花巴 水酛✕水酛 無濾過生原酒|日本酒テイスティングノート
〈日本酒レビュー〉 とても濃厚な味わいですが切れがよい酒。濃厚さと酸味による緊張感が同居しています。
発酵食堂で飲む花巴
「発酵食を台所に取り戻す」このクレドを発酵食堂カモシカの代表・関恵さんから聞いた時、少し身震いがしました。Sake Spring のプレ・パーティー[1]のときでした。「取り戻」さなくてはいけないほど、発酵食にあふれていたはずのわたしたちの台所は食の息吹を失ってきたのです。
にしん寿司をつけたり、天然の乳酸菌を待ちながらザウアークラウトを作ったり、もともと発酵食品が好きでした。
日本酒のおいしさと奥深さに出会って以来、酒造りに携わる方々のお話を聞き、神社のどぶろくで自然の偉大さを感じ、どぶろくを造る農家の方と交流して農業と酒はシームレスに繋がっていることを知りました。そして今、この発酵食堂で花巴を飲むことになったのです。
花巴の橋本晃明さんのアツいお話を聞いて、発酵食堂の料理を食べて、花巴を飲む。いろいろな土地をめぐり、酒蔵を訪問し、造り手や農家・飲食店・酒販店の方々の話を聞いてきた頭が何かを紡ぎ始めました。
「これは工業の酒ではなく、農業の酒なのではないか」。となりに座っていたお客さんは私の話を聞いてくださり、神社と酒の話へと発展しました。彼の洞察の深さに心を打たれました。
発酵食堂は、このような思考が生まれ、人とのつながりが醸し出される場でした。まさに天然酵母がわたしたちを反応させている感じがしました。
花巴 水酛✕水酛
さて、1杯目の「花巴 純米 山廃酛 四段」の濃厚さと豊かな香りを楽しんだあとは…
「花巴 水酛✕水酛」。水酛で造った酒を使ってまた水酛の酒を仕込むという、貴醸酒の方法で造った酒です。水酛とは酒母の立て方の一つ。生の米を水につけて乳酸発酵させ、その酸性の水を使って酵母が育ちやすい環境を造る方法です。室町時代に成立した方法で、菩提酛と呼ばれるものと同じです。
とても濃厚な味わいだが切れのよい酒。濃厚さと酸味による緊張感が同居しています。山菜のようなえぐ味と酸味、そして紅茶や炊いた米・チーズの複雑な香りが折り重なります。味のメリハリ、重なる香り。豊かで近強い酒です。
へしこ(魚の糠漬け)とよく合いました。へしこのうま味と塩味を酒が包み込み、香りを引き立てます。
花巴の酸味
「水酛✕水酛」にも、1杯目の「山廃酛 四段」にも、花巴のすべての酒に共通するのは「しっかりとした酸味」です。
橋本さんは「吉野という地域を伝えるために酸を表現する」と語ります。蔵のある吉野は酸が出る土地であり、保存食文化を育む高温多湿な風土が反映されたのが花巴の酸味なのです。
「発酵食を台所に取り戻す」がモットーの「発酵食堂カモシカ」にて。
テイスティングコメント
とても濃厚な味わい。花の蜜や蜂蜜の香り。でもとても切れがいい、スパッと切れる。濃厚さと緊張感が同居している。山菜や野菜のようなえぐ味と酸味。紅茶・カカオニブ・米飴・焚いた米の香り。透明な穀物感。余韻は長く、酸味と漬け込んだカリンやカカオニブ・漬け込んだオレンジの香り、ほのかにヨーグルトやチーズの香り。
これはへしこ(魚の糠漬け)に合わせた。よく合う。酒がへしこの濃厚なうま味と塩味を包み込み、そして調和する。酒にある蜜の部分が強調され、へしこの香りを引き立てる。
(テイスティング日: 2018年10月28日)
ラベル情報
商品名 | 花巴 水酛✕水酛 無濾過生原酒 |
---|---|
醸造元 | 美吉野醸造(奈良県吉野郡吉野町) |
特定名称・種別 | |
原材料 | 米(国産)、米こうじ(国産米)、純米酒 |
酒造年度 | -BY |
原料米 | 奈良県産契約栽培米100% |
精米歩合 | -% |
酵母 | 酵母無添加 |
仕込み水 | - |
アルコール度数 | 17度 |
日本酒度 | - |
酸度 | - |
アミノ酸度 | - |
製造年月 | 2018-02 |
杜氏 | - |
その他情報 | - |
日本酒コンシェルジュ通信は2018年にSake Springにスイーツと日本酒をテーマにしたブースを出店しました。その関係のパーティーです。 ↩︎