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熟成が重ねた時を感じる酒「龍力 純米 熟成古酒 Vintage 1999」日本酒テイスティングノート

日本酒コンシェルジュ Umio 江口崇 日本酒コンシェルジュ Umio 江口崇

熟成が重ねた時を感じる酒

龍力を醸す本田商店は、熟成古酒に力を入れている。以前、シェリー樽で熟成させたJ-Saliqをいただいたが、今回はベーシックな熟成古酒を試すことにした。有楽町にある兵庫県のアンテナショップでみつけて、衝動的に購入した300ml瓶だ。

1999年に醸造されてから21年ほど経過している。この年はどんな年だっただろうか? パソコンを検索したら六本木の「キャラメル」というギャラリー・イベントスペースの写真が見つかった。当時は毎週のように通っていて、時には朝まで飲み明かすこともあったのを覚えている。六本木、その次のタイミングは、仕事で訪れる六本木ヒルズ周辺だった。六本木の風景は随分変わった。

こんなふうに、熟成酒はそれ自身が重ねてきた時を飲む人にも投影する。僕が今思いにふけったようなことは、飲む人それぞれが体験する。ある垂直飲みイベントで、飲んでいる酒が醸された年に結婚した方が彼女の結婚生活を突然振り返りはじめたことがあった。そこで周りの人がやさしく耳を傾けるのが、酒のつながりの素晴らしいところだ。

穏やかな熟成だが、香りは複雑

やや穏やか目の熟成で、ライトでドライな味わいだが、わら・ほうじ茶・米・カシューナッツなど熟成香は複雑で豊かだ。強い苦味が特徴的で、書道の「とめ」のように酒の味わい全体をまとめる。常温でもよし、ぬる燗・熱燗でそれぞれ違った顔が見えて、とくに55度くらいまで温めてから40度に覚ますとおいしい。ナッツはもちろん、焦げたチーズのある料理、グラタンやドリアとも相性がよい。

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テイスティングノート

常温、ぐい呑で

上立ち香は、きのこ・木・わら・炊いた米。ミルキー。口に含むと、蒸留酒を思わせるサラサラな感覚。甘味は少なく、とくに後口で酸味と苦味が強い。軽やかでドライな印象。アルコールとカカオニブの苦味を感じる。プルーンやレーズン、ダージリン、カカオの香り。カラメルのニュアンスはあるけど甘い香りではない。スモーキーな香りはほうじ茶を思わせる。強い苦味、独特のココアっぽい苦味が余韻にあり、酸味がじわりと上がる。余韻は長い。

苦味に集中して飲むと、やわらかな苦味から一瞬水っぽくやさしくなり、強い苦味が再びやってきて、切れる。その時少し米のミルキーさを感じる。

20年熟成にしては熟成が穏やかに感じる。ライトでサラサラ、香りはそれほど強くないけれども、熟成古酒のパンチがある。

45°C、ぐい呑で

炊いた米の香りが強く、米を思わせる甘味が広がる。やわらかな甘味だ。その後酸味と苦味がやってくる。レーズンとスモーキーなほうじ茶の香り。

55°C、ぐい呑で

ほうじ茶の香りがさらに強くなってきた。スモーキー。米を感じさせるミルキーさも健在で、後口にまで残る。熱い事自体が酒に芯を与える。温めると味わいが変わる。それだけでなく温度自体も味わいの一部になるのだ。緊張感がある。

燗冷まし40-45°C、ぐい呑で

苦味が少し繊細に感じられるようになり、なめらかな米のニュアンスがでてくる。カシューナッツの香りも。

ペアリング

チャプチェ。酒の苦味と酸味が料理をしゃきっとさせる、緊張感を与える。熟成香とチャプチェのソース、胡麻の香りが同調してよく合う。

納豆。酒の甘味とうま味が上がる。合わさってやわらかな印象。温泉卵の卵黄部分と合わせると、その濃厚さが強調される、酒もまろやかになる感じ。

この他、ナッツ・麻婆豆腐・グラタンとの相性がよかった。グラタンやドリアの、焦げたチーズとよく合った。

ラベル情報

龍力 純米 熟成古酒 vintage 1999

  • 〈醸造元〉 本田商店(兵庫県姫路市)
  • 〈仕込み水〉 -
  • 〈原料米〉 雄町
  • 〈精米歩合〉 65%
  • 〈特定名称/種別〉 純米酒
  • 〈アルコール度数〉 16度
  • 〈原材料〉 米(国産)、米こうじ(国産米)
  • 〈製造年月〉 2020-01

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