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盛田 本生 吟醸原酒|日本酒テイスティングノート

日本酒コンシェルジュ 江口崇 aka Umio 日本酒コンシェルジュ 江口崇 aka Umio

先進的な醸造業集積地、知多

「ねのひ」「盛田」「子乃日松」を醸す盛田株式会社は、1665年創業の老舗[1]。清酒のみならず味噌、みりん、醤油を始めとする食品製造力を持つ企業である。ソニーのファウンダー、盛田昭夫氏の実家として有名だが、江戸時代から知多の産業をリードしてきた企業であることも強調しておきたい。

「下り酒」といえば酒造集積地灘から江戸に送られていた酒として知られているが、知多の酒も「中国酒(上方と江戸の中間という意)」としてかなりの量が江戸に積まれていた。最盛期の19世紀前半には全体の16.5%にも達していた。なお、中国酒はアルコール度数が高い辛口の酒だったという[2]

尾州藩の政策により、年貢米のほとんどが酒造米として使われ、外部からの米も多く使われていた。知多の酒造業はこのように加工貿易型産業として成長した。また、酒造の副産物である酒粕を使った酢やみりんの製造や、廻船の帰りに積んできた大豆を使った味噌製造業が発達した[3]

19世紀前半の文化天保年間、盛田家は近い血縁関係にあった中野家とともに、酢や味噌の製造にも乗り出し、同時に全国の問屋を買収し両家の醸造品の直販網を作り上げた。このような経営の多角化と市場の開拓力が現在の知多における産業の発展の基盤となっている。

テイスティング

上品で軽やかで透明感があり、ミルキーなお酒。技術力と丁寧な造りを感じるエレガントな印象。酢酸イソアミルがピュアすぎるが、オフフレーバーはなく、きれいなお酒。お人形さんのような美しさ。すこしだけ引っかかる所があれば、さらに魅力的になるのでは、と思うくらいきれいなお酒。

40度が最も楽しめる温度帯。その次が10度位。でも合わせる食べ物によっては10度位が一番いい。55度に温めると若干バランスが崩れた。この温度帯はおすすめしない。

10度

まずは冷蔵庫から出したての10度前後の温度帯で。

上立ち香はとても華やかで甘味を連想する香り。バナナ、りんご、和梨の香り。甘味、酸味、苦味のバランスがよい。口中香はミルクバナナと洋梨。酢酸イソアミルがピュアすぎて、バナナが心なしかケミカルに感じてしまう。余韻はやや長い方。バナナミルクやミルク飴の香りとアルコールの刺激と苦味。野菜スープのようなうま味も感じられる。

40度

次に、40度に温めてみた。

甘みが増し、バナナミルクの存在感も全面に出てくる。切れはよく、アルコールの刺激、酸味、バナナミルクやミルクチョコの余韻。

55度

最後は55度。

カカオやキャロブのような苦味が強調されるも、ミルクチョコはまだここにいる。サラリと入ったあとにアルコールの刺激と苦味。少しバランスが乱れる。余韻には細い苦味が残るが、ミルクの優しさは上る。全体的にバナナ香料、ケミカルバナナのような印象が全面に。

ペアリング

ぶりの刺身
(ぶりの刺身、醤油は偶然にも小豆島のマルキン。盛田のグループ企業である)

10度の温度帯の酒と、脂の乗ったブリの刺身に合わせる。とてもよく合う。魚の脂身を酒が包み込むだけでなく、脂の濃厚さと酒の濃さが釣り合うのだ。酒の甘い香りも脂と競演して、まったり感を醸し出す。40度の燗酒と合わせてみたが、酒が甘すぎるのと両者の温度が違うのでうまく合わなかった。

エメンタールチーズと合わせると、両者の乳らしさが同調。こちらも相性がよい。

(テイスティング日: 2018年12月8日)

ラベル情報

商品名盛田 本生 吟醸原酒
醸造元盛田(愛知県名古屋市中区)
特定名称・種別吟醸酒
原材料米(国産)、米こうじ(国産米)、醸造アルコール
酒造年度-BY
原料米-
精米歩合58%
酵母-
仕込み水-
アルコール度数18-19度
日本酒度-
酸度-
アミノ酸度-
製造年月2018-09
杜氏-
その他情報原酒。製造所 愛知県常滑市小鈴谷字西ノ脇153番地
商品ページ-

盛田 本生 吟醸原酒 裏ラベル


  1. 沿革 | 盛田株式会社サイト ↩︎

  2. 山下 勝, 愛知の酒, 日本釀造協會雜誌, 1978, 73 巻, 3 号, p. 189-194 ↩︎

  3. 篠田 壽夫, 知多酒造業の盛衰 (日本における酒造業の展開 : 近世から近代へ), 社会経済史学, 1989, 55 巻, 2 号, p. 152-173,258 ↩︎