亀の尾らしいシャープさ「不老泉 山廃仕込 純米吟醸 亀の尾 無濾過生原酒」日本酒テイスティングノート
〈日本酒レビュー〉亀の尾らしいシャープさが僕の好物の豚の脂身とマッチ。飲みながら、酒には単純な地域主義より尊いものがあると気がついた。
シャープで透明感がある味わい
ライチの香り、甘味、そして少しだけ柑橘を感じる。上品なハッカ飴のような感触。亀の尾らしい酸味と苦味の組み合わせがよくて、シャープで透明感のある味わいだ。酸味と苦味でよく切れる。余韻に米を感じる甘味がふわっと、なめらかに上がる。
酒のシャープさが、豚の脂身とよく合った。
(テイスティング日: 2021年7月27日)
酒には、地域主義よりも尊いものがある
蔵元の上原績さんによると、今から20年以上前から亀の尾を使って不老泉を醸しているという。全国でもまだ10蔵程度しか亀の尾を使っていなかった時代だ。
上原酒造では、滋賀県産の酒米のほかに3種類の県外さんの酒米が使われている。秋田の酒屋さんの紹介で青森産の「亀の尾」と、岡山の天ぷら屋さんの伝手で「雄町」、そして杜氏の横坂安男さんが自ら育てる千葉県「総の舞」で酒が醸される。
県産米はもちろん、県外産米もすべて「人のつながりが濃い米」だ。総の舞の酒に至っては、「米を作って酒を造る」横坂杜氏の「生き様」が表現されている。
最近、酒の地域主義や地産地消がトレンドになっているけど、やや過大評価されているのではないかと思う。食文化や経済圏の違う「県内の違う地域」のものを使って「地域性」を謳っている酒には食の地域性を感じづらい。また、「地産地消」であるけれども生産者どうしのつながりをもっと表現してほしいなと思う酒もある。
消費者として、酒米農家と酒蔵の「つながり」が大切だと考える。必ずしも地産地消である必要はない。地域主義の酒も、地域は違えど人のつながりや生き様が込められた酒も、同じように尊い。二つの地域性をもち、それらをつないでいることはもしろ、単純な地域主義よりもずっと尊いのだ。そんな酒を飲みたい。そんな酒で酔いたい。
ラベル情報
不老泉 山廃仕込 純米吟醸 亀の尾 無濾過生原酒
- 〈醸造元〉 上原酒造(滋賀県高島市)
- 〈仕込み水〉 -
- 〈原料米〉 滋賀県産 山田錦 6%(酒母)、青森県産 亀の尾 94%(もろみ)
- 〈精米歩合〉 55%
- 〈杜氏〉 横坂安男
- 〈特定名称/種別〉 純米吟醸酒
- 〈アルコール度数〉 16度
- 〈原材料〉 米(国産)米こうじ(国産米)
- 〈酒造年度〉 R1BY
- 〈製造年月〉 R3-01