なら泉勇斎で菩提酛の酒を飲み比べる 2020

〈日本酒レビュー〉菩提山正暦寺の酛たて行事のあと、なら泉勇斎で菩提酛の酒を飲みました。

なら泉勇斎で菩提酛の酒を飲み比べる 2020

菩提酛研究会の酒、味わいの多様性

菩提山正暦寺で2回目の菩提酛たて行事に参加したあと、この酛を使ったお酒がすべて飲める「なら泉勇斎」に向かった。

正暦寺菩提酛たての行事、2020年1月

お店では店主のお父様、山中信介さんのお話をお聞きできたのが幸運だった。山中さんは奈良県工業技術センターで菩提酛の開発にかかわったあとこの店を開き、店主の息子さんとともに奈良酒の魅力を伝え続けている。

菩提酛にまつわるいろいろな話題の中で、私がずっと疑問に思っていたこと、なぜ同じ酒母で違った味の酒ができるのかを丁寧に説明していただいた。研究会では当初、日本酒度と酸度のターゲットを取り決めて、似た酒質の菩提酛酒を造っていたが、7〜8年でその規格を撤廃したとのこと。もともとの自分の蔵の味とかけ離れることを避けたいという考えたあったからだという。

菩提酛で造った酒2つと、菩提酛でないけれども菩提酛研究会に参加している蔵元のどぶろくをいただいた。「嬉長(きちょう) 菩提酛 純米酒」は柑橘と米のニュアンスとともに菩提酛らしいチーズの香りがする酒で、「菩提酛 つげのひむろ」は米の収穫の情景が浮かぶ酒。濃醇で穀物感とナッツ感がある。

次は「百楽門どぶろく 生酒」、目の荒いふるいで濾した「にごり酒」の清酒(「濾す」ことが要件となっている)ではなく、「濁酒」の生原酒だ。爽やかで力強い中に穀物感がある味わいを楽しんだ。

テイスティングノート

それぞれグラスで12℃前後の温度でテイスティングした。

嬉長(きちょう) 菩提酛 純米酒 2019年醸造

最初に柑橘のニュアンスがくる。酸味と苦味が柚子の皮を思わせる。みかんの白いわた、ほのかにチーズ、そしてわらや生米の香り。後半に味が膨らむのがよい。後口にアルコールの辛さと酸味。

菩提酛 つげのひむろ 2019年醸造

米の収穫の風景が心に浮かぶ酒。甘いお酒。とろりとした口当たりで濃醇。穀物感と甘くて濃厚なカシューナッツとちょっとしぶみがあって香りが豊かなアーモンド。後半にカカオの香りとうま味がやってくる。

百楽門どぶろく 生酒

爽やかで力強い中に穀物感があるどぶろく。酸味と炭酸ガスの刺激が心地よい。粒はやわらかいけど、まだ少し噛むことができる。どぶろくらしさを残している。香りはウエハース・クリームチーズ・柚子ピール。余韻は長くて、酸味とガス感、苦味、ウエハースやポン菓子の香り。

(テイスティング日: 2020年1月11日)

ラベル情報

嬉長(きちょう) 菩提酛 純米酒 2019年醸造

  • 〈醸造元〉 上田酒造(奈良県生駒市)
  • 〈仕込み水〉 -
  • 〈原料米〉 -
  • 〈精米歩合〉 70%
  • 〈杜氏〉 -
  • 〈特定名称/種別〉 純米酒
  • 〈アルコール度数〉 16度
  • 〈原材料〉 米(国産)・米こうじ(国産米)
  • 〈製造年月〉 2019-11

菩提酛 つげのひむろ 2019年醸造

  • 〈醸造元〉 倉本酒造(奈良県奈良市)
  • 〈仕込み水〉 -
  • 〈原料米〉 -
  • 〈精米歩合〉 70%
  • 〈杜氏〉 -
  • 〈特定名称/種別〉 純米酒
  • 〈アルコール度数〉 15度
  • 〈原材料〉 米、米麹(国産米)
  • 〈製造年月〉 2019-11
  • 〈その他情報〉 日本酒度-2、酸度1.5、アミノ酸度1.5

百楽門どぶろく 生酒

  • 〈醸造元〉 葛城酒造(奈良県御所市)
  • 〈仕込み水〉 -
  • 〈原料米〉 -
  • 〈精米歩合〉 -
  • 〈杜氏〉 -
  • 〈特定名称/種別〉 濁酒
  • 〈アルコール度数〉 16度
  • 〈原材料〉 米(国産)・米こうじ(国産米)
  • 〈製造年月〉 01-11

参考資料

  • 奈良の地酒はお任せあれ. 朝日新聞. 2012年4月7日.