日本酒の魅力をコンパクトに伝えるには? Foodex Japan 2015 レポート

Foodex 2015での日本酒の出展、セミナーのレポートです。世界への進出を目指す酒蔵や、地域性の強調が見られました。日本酒きき酒師の友田晶子さんのセミナーでは、日本酒の魅力をコンパクトに伝えるヒントを学びました。

日本酒の魅力をコンパクトに伝えるには? Foodex Japan 2015 レポート

2015年3月3日から6日にかけて、日本全国、そして世界の食べ物や飲み物が集まる展示会、「Foodex Japan 2015 国際食品・飲料展」が開催されました。アジア最大級の規模だそうです。

今回は2年ぶり3回めの参加、日本酒にねらいを定めてレポートします。

日本酒ブースでは、新しい販路の拡大を目指す中小規模の酒蔵さんの出展が目立ちました。また、日本酒を取り扱う事業者のためのセミナーも開催され、日本酒を知らない方に日本酒の魅力をコンパクトに伝える方法を知ることができました。

日本酒ブースは海外展開と新規需要開拓、そして地域性

Foodexではフランス、イタリア、スペインのワイン、日本の焼酎の巨大なブースが存在感を示し、日本酒のブースも中小規模の酒蔵を中心に出展。流通経路を全国、そして海外に展開することを目指している酒蔵が目立ちました。

新潟の笹祝(ささいわい)酒造の社長さんにお話をお伺いしたところ、「今までは地元のみで流通。地元はだれでも知っている銘柄で、飲食店、旅館には必ずおいてある」という笹祝という銘柄を、これからは全国で流通を目指すために出展したとのことでした。

また、海外専用ブランド「日本刀(かたな)」を展示していた静岡の「花の舞」など、海外展開の流れも見られました。

リキュール系やスパークリング日本酒の展示も多く、静岡県にある「花の舞」のスパークリングの、地元のフルーツを使ったものが目立ちました。地域の特色を活かしながら飲みやすい酒質で日本酒の消費をあげようとするムーブメントが感じられました。

日本酒きき酒師友田晶子さんによる英語通訳付きの日本酒セミナー

Foodexではブース展示の他に、生産者、バイヤーや私のようなコンシェルジュ的な仕事をしている人向けのセミナーが多く開催されます。

今回はその中で、トータル飲料コンサルタントで日本酒きき酒師の友田晶子さんによるセミナー、「日本酒と料理(和洋中)、ペアリングのゴールデンルールを知れば、もっと売れる! もっと楽しめる!」に参加してきました。

セミナーで話す友田晶子さん

友田さんのセミナーは45分、その中に日本酒の魅力のエッセンスが詰まっていました。私は日本酒をあまり知らない方に日本酒の魅力を伝えるとき、たくさんある中からどれを伝えればいいのかを迷うことがよくあります。このセミナーでどのポイントをどのように伝えたらよいのかがわかったのが大きな収穫です。

また、英語で逐次通訳がついていたのもとてもためになりました。海外の方に英語で日本酒の説明をする機会も多いのですが、専門用語を使わずに伝えるヒントがたくさんありました。

日本文化の中の日本酒と「米」を強調

友田さんが強調されていたのは、日本文化の中の日本酒。どぶろく、お神酒、結婚式の三三九度など宗教と歴史の中での日本酒。酒造りに携わる方が必ずお参りするお酒の神様を祀る松尾大社。

また、日本酒の主原料である「米」についても、酒造好適米を育てるのが難しいこと、お米は非常に高価な原料であること、その米を使い、高度な技術と重労働でお酒は造られることなどをコンパクトにわかりやすく解説されました。

お米の国際相場は1kgあたり約30円。酒造好適米で最高級と言われる山田錦はその20倍、1kgあたり600円もします。その山田錦を50%まで削って大吟醸酒を造る場合、一升瓶1本あたりの原料の値段は1,200円にもなります。こうやって数字を使って説明されると、日本酒は世界のお酒の中でももっとも高い原料を使って造られているということを実感できます。

地域の中の日本酒

もう一つ、印象に残ったのは日本酒の地域性。日本は地域ごとの気候や風土、食文化の多様性に飛んでいます。友田さんによると、「気候風土や料理によって地酒の味が決まる。伝統的な郷土料理がその土地の地酒の味を決める」そうです。

例えば石川県。山の方では発酵食品などの保存食を食べながら冬を過ごすので、それに合わせて比較的濃い味のお酒が好まれます。また、南国高知ではそこで採れる魚に合わせて比較的淡麗な酒が人気です。

日本酒と料理のペアリング「ゴールデン・ルール」

そして、本題の「日本酒と料理のペアリング」。日本酒をどのように料理に合わせると美味しくいただけるかをしっかり教えていただきました。

一般的にお酒を料理と合わせるには以下のルールがあります。

  • 同調・ハーモニー(同じ風味のものと合わせる)
  • マリアージュ(まったく風味の違うものを組み合わせて第三の味が生まれる)
  • 料理を引き立てる、料理の邪魔をしないお酒
  • お酒を引き立てる、お酒の邪魔をしない料理

上の2つはワインの世界のルール、下の2つは日本酒特有の考え方だそうです。料理の邪魔をしないような味の日本酒を合わせたり、塩辛など塩味や旨みが凝縮されたものを食べながら日本酒を呑むという方法です。

最近は日本酒の味と香りの幅が広がり、色々なタイプを楽しめるようになったので、伝統的な日本酒の世界での組み合わせだけでなく、ワイン的な考え方もあってもいいと友田さんはおっしゃっていました。

この中で、日本酒と料理の組み合わせ・ペアリングのゴールデン・ルールは「同調・ハーモニー」が一番だと友田さんは強調していました。

実際にペアリングしてみる

セミナーの最後は実際に日本酒と食べ物をペアリング。2種類のお酒とミルクチョコレート、クリームチーズを合わせてみました。

2種類の日本酒とペアリング

写真左の透明なお酒は「開運大吟醸」、静岡のお酒です。右の色が付いている方は「花垣五年古酒」、福井県のお酒です。

まずクリームチーズを一口、食べ終わってまだ口の中にクリームチーズの余韻が残っているところに「開運大吟醸」を合わせてみると、クリームチーズの甘さと香りの余韻とお酒の中にある米のやわらかい甘みがハーモニーを奏でました!

次はミルクチョコレート。これに「花垣五年古酒」を同じように合わせます。チョコレートの甘さとビターな感じと、古酒の熟成した甘さとスパイス系の香りがとても会いました。

クリームチーズ、チョコレートと日本酒に合わせるには意外と思われる組み合わせですが、組み合わせのゴールデン・ルール「同調・ハーモニー」で楽しめました。

日本酒の魅力をコンパクトに伝えるヒントを学びました

45分のセミナーのうち、講義は40分程度、残りはテイスティングでした。英語の逐次通訳や挨拶を除くと、15分程度で日本酒の魅力をぎゅっと凝縮して説明されたということです。

日本文化の中での日本酒、米の役割、酒造りの高度な技術と重労働、地域性、ペアリング。ひとつあたり2,3分程度にまとまっているというわけです。しかも英語のボキャブラリーも知ることができる。

今回の友田さんのセミナーを参考にして、日本酒をあまり知らない方に日本酒の魅力をコンパクトに伝えることができるようになればと思いました。


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友田 晶子 ギャップ・ジャパン編集部
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