録. 酒蔵萬流 022.
  • McLachlan, Craig. Zenkuro Sake: Act One, Scene One―And Action! SAKE TODAY. Issue 13, Spring 2017.