/ 日本酒レビュー

一博「丶なし」「丶あり」飲み比べ|日本酒テイスティングノート

日本酒コンシェルジュ 江口崇 aka Umio 日本酒コンシェルジュ 江口崇 aka Umio

一博「丶なし」と「丶あり」

「一博」の中澤酒造は焼酎ブームの頃、平成12年(2000年)自社酒蔵での酒造りを中断します。その中で現在の蔵元杜氏の中沢一洋さんは蔵の再開を志し、その年から大治郎の畑酒造で蔵人として働き、酒造りを学びます。

そこで、中沢さんが酒造りを学んだ畑酒造の杜氏、谷内博さんと、酒造り中断前に中澤酒造で酒を作っていた杜氏、阪頭方一さんの名前から1文字づつを取って「一博」という銘柄を作りました。

畑酒造の設備を使って「一博」を作り始めました。自社蔵での醸造再開への思いを込めて、ラベルの「一博」の「博」の字に「丶」を書きませんでした。これが「丶なし」です。

2015年11月、中沢さんはついに念願の自社製造を再開します。そして、ラベルの文字には「丶」がつきました。「丶あり」一博です。

自社蔵での醸造再開をまたいだ2つの一博を飲み比べました。どちらも、「呑百姓の会」が作った地元産の酒米「吟吹雪」を使っています。

一博

「丶なし」26BY 生酒

香りはやや控えめですが、ライチやデラウェア、杏の香り、米やヨーグルトの香りを感じます。全体的にはふくよかで柔らかな米、ヨーグルトの香りが主体です。口当たりは柔らかく、甘味、酸味がしっかりしています。また、苦味がしっかりしているので程よくキレます。少しフルーティーで、米のまろやかな香り。料理に合わせやすいお酒です。照り焼きやごま豆腐、カシューナッツなどと合わせたいですね。

冷蔵庫から出したての10から15度の温度帯で本利き猪口を用いてテイスティングしました。

「丶あり」27BY うすにごり生酒

ややにごりが見られ、ごく淡い山吹色の外観。香りはやや強め。りんごの香りが目立ちます。同時に、米飴、ヨーグルト、そして少しチーズの香り。主体となる香りは、ヨーグルトやフレッシュタイプのチーズの香りです。口当たりは、ふわふわとしていて軽めです。米飴のような透明な甘味。じわっと重い酸味が目立ちます。「丶なし」よりも甘みを強く感じました。余韻には苦味がやや残り、しっかりしたうま味が心地よく残ります。アルコールの刺激も少し感じます。「丶なし」とアルコール度数は同じですが、1年の熟成で感じ方が変わります。フルーティーな香りと乳製品の香りとうま味がしっかり。生酒らしいフレッシュ感。単独でも楽しめます。料理と合わせるならクリームチーズの味噌漬け、みかんや生ハムメロンと。

こちらも、冷蔵庫から出したての10〜15度の温度帯で、本利き猪口を用いてテイスティングしました。

一博は熟成向きのお酒

畑酒造で酒造りをしていた「丶なし」、晴れて念願の自家醸造を再開した1年目の「丶あり」。使う酒米も酵母も同じですが、設備と水が違います。

これらの条件による違いは見いだせませんでしたが、「1年熟成させたかどうか」の違いが大きく見られました。そして、「一博は熟成させたほうがおいしい」ということに気付かされたのでした。

(2016年2月24日)

ラベル情報「丶なし」

  • 商品名: 一博 純米 生酒
  • 醸造元: 中澤酒造(滋賀県東近江市)
  • 原材料: 米、米麹
  • 醸造年度: 26BY
  • 原料米: 滋賀県産吟吹雪100%(環境こだわり農産物)
  • 精米歩合: 60%
  • 酵母: 14号
  • アルコール度数: 16.8度
  • 日本酒度: +4
  • 酸度: 2.1
  • アミノ酸度: -
  • 製造年月: 27-12
  • 杜氏: 中沢一洋
  • その他情報: -
  • 商品ページ: -

ラベル情報「丶あり」

  • 商品名: 一博 純米 うすにごり 生酒
  • 醸造元: 中澤酒造(滋賀県東近江市)
  • 原材料: 米、米麹
  • 醸造年度: 27BY
  • 原料米: 滋賀県産吟吹雪100%(環境こだわり農産物)
  • 精米歩合: 60%
  • 酵母: 14号
  • アルコール度数: 16.8度
  • 日本酒度: -
  • 酸度: -
  • アミノ酸度: -
  • 製造年月: 28-02
  • 杜氏: 中沢一洋
  • その他情報: -
  • 商品ページ: 酒米生産者 呑百姓の会

一博 裏ラベル

参考資料

  • 「酒米に本気 地元産200石の酒はわれら呑百姓(どんびゃくしょう)が引き受けた!」『現代農業』2015年12月号。農文協
  • 「蔵元杜氏・中沢一洋 酒蔵再開の記録 〜酒を作る人・支える人〜」東近江スマイルネット(放送日不詳)