純米吟醸 甲州侠客傳 竹居の吃安|日本酒テイスティングノート
〈日本酒レビュー〉飲むと安心する吟醸酒です。いわゆる吟醸香は控えめで、米のニュアンスがしっかりと。
安心する味わい
一言でいうと、「安心する吟醸酒」。普通酒(というより、かつてのノン・吟醸酒のスタイル)のポジティブなニュアンスが感じられます。人にも料理にもやさしいのです。
シャープで上品な印象で、飲むときに襟を正してしまう吟醸酒ではなく、親しみやすい吟醸酒だと感じました。吟醸香は控えめで、米のニュアンスがしっかりとしているのです。乳っぽさと和柑橘のニュアンスからなるクラシックな味わいは、僕の好きな味わいです。
料理ともよく合います。食べ物と寄り添いながら包み込みます。台湾腸詰め、カキフライ、水餃子と合わせましたが、どれもよい相性でした。
下調べ無しで入ったこのお店はピチカート・ファイヴとサザンがかかっていて、台湾料理が食べられる不思議なお店でした。
地元の甲州博徒を銘に
この酒を醸す腕相撲酒造は山梨県笛吹市に蔵を構えます。先代の社長が腕相撲好きでとても強かったののが名前の由来とのことです。
酒銘の「竹居の吃安」は有名な甲州博徒の一人、竹居安五郎のことで、腕相撲酒造のウェブサイトによると「男伊達を看板に義理と人情の世界に生き、村人からも慕われた甲州の侠客の大親分の一人」だそうです。地元の歴史と誇りが込められた銘柄なのです。
竹居安五郎と抗争を繰り広げた清水次郎長の子分とされる森の石松の酒も、お隣静岡県の蔵より出ている。飲み比べたい組み合わせだ。
テイスティングコメント
まずは12度くらい、90ccサイズのおちょこで。第一印象はクラシックな味わい。ほどほどの甘味と強めの酸味。柑橘を思わせる。乳酸由来のカッテージチーズ、炊いた米・すだち・ほのかにみかんの香り。いわゆる吟醸香はほとんど感じられない。アプリコットの香りがわずかにあるくらい。
緊張感のある苦味で切れる。そして米を感じさせる収斂味。すこしだけ、白玉粉の甘い香りが顔を覗かせるが、すぐに引っ込んでしまう。文旦の皮のような余韻。
ペアリング
カキフライと合わせても酒が負けない。それどころか酒の米らしさが引き立つ。
台湾腸詰め。ほのかな甘味と甘い香りのスパイスが特徴。これに合わせると、酒の酸味が引きたつ。合うではないか! 余韻に腸詰めのスパイスの香りがやってきて、時間差が楽しめるペアリングである。
水餃子と合わせる。ニラが主役のタイプだ。これがなかなか合う。酒にある米のやさしさが引き立ち、ニラの香りを包み込む。
(テイスティング日: 2020年1月20日)
ラベル情報
純米吟醸 甲州侠客傳 竹居の吃安
- 〈醸造元〉 腕相撲酒造(笛吹市)
- 〈仕込み水〉 -
- 〈原料米〉 -
- 〈精米歩合〉 55%
- 〈特定名称/種別〉 純米吟醸酒
- 〈アルコール度数〉 15度
- 〈原材料〉 米(国産)、米麹(国産米)
- 〈製造年月〉 2019-12
参考資料
- 腕相撲酒造(2020年2月22日閲覧)
- 合同会社裸電球ほか『幕末アウトロー 維新の陰の立役者「侠客」たちの生き様』2018. マイウェイ出版