純米吟醸 鯉川 DEWA33|日本酒テイスティングノート

〈日本酒レビュー〉柑橘を思わせるニュアンスだが、あとから米のダイナミックな香りがやってくる。温めるとおいしいお酒、そして料理が食べたくなる。

純米吟醸 鯉川 DEWA33|日本酒テイスティングノート

純米酒で辛口の食中酒

山形県庄内地方にある鯉川酒造のお酒。山形県の酒米、出羽燦々〈酒米の系譜〉を使っています。鯉川酒造の酒は辛口の食中酒。出羽燦々や、発祥の地である亀の尾など地元米を使って純米酒を醸しています[1]

グレープフルーツと米

第一印象はグレープフルーツと米。柑橘の香りのあと、しっかりとした米の印象が広がるお酒です。余韻も長く、後口にもう一度山が来るという特徴があります。米の豊かな香りと収斂味を伴ったコクがぐわりと戻ってくるのです。

温めて飲もう

いろいろな温度帯を試しましたが、いちばんおいしいのは40〜45度。味と香りがまとまる温度帯です。

料理が食べたくなる

飲みすすめると食べ物が欲しくなるお酒です。生まれてはじめて食べたアボカドの粕漬けと合わせると、酒がアボカドの特徴的な青い香りを引き立てました。

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アボカド🥑の酒粕漬け。 酒粕と一緒に食べると、両方が同じ食感、とろりまったりで驚く。酒粕の苦味と甘味。アボカドだげで食べると、やさしい甘味とうま味。アボカドが繊細になっている。目を閉じると、アボカドの青さが独立してる座っているのが見えてくる。アボアドのアボカドの香りって、こうだったんだと噛み締める。 酒粕は道灌のもの。 #酒粕 #日本酒 #地酒 #酒 #清酒 #sake #japanesesake #日本酒コンシェルジュ #日本酒好き #日本酒好きだけど繋がるより酒に向き合いたい #日本酒好きな人と繋がりたい

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このほか、揚げ出し豆腐やふろふき大根・酢豚・白身魚の天ぷらなどと合わせたいですね。

〆には粕汁をいただきました。心も体もあたたまる完全食品です。

おこぶ北淸にて。

おこぶ北淸の粕汁

もっと知りたい!

DEWA33とGI山形

瓶の肩にある青いシールに注目して下さい。このなかで「DEWA33」とは、厳しい審査基準を経に認定された、酒米出羽燦々を使った純米吟醸酒。山形県産米だけでなく、山形酵母と山形オリジナル酵母菌「オリーゼ山形」を使っています[2]ウェブサイトにある、「この認定証は山形の酒の誇りと責任の証し」との記述に関係者の情熱を感じました。

もう一つ「GI Yamagata」は国が指定したGI(地理的表示)です。山形県では、20年ほど前から酒の品質向上を目指して研究開発に取り組み、DEWA33を始めとする厳しい認定基準を設けてきました[2:1]。そして2016年には県全体の日本酒について、国による地理的表示の指定を受けることになったのです[3]


テイスティングコメント

冷やして

まずは15度くらい、ぐい呑みで。

柑橘を思わせるニュアンスだが、あとから米のダイナミックな香りがやってくる。それが広がっていくのを感じる酒。

上立ち香にグレープフルーツピールを感じる。口に含むと甘味は控え目、細くてやや刺激的な酸味は謙虚。グレープフルーツの香りのあと、米の香りがやってくる。それらは吸水した米・白玉粉・アーモンド・カシューナッツ。そしてグレープフルーツの香りが再び、でも今度はピールの香り。やや太い苦味とほどほどの収斂味、そしてうま味。

余韻は長く、グレープフルーツピールの香り。時間差で突然、米飴やカシューナッツの香りがギュッと立ち上がる。そして心地よい苦味。

熱燗で

60度くらいまで温めてみる。器は小さめのお猪口。第一印象はやわらかく、温かい。そして柑橘を感じる。少し泡が出てきて、ホイッピーな感触も。ミルキーで酸味が際立つ。後口もミルキーで長い余韻。このあと、きゅっとくる山がいい。収斂味と米の香りが一体化した余韻の山。生米やしっとりとしたウエハース。温めると上品になる。というよりも、もともと上品な酒で、温めるとそれが際立つのだ。

燗冷ましで

40〜45度くらいまで温度が下がると、さらに味わいがまとまる。味と香りがバランスよくまとまり、シンプルさを演出する。グレープフルーツのニュアンスが再び前に出てくる。ホイップ感が残っているので、ミルキーな米のニュアンスをともに味わえる。この温度帯がいちばんおすすめ。

料理

アテに、アボカドの粕漬けをいただいた。

酒粕とともに一日過ごすことで、アボカドの味わいが繊細になる。アボカドのトロリとした食感と酒粕のそれが一体化する中で、アボカドの青さを感じる。際立つのではなく、静かに味わうとそこに座っているのがわかるアボカドの青さ。

アボカドの粕漬け

酒と合わせると、この、アボカドの青い香りにスポットライトが当たる。静かに、しっとりと青いニュアンスが酒とともに存在する。

このほか、合わせたい料理は、燗酒のとき、揚げ出し豆腐・昆布のだし汁・おぼろ豆腐・ふろふき大根、それから、白身魚やエビの天ぷら・甘海老のお造り。冷やして飲むときは、黒酢を使った酸味のやさしい酢豚・大根おろし。

(テイスティング日: 2019年11月8日)

ラベル情報

純米吟醸 鯉川 DEWA33

  • 〈醸造元〉 鯉川酒造(山形県東田川郡庄内町)
  • 〈仕込み水〉 -
  • 〈原料米〉 山形県産「出羽燦々」100%
  • 〈精米歩合〉 50%
  • 〈特定名称/種別〉 純米吟醸酒
  • 〈アルコール度数〉 15.3度
  • 〈原材料〉 -
  • 〈日本酒度〉 +7
  • 〈酸度〉 1.4
  • 〈アミノ酸度〉 0.9
  • 〈製造年月〉 R01-09

純米吟醸 鯉川 DEWA33


  1. 酒蔵萬流 013 2017年春号. 新中野工業株式会社発行. ↩︎

  2. 「DEWA33」|山形県酒造組合(公式ホームページ) ↩︎ ↩︎

  3. 酒類の地理的表示一覧|国税庁検索 ↩︎