「だれやみ」で日本酒を飲もう! 千徳 純米|日本酒レビュー

千徳酒造は、酒造りにはけっして理想的とは言えない暖かい気候の宮崎県で日本酒だけを造る唯一の酒蔵である。千徳の純米酒はシトラス・アンド・ライシーで、飲んでいると食べ物が欲しくなる酒だ。

「だれやみ」で日本酒を飲もう!  千徳 純米|日本酒レビュー

シトラス・アンド・ライシー

最初の印象はシャープな柑橘の香りで、その奥にやわらかな米がいる。冷やして飲むと、やさしくて、それでいて爽やかなオレンジの香りがして、ヨーグルトやクリームチーズの乳っぽい香りが重なり、白米や杏仁のような甘い香りが追いかける。やわらかな甘さと酸味、苦みと後口のうま味がなめらかに流れ、それをドライな印象が支える。

少しだけ温めてみた。元気な顔が出てくる。飲んでる自分も元気になる。さらに温めると、他の香りとのバランスをとったままオレンジの香りがまた出てくる。冷やして飲むか、すこしだけ温めるかのをおすすめする。あまじょっぱい料理、照り焼きやスイート・チリ・ソースのかかったタイ料理のさつま和えなどを合わせたい。

宮崎独特の飲酒文化「だれやみ」

「だれやみ」とは「一日の疲れ(だれ)、仕事を終える(やめ)」という意味の宮崎の地域食文化だ。一日の疲れを癒やすのは何か? もちろん、酒だ。宮崎を拠点にする文化地理学者の中村周作は「だれやみ」は単なる晩酌ではなく、この地域の、酒と食が疲れを癒やす比類なき料理文化の典型だという。より大事なのは仕事終わりの飲酒が、もちろん、神に近づく聖なる力による儀式であることだと強調している。

だれやみは単なる地域の習慣を超えて、私たち酒飲み皆の人生の指針にしたいと私は思う。晩酌を特別な時間にしよう。酒の味わいを楽しもう、飲む量は、むさぼるよりもほろ酔いくらいに留めておこう。そして、お米のことや農家さんや酒を造る人びとのたゆまない努力に、少しだけ思いを馳せよう。

2019年11月、京都にて

ラベル情報

醸造元: 千徳酒造(宮崎県延岡市)
タイプ: 純米, アルコール度数: 15%
原料米: 県産米(精米歩合60%)

参考文献


この記事は“Do the Dareyami! | Sentoku Junmai | Saké Reivew”の翻訳です。