浅茅生@浜大津朝市「生酛仕込み カエル」「セメルダー」「北船路」「フーシェ」日本酒テイスティングノート

〈日本酒レビュー〉2021年7月の浜大津はそれぞれ個性があるけど、どこか共通点を感じる浅茅生。

浅茅生@浜大津朝市「生酛仕込み カエル」「セメルダー」「北船路」「フーシェ」日本酒テイスティングノート

7月の浜大津こだわり朝市は大変な賑わい。恒例のフラダンスの催しもあったりで、「夏だね」と出会った知人と話したり。

今月の日本酒ブースは大津市の「浅茅生」平井商店。まちなかのアーケード商店街にある酒蔵だ。お酒は4種類、どれも個性あふれる味わいだけど、根底にある「浅茅生らしさ」がしっかりと感じられた。朝市で会った何人かの知人と話したけど、同じ意見の人が多かった。朝市のお酒ブースを前に、「浅茅生の味ってなんだろう?」と話し合うのもまた、楽しい。

北船路 無濾過 純米吟醸生原酒

これが一番いいと思った酒。常温では甘味と酸味を細い苦味とピリピリとした刺激が支え、余韻にコクがある。燗酒では、ふわっとした口当たりで、やわらかく、ジューシーさが広がる。

大津市北船路地区の棚田で栽培された山田錦を使っている。大津はかつて湖上交通の要所だった。大阪や京都から大津を通って琵琶湖を北に進み、陸路をはさんでさらに日本海側に抜けるルートがあった。北船路という地名には、北に向かう船を望む場所という意味があるのだろう。そして、酒銘に使われるとさらにロマンが上がる。

純米活性にごり酒 湖雪(フーシェ)

吹き出し注意の活性にごり、「フーシェ」には独特の香りがある。なんだろうとじーっと考えていたら、ココナッツカレーから漂うココナッツミルクの香りだとわかった。酒にうま味あるから、ココナッツのお菓子ではなく料理を思い起こさせるのだろう。

責めが集まった「セメルダー」

お酒を搾るとき、最後の最後に出てくる部分を「責め」という。もろみの入った袋―随分搾ったけどまだ残っている―を責めるように圧をかけて搾るからこう呼ばれる。味や香りが複雑で、雑味も多くなる。

平井商店の平井将太郎さんによると、責めの部分は今までは単独で商品として出さずに他の商品にブレンドして使っていたという。今回はじめて、米などが違う8つの仕込みの責めの部分だけをあわせてみたらうまく行ったので、商品化したとのことだ。

いろいろな味があるけどバランスがよい。常温では舌の上に和三盆を載せたような甘味と、後半の軽やかな穀物感と米飴のニュアンス。燗酒では、さらりとした口当たりにまとまりのあるコク。落雁のような、和菓子っぽい感じのする酒だ。

「滋賀生酛」というジャンルがうまれつつある

今年から造りはじめたという生酛。常温では、なめらかで米を感じるコクが軽やかに立ち上がって消えていく。特徴的な切れ方をする。燗酒では、口の中に味わいの塊があるような感触がおもしろい。

滋賀県ですでに生酛造りを復活させているところはたくさんあるけど、その中で「初桜」の安井さんと「大治郎」の畑さんに指導を受けたとのこと。この日の朝市では人気で、朝9時過ぎには売り切れてしまったらしい。小さい仕込みで量が少ないこともあるが、こういった取り組みへの飲み手の関心が高いのだと感じた。

滋賀県産の生酛をいくつか飲んで思ったことは、酸味や押し味もそうだけど、それよりも色濃く滋賀酒らしさがあることだ。素朴で実直で米が主張するさまをあけっぴろげにするような味わいが根底にある。これから、「滋賀生酛」というジャンルが確立するかもしれない。

湖岸ピクニック

曇り空だったけど、琵琶湖のワカサギ天ぷらと燻製ずしを持って、湖岸の芝生でちょっとしたピクニックを楽しんだ。琵琶湖を眺めながら食べたら、そのまま仰向けになって空を見ながら昼寝した。最高!

