「フランス惣菜と日本酒」日本酒レッスン その4 イベントレポート〈前編: フランス惣菜〉

日本酒とその周りの文化をまるごと学び、より楽しい日本酒ライフを提案する「日本酒レッスン」。4回目は京都でシトロンお菓子教室を主催するパティシエールの山本稔子さんを講師に開催しました。

「フランス惣菜と日本酒」日本酒レッスン その4 イベントレポート〈前編: フランス惣菜〉

日本酒とその周りの文化をまるごと学び、より楽しい日本酒ライフを提案する「日本酒レッスン」。4回目は、京都でシトロンお菓子教室を主催するパティシエールの山本稔子さんを講師にお迎えして開催しました。

ワークショップでは山本稔子さんが作るフランス惣菜・スイーツと日本酒を合わせました。

参加者の皆さんの感想

「料理と合わせてどれがおいしいかを選びながら飲むのが楽しい」「普段自分では選ばないお酒もあって、好きなものが広がった」「日本酒とフランス料理を合わせるのは斬新! 日本酒の可能性、楽しみをもっと知りたい」「山廃や古酒に対してよいイメージがなかったが、今日飲んでみてまろやかでおいしく、料理との相性も抜群だった。自分に枠を当てはめるのは良くないと気がついた」「昼間から飲めて、言うことないです!」

などのご意見をいただきました。

フランス惣菜・スイーツと日本酒

会場は山本稔子さんが経営する「ビストロ・セー」。

会場のビストロ・セー

フランスのカフェのようなおしゃれな雰囲気です。内装のアイデアは稔子さん自身によるものです。センスを感じますね。

会場のビストロ・セー

ウェルカムドリンクは伊根満開ソーダ

ウェルカムドリンクは伊根満開のソーダ割り。稔子さんはいくつかの割合で試し、甘さが負けてしまわない、かつ炭酸を感じる割合を見つけました。「伊根満開:炭酸水=5:6」です。

(※ このあと、伊根満開を醸す向井酒造の向井杜氏より、更においしい伊根満開ソーダの配合を教えていただきました。

ウェルカムドリンクは伊根満開ソーダ フランス惣菜と日本酒

日本酒と料理を合わせるときの3つのルール

日本酒レッスン、開始です! まずは日本酒と料理の合わせ方について、日本酒コンシェルジュのUmioより解説いたしました。

お酒と料理を合わせる基本のルールを3つ。

同調・ハーモニー

同調・ハーモニー」は、同じタイプの味と香りであわせる方法。もっとも基本のあわせ方です。たとえば、フルーティーな吟醸酒とフルーツの組み合わせです。

出会い・マリアージュ

二つ目は「出会い・マリアージュ」。まったく違う2つの風味が出会って第3の風味がうまれる組み合わせです。

たとえば、柑橘系の香りがする吟醸酒と湯葉。湯葉の上にあしらわれる柚子の皮やすだちの役割を柑橘のような爽やかな香りが担う、という組み合わせです。

お互いを引き立て合う

そして三つ目が「引き立て」。料理がお酒を、お酒が料理を引き立てる、日本酒独特のあわせ方です。料理を邪魔しないきれいなお酒を合わせたり、軽快な味わいのお酒を合わせたりします。

ワインに比べると、日本酒はほぼどんな料理にも合うと言えます。ご飯に合うおかずなら何でも合うのです。日本酒には必ず米のニュアンスがあるからです。

このほか、日本酒には魚介類の生臭さを消す特徴があります。主に麹に含まれる成分の作用によるものです。これは、ワインにはない特徴ですね。

日本酒コンシェルジュによる料理と日本酒のペアリング解説

大切なことは、これらのルールがすべてではないこと。ルールにとらわれずに、実際にいろいろな料理といろいろなお酒を合わせて、抜群の組み合わせが見つかったりします。

また、「合う」「合わない」も個人の嗜好の範囲です。ある組み合わせがいいと思う人もいれば、それは微妙だなと感じる人もいます。

色々な組み合わせを試してみて、発見することはとても楽しいです。一緒にいる人と「これがいい、あれがいい」などと感じたままに言い合うこともまた楽しいですね。

フランス惣菜に合わせる日本酒ラインナップ

今回、フランス惣菜に合わせた日本酒のラインナップをご紹介します。

フランス惣菜と日本酒

写真左から、日本酒のラインナップをご紹介します。

富翁 純米酒 プルミエアムール

(北川本家・京都府京都市伏見区)
白ワインにも似た甘酸っぱい味わいです。

富翁 純米原酒 山廃仕込

(北川本家・京都府京都市伏見区)
甘酸っぱい味わいにヨーグルトやミントのような香りを感じます。

不老泉 山廃純米吟醸 渡船 無濾過生原酒

(上原酒造・滋賀県高島市)
まろやかな口当たりで乳製品を思わせるふくよかな香りがたっぷり。

不老泉は燗酒でフランス惣菜と合わせました。会場のビストロ・セーはビストロなので徳利やちろりなどの燗酒器具がありません。そこで、ミルクウォーマーを使うことにしました。これがなかなか使いやすくでおしゃれ。「ミルクウオーマー燗酒」を広めていきたいと思いました。

