搾り(上槽)〈伏見帖〉
いよいよ日本酒造りの最終工程、「搾り(上槽)」です。もろみを濾して液体を取り出します。これが日本酒です。ここで残った個体の部分が酒粕になります。
仕込んでから2週間から5週間でもろみが十分に発酵して搾れる状態になります。もちろん計画は立てますが、実際にいつ搾るかはもろみの状態を確認して決めます。早すぎても遅すぎてもおいしい酒になりません。いつもろみを搾るかを決めるのは杜氏さんの役割です。
杜氏さんは、仕込んでから毎朝、もろみの状を確認します。今は分析器にかけて成分を調べますが、基本的に味や香り、見た目で判断します。分析にかけるよりも早くわかるからです。
育てあげたもろみを世に送り出す
搾りの日は、蔵の方々は朝5時から準備を始めます。朝の気温が低い時はもろみの発酵の状態が安定するので、搾っている間に発酵が進んでしまわないようにするためです。
この日は、始発列車で蔵に向かいました。駅を降りて蔵に近づくと、華やかな青りんごの香りがあたりを漂っていました。
普段はやさしい蔵人さん、杜氏さんも、この日はとても真剣な表情で、酒蔵の空気ははぴりりと張りつめます。搾りは酒造りの最後の工程、今まで丁寧に積み上げてきた酒造りの集大成です。緊迫した空気ともに、いままで育て上げてきたもろみを世に送り出すという蔵人さんたちの気持ちの高揚感を感じました。
搾りの作業
いよいよ搾りの始まりです。蔵人さんたち全員が集まって作業を行います。もろみを大きなひしゃくを使って丁寧に絞り袋と呼ばれる綿の袋にいれていきます。
大量のもろみ袋に入れるのは大変な作業です。機械を使わないのは、もろみの中に残る米粒をつぶさないようにするためです。
40個位の袋に入れたもろみから、しずくがポタポタ落ちてきます。斗瓶という18リットルのお酒が入るきれいな瓶でそのしずくを受けます。このようにして造る日本酒は、雑味がすくなく、きれいな味のお酒になります。
しぼりたての酒を味わう
6時間ほどかけてゆっくりとしずくが集まりま した。そのあと、すすめられて、まさにしぼりたての酒を飲みました。
感動する美味しさでした。若い香り、スッキリとした甘さ、さわかやな酸味。
しぼりたての味と香りの素晴らしさはもとより、米を洗うところからの酒造りの工程、丁寧な積み重ねをずっと見学し体験したあとにいただいたお酒は生涯忘れられない味でした。