日本最南端の酒蔵が醸す地酒「本醸造 黎明 上撰」日本酒テイスティングノート

〈日本酒レビュー〉ライトでグリーンな味わいの黎明は沖縄の地酒としての風格を備えている。

日本最南端の酒蔵が醸す地酒「本醸造 黎明 上撰」日本酒テイスティングノート

沖縄の地酒

日本最南端、沖縄唯一の日本酒蔵「泰石酒造」の酒を飲んだ。

蔵のウェブサイトによると、創業者の安田繁史は「酒造りの環境さえ整えれば、沖縄でも美味しい清酒が作れる」という思いから1968年に日本酒造りを始めたという。

一時は沖縄内の日本酒シェア70%を誇るが、程なくして本土復帰による日本の大手メーカーの日本酒との競争の末、売上高が10分の1まで落ちるという苦難の時期を過ごす。その間、連続蒸留焼酎や泡盛、焼酎、リキュールで売上をカバーしたという。それでも泰石酒造は休むことなく日本酒の生産を続けて現在に至る。

この話を現在の代表である安田泰治さんから聞いて、この酒には造り手の誇りがめられていると感じた。日刊工業新聞の記事によると、黎明は地元の行事の鏡開きでもよく使われているとのこと。飲み手にも愛されている。

「地酒とはなにか」を考えるとき、大切なのは造り手と地元の飲み手にとっての誇りであることがと常々思っている。その意味でこの酒は本当の地酒だ。

熱帯醸造コネクション

沖縄の温暖な気候での醸造は、長崎県にあった黎明酒造(現在の杵の川)がもつ四季醸造の技術提携を受けて実現した。

1961年に四季醸造を開始した黎明酒造は、ハワイのホノルル酒造製氷株式会社(Honolulu Sake Brewery and Ice Co., Ltd)に大きな影響を受けている。ホノルル酒造製氷は1910年代から石蔵で冷却装置を用いた醸造を行い、1933年には冷蔵設備を持った四季醸造庫を建設、翌年から製造を始めている。

1961年、国税庁醸造試験所長の鈴木明治は、「暑い場所での酒造りを(ハワイから)逆輸入しようとする日本の酒造家が近年になって急に増えた」とし、その実践者として福島県のH氏と長崎県のS氏を挙げている。長崎県のS氏とは黎明酒造とレイメイ機械製作所の社長瀬頭大治氏であろう。

瀬頭は完全冷房の鉄筋3階建ての四季醸造工場を完成させた直後にホノルル酒造製氷の技師の二瓶孝夫を訪問し、四季醸造の助言を受けている。二瓶はのちにブラジルで東麒麟を醸す東山農場でも活躍する。

ハワイ・長崎・沖縄・ブラジル。「熱帯醸造コネクション」を見出して、ワクワクした気分になった。

ライトでグリーンな味わいの酒

看板商品「黎明 本醸造」はライトな味わいで、すだちと少しの白玉粉、カッテージチーズの香りが特徴的だ。後口のアルコールの刺激が心地よい。ぬる燗では米を感じさせる甘いニュアンスの中に黒胡椒のようなピリピリとした刺激がある。冷やして飲むかぬる燗がおすすめだ。塩味の豚の角煮、白身魚のお造り、湯豆腐に合わせたい。

(テイスティング日: 2019年11月6日)

参考文献

  • 沖縄県うるま市の蔵元「泰石酒造株式会社」|四季醸造による沖縄での酒造りへのこだわり. https://www.taikokushuzo.com/sakedukuri.html(2022-05-05 閲覧)
  • 鈴木 明治. 1961.  四季醸造への前進 (一). 日本釀造協會雜誌. 56巻10号.
  • Ashcraft, Brian and Eguchi Takashi. 2020. The Japanese Saké Bible. Tuttle Publishing.
  • 二瓶 孝夫. 1978. 日本洒 (その1). 日本釀造協會雜誌, 73巻5号.
  • 二瓶 孝夫. 1978. 日本洒 (その2). 日本釀造協會雜誌, 73巻6号.
  • 涼風清談 9 海外視察で自信深む 四季醸造とガス入り清酒. 醸界タイムズ. 1961-09-13.
  • 酒蔵紀行(12)泰石酒造−日本最南端・沖縄で清酒. 日刊工業新聞. 2013-12-18.

ラベル情報

本醸造 黎明 上撰

  • 〈醸造元〉 泰石酒造(沖縄県うるま市)
  • 〈仕込み水〉 -
  • 〈原料米〉 -
  • 〈精米歩合〉 -%
  • 〈特定名称/種別〉 本醸造酒
  • 〈アルコール度数〉 15-16度
  • 〈原材料〉 米(国産)、米こうじ(国産米)、醸造アルコール
  • 〈日本酒度〉 +7.8
  • 〈酸度〉 1.8
  • 〈アミノ酸度〉 1.6
  • 〈製造年月〉 2019-11