不老泉燗酒 フランス惣菜と日本酒

伊根満開 赤米酒

(向井酒造・京都府与謝郡伊根町)
甘さの割にはサラリとした口当たりでベリー系の香り、ジャムのような甘さです。

金鵄(きんし)正宗 純米大吟醸十五年古酒

(キンシ正宗・京都府京都市伏見区)
琥珀のような甘さに軽やかなきのこの香りを感じます。

フランス惣菜

ワークショップでは、これらの日本酒に、3酒類のフランス惣菜を合わせました。山本稔子先生のコメントとともにご紹介します。

フランス惣菜と日本酒

右側から時計回りに。

キッシュロレーヌ

【山本稔子先生】
外側の生地は発酵バター、小麦粉、エダムチーズ、アーモンドパウダー、塩、グラニュー糖、水。チーズやアーモンドが入っているので生地だけでも味がしっかりしてて充分おいしいです。具はグリュイエールチーズ、ハム、ベーコン、卵。

(日本酒コンシェルジュUmio)断面が美しいキッシュです。はじめて稔子先生のキッシュを食べて、今までの「キッシュ観」が変わりました。大好きになりました。味わい、断面の美しさ、五感で幸せになるキッシュです。

キッシュロレーヌ フランス惣菜と日本酒

キャロットラペ

【山本稔子先生】
フランスのサラダで定番の人参サラダ 。人参を細く切ってピーナッツオイルとワインビネガーのドレッシングと和えて、少し入ってるみじん切りのニンニクがアクセントに。

(日本酒コンシェルジュUmio)少しだけ入ったにんにくの繊細な香り。ワインビネガーの細い酸味。この2つが合わさって口の中で上がりながら広がっている様子は、香り高い吟醸酒を飲んだときの口中香の動きに似ています。

きのこのケークサレ

【山本稔子先生】
きのこはしいたけ、まいたけ、しめじ、マッシュルームの4種類をみじん切りにしてたっぷりと混ぜ込んでます。生地にはピーナッツオイルやグラナパダーノというチーズが入っているので、風味が豊かです。

(日本酒コンシェルジュUmio)4種類のきのこが奏でる重層的な香り、チーズのコク。これも旨味たっぷりで熟成香のある長期熟成酒に似ていると感じました。

フランス惣菜と日本酒

組み合わせのワークショップ

この3種類のフランス惣菜と3種類の日本酒を合わせて、テイスティングシートに書き込みます。

04フランス惣菜_配布資料

3x3の組み合わせシート。「これはいい!」と感じた組み合わせの♡を塗り、下の空欄には、なぜいいと思ったか、どの香りと味がどのように合ったか、を書いていただきました。

フランス惣菜と日本酒

講師の山本稔子さんは料理のラインナップをどのように選んだのか

ペアリングのワークショップワークショプのあと、講師の山本稔子さんから、どのようにして料理を考えたのかをお話していただきました。

キャロットラペ × 富翁山廃

「ぱっと思いついた感じ、いままで食べてきたものと何が合うのだろうか、ということを思いだしなから考えました」と稔子さん。富翁の山廃を飲んだ瞬間、白ワインを飲んでいるような感覚になったといいます。

稔子さんはキャロットラペとよく冷えた白ワインを食べるのが好きだったので、「これは合うだろうな」という勘が働いたとのこと。そして、実際に合わせてみたらよくあったのでホッとしたそうです。

キッシュロレーヌ × 不老泉 渡船

不老泉の発酵バターのような香りには、キッシュロレーヌの生地にある発酵バターの芳香を合わせました。「キッシュロレーヌはフランス惣菜の定番なので、一度日本酒と合わせてみたいと思っていた」と稔子さんは語ります。

きのこのケークサレ × キンシ正宗 一五年古酒

古酒はきのこの香りが強く、稔子さんは最初「なんだこれ!」と感じ、そんなに飲みたくないと思ったそうです。でも、飲んでいるうちに、このきのこの香りに慣れてきておいしくなってきたので、大好きなきのこ料理のケークサレを合わせてみたということです。ケークサレのあとに古酒の香りがやってくる「追いきのこ」です。

「キャロットラペ」「キッシュロレーヌ」「きのこのケークサレ」は稔子さんが普段からよく作り、食べていたものだったそうです。

話す山本稔子先生 フランス惣菜と日本酒

(2016年1月16日開催)

後編では、日本酒とスイーツを合わせます

後編 ▶