酒米を銘柄別で見ると山田錦、五百万石、美山錦で7割近くに
日本酒の原料となる酒米。その王様とされるのが山田錦で最も多く生産されている、その次は五百万石、ということは知っていましたが、その後はどうなっているのだろう。
上位3銘柄で7割近くを占める
日本酒の原料となる酒米。その王様とされるのが山田錦で最も多く生産されている、その次は五百万石、ということは知っていましたが、その後はどうなっているのだろう。
★関連記事 → 酒米の系譜〈山田錦、五百万石、美山錦、雄町〉
ということで酒米のビジュアライズシリーズ、今回は酒米の銘柄別生産量をグラフにしました。
【追記 2017年9月14日】データを速報値から確定値に差し替えました。
グラフに掲載したのは上位10品種。それ以外の銘柄は「その他」に含めました。
上位3銘柄(山田錦、五百万石、美山錦)で全体の7割近くを占めているのがわかります。その後は圧倒的に少ない量が続きます。2015年は全国で106銘柄の酒米が栽培されましたが、その多くが500トン以下となっています。
そして下のグラフは上位20位の品種です。
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酒米、酒造好適米、醸造用玄米
ここであらためて「酒米」について詳しく見ていきましょう。
酒米とは日本酒を造るのに使われる米のことで、食用米にはない、酒造りに有利な特性があります。それらは、粒が大きい点、中心部に心白と呼ばれる空気の入った白い部分がある点、タンパク質の含有量が少ない点です。
酒米は正式には「酒造好適米」と呼ばれます。農林水産省の統計では「醸造用玄米」という用語が使われていますが、酒造好適米と同じです。
酒米の生産量をどうやって知るか
「酒米の系譜図」を作成した後、酒米の生産量について調べていました。山田錦、五百万石がトップだということは知っていましたが、その他の銘柄の生産量はどうなっているのかを知りたかったのです。
生産量そのものの統計を見つけることができませんでしたが、農林水産省の米穀の農産物検査の結果をソースとすることにしました。
農林水産省の農産物検査とは
農林水産省の農産物検査は農産物検査法という法律に基づいて行われています。1等、2等などと米の等級を決めて、その規格による取引や、小売段階で品種や産地などの表示するための根拠となる検査です。
今は米の流通は自由化されています。農産物検査を受けることも任意で、米に関しては約6割が受検しているとされています。ですので、農産物検査量は生産量と一致しません。
しかし、他に生産量を示す統計を見つけることができていないのと、酒造りの場合、米の等級が重要になっているので、農産物検査量を生産量の概数とみてもよいと考えました。この点は更に調査が必要です。
【4月11日追記】
農林水産省の穀物課に問い合わせたところ、醸造用玄米の場合ほぼすべてが検査を受けているとのことでした。ただ、具体的な割合はわからないとのことです。
酒造好適米ではないが酒造りに使われる米
米穀の農産物検査結果を見ると、酒造りに使われている有名な銘柄でも醸造用玄米に分類されていないものがあります。
例えば香川県の「さぬきよいまい」、秋田県の「亀の尾4号」などは醸造玄米ではなく、水稲うるち玄米のパートで集計されています。この点も要調査です。
(4月11日追記)
こちらも農林水産省に問い合わせたところ、醸造専用でないものは水稲うるち玄米に分類されているということでした。確かに亀の尾は「飯米だけど酒造りにも使われる」米です。
食用米を使った酒造り
酒造好適米はその特性から、麹や酒母を作るのに使われます。酒母のあと三段仕込みで仕込む掛米は、酒造好適米を使う場合も食用米を使う場合もあります。
滋賀県を中心に20近くの都府県で栽培されている食用米の日本晴は掛米に使われることが多いです。
また、食用米を使って日本酒を造る酒蔵もあります。たとえば、京都府の白杉酒造は食用米のみを使った酒造りを行っています。
参考資料
- 農林水産省 米穀の農産物検査結果
- 独立行政法人酒類総合研究所「酒造好適米について」『酒販サポートニュース38』平成25年6月
- 農林水産省総合食料局「米の農産物検査について」平成19年3月23日
おすすめ日本酒の本
日本酒や酒米の勉強をするのに役に立った本をご紹介します。
ブルーバックスの『日本酒の科学』和田 美代子 (著), 高橋 俊成 (監修)
酒米はもちろん、日本酒の造り、微生物の働き、熟成など多岐にわたった内容です。科学的な根拠が示されているのでおすすめです。
田崎真也さんの『No.1ソムリエが語る、新しい日本酒の味わい方』
たくさんの日本酒銘柄が原料米別に紹介されています。酒米の種類によってどのような日本酒が出来上がるかを知りたい方におすすめです。
こちらは最近改訂版が出た『酒米ハンドブック 改訂版』副島 顕子(著)。ハンドブックなので手軽に持ち歩けるサイズ。試飲会で新しい酒米に出会った時にさっと取り出せるのがいいですね。
酒米、酒米ではないけど酒造用によく使われている一般米が網羅、米の特徴はもちろん、系譜図と米の写真。これだけの米の写真を集めるには大変な努力を要したことでしょう。米の基礎知識のコラムも充実していてマストバイなハンドブックです。