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小夜衣(さよごろも)特別純米酒 生酒|日本酒テイスティングノート

日本酒コンシェルジュ 江口崇 aka Umio 日本酒コンシェルジュ 江口崇 aka Umio

温度を整えると米の力強さ

クラシックな静岡吟醸のニュアンスが少し、温度を整えると米の力強さが出てくる。冷蔵庫から出して少しだけ置いて空気に触れさせつつ温度を上げるか(12度位)、ぬる燗がおすすめ。ボディーはあるけど飲み進められる。料理を呼ぶ酒だ。ご飯のおこげ、カマンベールチーズによく合う。相性のよい料理の範囲は幅広い。(温度計は使っていませんので、温度は目安です)

個性のある小さな蔵

コスモスというブラジル料理店でブラジル北部の料理を味わうため、静岡県菊川市には定期的に足を運んでいる。酒じゃない旅をしていても気になるのがその地の酒蔵。今回ついに、気になっていた菊川の酒「小夜衣」を飲む機会に恵まれた。

菊川市唯一の酒蔵、森本酒造は蔵元父子で酒を造る生産量100石の小さな蔵。南アルプスの伏流水を使って醸すその酒はすべて純米酒である。

今回テイスティングしたのは特別純米だが、静岡吟醸の雰囲気が感じられた。静岡地酒のバイブル『杯が満ちるまで―しずおか地酒手習帳』によると、蔵元はかつて能登杜氏とともに吟醸酒に取り組み、「吟醸酒は素晴らしい酒、吟醸酒を造ることで蔵全体のレベルが上がる」と語っている。

次は小夜衣の吟醸酒を飲もうと思った。

詳細テイスティング・コメント

12度くらい 少し広がった杯で

冷蔵庫から出して注ぎ、空気に触れさせつつ少し温度を上げた。メロンの甘い香り、そのあと米の香りの存在感。後口には米飴の香りが伸びて広がる。そしてそれは力強い。余韻でより米を感じるのだ。

15度位

さらに置いてみる。昔の酒を思わせる印象。その中でややシャープな酸味が突出して、モダンさを感じさせる。メロンの甘い香りが主張するが、オレンジの落ち着いた香りもある。このフルーティーな香りは総じて穏やかだけど、時々派手さが見える。ピリピリとした感触はアルコール由来か。余韻に米飴や湿ったポン菓子の香り。フルーティーな香りが飛び立ったあとに、通奏低音のごとく存在する米のニュアンスが顔を出すのだ。

ぬる燗、45度位

関西の無濾過生原酒ブームで育った私には、生酒らしさは控えめに感じられた。15度位で米の印象が顔を覗かせるのを見て、自然と湯煎の準備を始めた。ぬる燗にするとボディ感が出てきてダイナミックになる。味のメリハリが効いてくる。メロンの甘い香りが主張する。フレッシュメロンジュース。そしてオレンジの柑橘ニュアンスも。よい! ふくよかで、特に後口の米の存在感でほっぺが落ちる、笑みがこぼれる。なにか食べたくなる酒だ。

ペアリング

いろいろな料理と合う。ただ、「何にでも合う」のではなく、相手の料理によって酒が違った表情を見せながら共演するのだ。

炊き込みご飯のおこげと合わせると、後味の米の感じが同調する。酒にあるウリの香りがきれいに包み込む。トマトとは、両方のうま味、そして少し青い香りが並走してよく合う。シウマイの脂に、酒の柑橘のニュアンスが緊張感を与える。よい相棒だ。カマンベールチーズと合わせると、チーズの滑らかさが引き立ち、酒の柑橘のニュアンスがよく寄り添う。これはいい!

(テイスティング日: 2020年7月6日)

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ラベル情報

小夜衣(さよごろも)特別純米酒 生酒

  • 〈醸造元〉 森本酒造(静岡県菊川市)
  • 〈仕込み水〉 -
  • 〈原料米〉 -
  • 〈精米歩合〉 60%
  • 〈特定名称/種別〉 特別純米酒
  • 〈アルコール度数〉 15-16度
  • 〈原材料〉 米、米こうじ
  • 〈製造年月〉 2020-02

参考資料