テイスティングノート

浅茅生 生酛仕込み「カエル」2020BY 無濾過生原酒

常温では、なめらかで米を感じるコクがある。ポン菓子のような軽やかな穀物系の香り。切れ方が特徴的で、軽やかに立ち上がって消えていく感じでおもしろい。味のこさからか軽やかさに移行するさまがよい。余韻に苦味がある。

58度くらいの燗酒では、温度を感じた後、酸味、米らしいコク、渋味が順番にやってくる。口のなかに味わいの塊があるような感触がある。

浅茅生 2020BY あっさんぶらーじゅ「セメルダー」

常温では、やさしさや可憐なさまが感じられる。舌の上で和三盆を溶かしたような甘味があって、後半は濃い目に焙煎したポン菓子のような穀物感。それから、軽やかに米飴。余韻にもポン菓子がある。

55度くらいの燗酒では、さっと入って、まとまりのあるコクがついてくる。甘味とポン菓子の香り。和菓子っぽい味わい、落雁とかきなことか。苦味で切れるのがよい。

浅茅生 北船路 無濾過 純米吟醸生原酒

常温では、甘味と酸味を細い苦味とピリピリとした刺激が支える。余韻の米やナッツを感じる落ち着いたコクがよい。

燗酒50度くらい。ふわっとした口当たりで、やわらかく、やさしい。ジューシーさが広がり、酸味と米を感じる渋味。後半コクがあるのがよい。

浅茅生 純米活性にごり酒 湖雪(フーシェ)

辛味とうま味、そして独特の風味。これはなんだろうと、うーん、と考えたら、ココナッツミルクだとわかった。お菓子に入っている甘いココナッツミルクとより、料理に入れた時にキッチンに漂う香りに近い。ココナッツカレーの甘い香りだけを抽出したらこうなるのかな。

(テイスティング日: 2021年7月18日)

ラベル情報

浅茅生 生酛仕込み「カエル」2020BY 無濾過生原酒

  • 〈醸造元〉 平井商店(滋賀県大津市)
  • 〈仕込み水〉 -
  • 〈原料米〉 -
  • 〈精米歩合〉 60%
  • 〈杜氏〉 -
  • 〈特定名称/種別〉 -
  • 〈アルコール度数〉 17.5度
  • 〈原材料〉 米(滋賀県産)、米麹(滋賀県産米)
  • 〈酒造年度〉 2020BY
  • 〈製造年月〉 R03-07

浅茅生 2020BY あっさんぶらーじゅ「セメルダー」

  • 〈醸造元〉 平井商店(滋賀県大津市)
  • 〈仕込み水〉 -
  • 〈原料米〉 -
  • 〈精米歩合〉 60%
  • 〈杜氏〉 -
  • 〈特定名称/種別〉 特別純米酒
  • 〈アルコール度数〉 17度
  • 〈原材料〉 米(国産)、米こうじ(国産米)
  • 〈酒造年度〉 2020BY
  • 〈製造年月〉 R03-07

浅茅生 北船路 無濾過 純米吟醸生原酒

  • 〈醸造元〉 平井商店(滋賀県大津市)
  • 〈仕込み水〉 -
  • 〈原料米〉 滋賀県大津市 北船路産 山田錦100%
  • 〈精米歩合〉 60%
  • 〈杜氏〉 -
  • 〈特定名称/種別〉 純米吟醸酒
  • 〈アルコール度数〉 18度
  • 〈原材料〉 米(国産)、米こうじ(国産米)
  • 〈酒造年度〉 2020BY
  • 〈製造年月〉 R03-07

浅茅生 純米活性にごり酒 湖雪(フーシェ)

  • 〈醸造元〉 平井商店(滋賀県大津市)
  • 〈仕込み水〉 -
  • 〈原料米〉 -
  • 〈精米歩合〉 70%
  • 〈杜氏〉 -
  • 〈特定名称/種別〉 純米酒
  • 〈アルコール度数〉 13度
  • 〈原材料〉 米(国産)、米こうじ(国産米)
  • 〈酒造年度〉 2020BY
  • 〈製造年月〉 R03-07

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