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室町時代の製法で造られた洗練の味わい「神開 水酛壱号」日本酒テイスティングノート

日本酒コンシェルジュ Umio 江口崇 日本酒コンシェルジュ Umio 江口崇

歴史ある醸造法で洗練のモダン・テイスト

ここ数年、「菩提酛」「水酛」の製法で造られた酒をよく耳にするようになった。室町時代に菩提山正暦寺ではじまったスタイルの酒母(酒の発酵のスターター)を使って醸される日本酒だ。大正の終わりから昭和のはじめ頃には廃れたが、1990年代から復活する蔵がでてきて現在では全国の多くの蔵が手掛けている。

滋賀県は水口にある藤本酒造が水酛の酒をリリースしたと知って、さっそく飲んでみた。室町時代の製法を取り入れているけれども、洗練されたモダンな味わいだった。奈良・大倉本家の技術指導を受け、独自の工夫を加えて醸された[1]そうだ。大倉本家は菩提酛・水酛復活のずっと前、昭和のはじめから神社に納める水酛の濁酒を造ってきた蔵である[2]

甘味は強いけれども酸味も強く、重さをあまり感じさせない、菩提酛・水酛特有の乳っぽい香りと柑橘のニュアンスがよい塩梅で共存している。

冷やすとローズマリーや熟したライチ、パルミジャーノ・レッジャーノの香り。後半に広がる米のニュアンスがよい。ヨーグルト風味のあるフルーツゼリーのよう。そのまま置いて温度が上がっていくと、味わいの広がりがよい。室温くらいが味わいを噛みしめられてよい。燗酒では、ちょっと熱めの55度位がいちばんおいしかった。このくらいに温めると、豊かな味わいを感じながら飲み進められる。

冷たい温度では酢の物、温めるとだし巻きによくう。料理に合わせるときにワクワクする酒である。

テイスティングノート

10°Cくらい、グラスで

ローズマリー、熟したライチ、チーズ(パルミジャーノ)の香り。しっかりとした酸味とクリアな甘味はバランスが取れている。菩提酛・水酛特有の「そやし水」の香り、乳っぽくて発酵の息吹を感じる香りがぐわりとやってくる。そして爽やかな柑橘のニュアンスが顔をのぞかせ、コクが広がる。切れはよく、後味には米を感じる。さらにレモンピールのような酸味と苦味がある。そして再び余韻にそやし水の香り。少しヨーグルト風味のあるフルーツゼリーやレモンの砂糖漬けのよう。

16°Cくらい、グラスで

少し温度が上がると、酸っぱい香りが立ち上がる。水酛の酒らしい。味わいも落ち着く。

22°C、グラスで

よい! 柑橘果汁のニュアンスが引き立てられる。柔らかく、味幅がある。

43°C、ちょこで

とてもよい! 甘味、うま味、そしてお米の香りが口腔と鼻腔の中に広がる。酸味が立ち上がる。酸味が強くなって、コクもしっかり。膨らみがあり、豊かな酒。やさしくて、後半特に味が広がる。酸味・柑橘感・コクが心地よい。飲み進められる。

55°C、ちょこで

よい、よい! 柚子ピールやみつのニュアンスがでてくる。少しミルキーさが上がってきて、うまい!

60°C、ちょこで

穀物感が出てくる。ポン菓子。ふくよかで、料理と合う。豚肉の脂身に合わせたい。

ペアリング

こんにゃくの酢の物とよく合った。これは春雨の酢の物のような味付け。味の透明感とコリコリとした口当たり、味わいとテクスチャにこの酒は合う。

燗にしたとき、だし巻きとよく合った。酒と料理が支え合うように感じた。さつま揚げとも合った。

(テイスティング日: 2021年1月24日)

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ラベル情報

神開 水酛壱号

  • 〈醸造元〉 藤本酒造(滋賀県甲賀市)
  • 〈仕込み水〉 -
  • 〈原料米〉 滋賀県産玉栄100%
  • 〈精米歩合〉 60%
  • 〈杜氏〉 -
  • 〈特定名称/種別〉 -
  • 〈アルコール度数〉 15度
  • 〈原材料〉 米(国産)、米こうじ(国産米)
  • 〈製造年月〉 2020-12
  • 〈その他情報〉 酒母: 水酛 / 日本酒度 -30.0 / 酸度 3.0 / 五百年前ノ醸造法デ 蔵付酵母デ醸シタ酒デス

  1. にしむら酒店一酒一会の会だより2021年2月号 ↩︎

  2. 大倉本家ウェブサイト ↩︎