米を洗う、米を蒸す〈伏見帖〉
酒造りは、米を蒸すところから始まります。その前にまず、米を洗い、吸水させます。
この日は蔵人さんたち総出で米を洗いました。一緒に酒造りのスタートを切るのです。酒ができるまでには5週間から2ヶ月以上かかります。それまで気持ちを保ってチームで助けあう必要があります。そのために、最初の作業の洗米をチーム全員で力を合わせてやりとげるのです。
子どもが2、3人入れるような「半切桶」とよばれる大きな桶を使います。一度に10キロ程度の米を洗います。杜氏さんはストップウオッチを持って、洗う時間を測ります。
杜氏さんの掛け声で米を洗い、水を替えるのを繰り返したあと、吸水させます。私はどうしてここまでぴったり時間を合わせて洗米をするのかが不思議でした。でもあとで洗った米の重さを量っているのを見て「なるほど」と思いました。
米を洗う前の重さ、洗って吸水させたあとの重さを計量するのです。その差を計算するとほとんどぴったり30%だけ重さが増えていました。つまりその分だけ水を吸ったということです。手作業なのにほとんどぶれはありませんでした。
米の水の吸いやすさは品種やできた年ごとに違います。これを考慮しながら、どれだけの時間吸水させれば目標の30%吸水ができるのかを計算し、そのとおりに作業する。私は米洗いという単純な工程にかける丁寧さに驚きました。
↑ 洗った米を甑(こしき)と呼ばれる蒸し器で蒸す
↑ 蒸しあがった米