イベントレポート 日本酒レッスン その3「漆器と日本酒」〈前編〉
日本酒をより深く知り、体験して、日本酒のある生活をより楽しいものにする、これをゴールに開催している「日本酒レッスン」、3回目のテーマは「漆器と日本酒」です。
(2015年12月5日開催)
日本酒をより深く知り、体験して、日本酒のある生活をより楽しいものにする、これをゴールに開催している「日本酒レッスン」、3回目のテーマは「漆器と日本酒」です。
ゲスト講師に京都で活躍する漆作家の追立睦さんをお迎えして、漆器について講義をいただき、参加者の方に漆器で日本酒を楽しんでいただきました。
参加者の皆様からは、「普段漆器でお酒を飲む機会がないので、新しい気付きがあってよかった」「家にも漆器の酒器がほしいと思った」「料理とお酒がとてもおいしかった」といったご感想をいただきました。
日常生活で楽しめる漆の作品をつくる漆作家・追立睦さん
講師は京都で活躍する日本酒が大好きな漆作家の追立睦さん。漆器作りの一つ一つ積み重ねる地道な作業が好きで、漆に携わっているとのことです。
追立さんは高校・大学と漆を学んだあと、一旦は別の仕事につきましたが、「漆をやりたい」という思いがあって、漆の世界に戻りました。現在は京都漆器青年会に入って制作活動を続けています。
追立睦さんの作品。茶道具、酒器、バスの押しボタン
追立さんは、茶道具のほか、酒器やアクセサリーなど日常の中で楽しめる作品を多く手がけています。
写真右奥のぐい呑みはちょっと大きめです。追立さんはお酒が大好きなので、満足できる量のお酒を注げる大きさ、ということでこの大きさになってしまったとのこと。使う人、つまりお酒が好きな人のことを考えて作られてる酒器なのです。
こちらが蝶のピアス。和紙に漆を塗り重ねて作られたものです。貝殻を使って装飾する螺鈿も施されています。
写真下の方は製造工程の説明。蝶の羽の形をした和紙から、漆を重ねて完成するまでの道のりがわかります。
面白かったのは、バスの押しボタン。実際にバスで使われているのと同じものに、漆を載せて蒔絵や螺鈿で装飾したものです。
これは、追立さんがひょんなことから出会った、バスボタンを作っている会社の方とのコラボで生まれたそう。追立さんが「この押しボタンに漆をのせてみましょうか」と軽く提案したところ、実現したということです。
漆の作品を展示する場合、普通は作品に触れることはほとんど無いそうです。ですが、押しボタンの場合は躊躇なく押してみる方がほとんどだとのこと。漆の独特の手触りを体験してもらえるいい作品になったと追立さんは語ります。
漆について知るレッスン
そして本題。漆について知る講義です。素材としての漆の特徴、漆器作りの現場などのお話から、漆器でお酒を飲むことの良さをお話いただきました。
また、漆器の手入れの方法、保管のコツ、使い方のコツなどを教わりました。
漆器、磁器、ガラスの器で日本酒を飲み比べ
追立さんの漆レッスンのあとは、日本酒コンシェルジュUmio(江口崇)から、3種類の器を使ったテイスティングのワークショップ。
写真はテイスティングに使った器です。左から漆器の盃、磁器のおちょこ、ガラスのテイスティンググラス。
それぞれ形も素材も違う器で、柑橘系の香りと酸味がさわやかな「新政 亜麻猫(あらまさ あまねこ)」とふくよかな香りと力強い味わいの「車坂 山廃純米 五百万石」を飲み比べました。
3種類の器では、香りの感じ方や口の中にお酒が入ってくる感触の違いがありました。参加者の皆さんにこの違いを体験していただきました。お酒の種類によって、どの器がおいしく飲めたか、という違いも楽しめました。
後編では、この他の日本酒ラインナップと馳走いなせやさんの料理をご紹介します。
撮影:aoi nkgw