玉川 一号酵母 無濾過生原酒 本醸造 2017BY|日本酒テイスティングノート
〈日本酒レビュー〉「玉川」からも一号酵母のお酒が登場。上品で濃厚。甘み、酸味、苦味、渋味がバランスよく座っています。
復活した一号酵母
明治39年1月、醸造試験所(現在の醸造協会)は全国の酒蔵から62株の酵母を採取分離しました。そのうち灘の櫻正宗から分離した酵母を酒母に添加すると香味がとても良くなったので、配布される酵母の第1号となりました[1]。
しかし、昭和10年は頒布が停止されます。長らく幻の酵母と言われていましたが、近年醸造協会に保管されるとわかり、再び使われるようになりました[2]。櫻正宗では協会一号酵母を使用して60年ぶりに酒が醸されています。
玉川でも一号酵母
櫻正宗に続き、「玉川」の木下酒造からも一号酵母を使ったお酒が登場しました。その出来は素晴らしく、杜氏さんをして「頒布が終了した意味がわからない」と言わしめた[3]といいます。
まずは冷やすて
10度位の温度帯で楽しみました。
上品で濃厚。甘み、酸味、苦味、渋味がバランスよく座っています。米のニュアンスがしっかりと感じられる、コクのあるお酒。口に含んだ瞬間、「うわっ」と声を出してしまいそうなほど感動。思わず笑みがこぼれる。
とてもとろやか、ねっとりとしたテクスチャーにややアルコールの刺激が伴います。蜜のような透明感のある丸くて強い甘味がやってきて、そのあと酸味が広がります。
香りはとても豊かで、和三盆、ザラメ、紅茶(ダージリン)、ウエハース、ミルク飴、柑橘ピール、カラメル、ミルクチョコ、カシューナッツ、カカオ。熟感のある香りがいろいろな顔をして見え隠れします。
キュッと収斂味をともなってよく切れる。この豊かな風味からの切れの良よが玉川らしいと言えるでしょう。余韻には心地よい苦味が残り、ミルク飴、ミルクチョコの香りが寄り添う。
料理と合わせたい
単独でも十分楽しめる豊かな香味ですが、やはり料理が食べたくなるお酒です。
油脂がおいしい肉や魚に合わせたいです。フォアグラ、あん肝、豚肉の脂身、醤油味の角煮などによく合うでしょう。
燗にしたくなるよね、ということで55度に
磁気の平盃でいただく。淡い山吹色の美しさを再認識。酸味が引き立ち、熟した果物の蜜のニュアンス。そしてアルコールの苦味。まろやかでシルキーな口当たり。またもや「燗酒最高!」と叫びたくなる。アーモンドやカシューナッツ、ウエハース、ミルクチョコ、キャロブの香り。酒の温かさと複雑な香りに包まれる。余韻は長く、ミルクチョコやキャロブの香り。
冷酒、燗酒、両方楽しめるお酒です。
豚の角煮に合わせる
フードメニューをたぐり、豚の角煮を見つけたのでオーダー。赤身とは「ああ、この甘辛い醤油味がよく合う」と安心し、脂身とは、酒の酸味が脂身の柔らかさを引き立て、米々しさが全体を下支えしました。本当によく合いました。
「和酒 美ずき」にて。
【追記】2018BYの玉川一号酵母もテイスティングしました。印象が変わっていました。
(テイスティング日: 2018年10月2日)
ラベル情報
商品名 | 玉川 一号酵母 無濾過生原酒 本醸造 2017BY |
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醸造元 | 木下酒造(京都府京丹後市) |
特定名称 | 本醸造酒 |
原材料 | 米(国産)、米こうじ(国産米)、醸造アルコール |
酒造年度 | 2017BY |
原料米 | 麹米 五百万石 精米歩合65%、掛米 国産一般米 精米歩合68% |
精米歩合 | 68% |
酵母 | 一号酵母 |
アルコール度数 | 20-21度 |
日本酒度 | -2 |
酸度 | 1.6 |
アミノ酸度 | 1.6 |
製造年月 | 2018-09 |
杜氏 | - |
その他情報 | - |
商品ページ | - |