「このお酒はこんな子」酒を擬人化して表現する
エッジを行く飲み手と日本酒コンシェルジュが飲み語る「日本酒コンシェルジュと日本酒で脳キュン!」。今宵のゲストは、カメラマンの石倉恵美さんです。
エッジを行く飲み手と日本酒コンシェルジュが飲み語る「日本酒コンシェルジュと日本酒で脳キュン!」。今宵のゲストは、カメラマンの石倉恵美さんです。
料理に人格を与え、酒に人を観る石倉さん
石倉さんは京都で活躍するカメラマンですが、その前はお料理の仕事をしていました。
料理の仕事をするとき、いつも「どういう風に料理を舞台に上げてあげようか。どんな器を着せてあげようか」を考えていたといいます。
お酒についても同じように「どんな衣装(器)が似合うか」と考えたり、寝かしておいたほうがよくなるタイプのお酒を「あとから大成する」とか「箱入り娘」などと、人に喩えたりするようになったそうです。
心で飲む石倉さんに衝撃を受ける
石倉さんと日本酒コンシェルジュUmioとの出会いは、2016年10月に開催した「竹生嶋ナイト!」でした。
そこで「竹生嶋 雪花」を「高校を卒業して地元の信用金庫に就職した女の子みたいな味わい」と表現したのを聞いて脳キュンしました。
日本酒専門店「んまい」で飲み比べ
その後、石倉恵美さんの自由なテイスティング表現を聞きたいという思いが高ぶり、日本酒専門店「んまい」で日本酒を飲みながら語り合う機会を設けることになりました。
今日はよろしくお願いします!
よろしくお願いします。どんな子が来るか楽しみです!
遊穂、歳違いを飲み比べ
店長に趣旨をざっくり伝えると、こんな飲み比べをさせてくれました。石川県の御祖酒造の「遊穂」。BY(醸造年度)違いの飲み比べです。
両方とも「遊穂杜氏の直汲み酒 純米吟醸生原酒」。右が平成26醸造年度、左が平成27醸造年度です。
酒米、精米歩合、酵母、すべて同じで年だけが違う2本。その年の米の出来、造りの微妙な違い、そして何よりも熟成期間の違いの差が見えてくるでしょう。
でもこのような違いはほとんど説明せずに、ただ酒を味わおうと努めました。
仲がよい姉妹ですね。
姉妹ですか。うん。なるほど。
お姉ちゃんは、着ているものは、んー、好きなブランドは特にないかな。でもジャニーズが好き。趣味は、アート寄りじゃなくて普通の趣味。
お姉ちゃんは、左の平成26BYのですね。ジャニーズ好き、と。
あと、高校は県でトップ2ですね。大学デビューするタイプ。二重で美人です。
もてそうですね。
もてます。誰にでも好かれるタイプ。男女とも。素直にすくすく育った感じかな~。お父さんが好きなんですね。お父さんも素直な人です。
妹(27BY)の方は?
うーん。そう。メイクとかバッチリしたいという願望はあるけど、でもしないタイプですね。
うんうん。いますね、そういうタイプ。僕は妹のほうが好きかな(酒はお姉ちゃんのほうが好きだけど)。
楽しい。めっちゃ楽しい。彼女と飲むと楽しい。熟成感くらいしかコメントできなかった僕は、心で飲む恵美さんに憧れを覚えたのです。
梅乃宿と玉川を飲み比べ
次の飲み比べは「梅乃宿 純米大吟醸 Unfiltered Sake」と「玉川 純米吟醸 雄町 無濾過生原酒」。両方とも無濾過生原酒です。
玉川の杜氏さんはかつて梅乃宿で修行をしていたそうです。さすがは店長のセレクション。飲み比べには酒質だけでなくストーリーも絡めてくるんです。
うわー。両方とも男性ですね。
うんうん。わかるわかる。「男!」って感じ。
昔から「灘の男酒、伏見の女酒」と言われますが、心で受け止めると、酒の性別は甘辛だけでなく人それぞれの受け止め方で決まるんだと実感した瞬間でした。
それはボディ感だったり、口当たりのやさしさだったりするのでしょう。
玉川の方は、痩せマッチョですね。でも心は純情です。
痩せマッチョ〜!!!
どちらかと言うと地味なんですが、時にとてもアツくなって、ちょっと元気すぎて、こちらのメンタルとか体調によっては「あんたは元気すぎて付き合いきれんわ」って感じになることがありますね。
地味で純情だけど、アツくなると止まらなくなるタイプ。造り手もそうなんでしょうか。よく造り手の性格が酒に出るといいますもんね。
杜氏さんがどんな思いでこの子を育て上げたのかなー、って考えます。
米が「母」だとしたら、造りは「父」なのではと思います。教育するのは父親の役割なんです。酒造りは子育てだと思いますね。
男酒に合わせるようにテーブルにやってきたのは、枝付きの枝豆炭火焼き。ワイルドです。
梅乃宿の方は、ピアスしてますね。
ピアス!
あとギター弾いてます。
もちろんエレキギター。
はい、エレキ。彼はいい奴です。
実直でアツい玉川、いい奴梅乃宿。この2人は組み合わさるといいかも、と妄想を巡らせました。
まとめ: 心と頭、両方で酒を飲む
これまで、きき酒やテイスティングの勉強をしてきて、色々な香りや味が取れるようになりました。分析的に、「頭」で酒を見ることができるようになりました。でも、心でまるっと酒を受け止める石倉恵美さんとご一緒して、心でテイスティングすることの楽しさ、素晴らしさを発見したのです。
酒は楽しむもの。ならば心で飲んだ方がいい。心で酒を受け止める時に出てくる言葉には、人柄がにじみ出る。分析的なきき酒と心で受け止めるきき酒、やはり両方とも必要だけれども、心で飲み、酒や造り手を感じることが本質なのだと思いました。