小さな酒旅〈盃のあいだ 33〉
久しぶりの小さな酒旅は忘れかけていた旅の高揚感を思い出させてくれました。
滋賀県高島市マキノの桜の名所、海津大崎に行ってきました。今日はこの小さな酒旅のお話をします。
海津大崎には800本ものソメイヨシノが湖岸沿いに植えられていて、陸と湖の両方から楽しめます。今まで何度か陸から眺めることはあったのですが、今回、ついに屋形船から桜を愛でる機会に恵まれたのであります。
港に着いて船に乗ります。漁船を改造した屋形船は12人くらいが乗れるサイズで、全面ガラス張り。景色を眺めながらお酒や料理を楽しめるのです。
テーブルの存在感は琵琶湖の恵み、イサザの塩焼き。今すぐ食べたいけど出向を待ちます。船が進みだした瞬間、得も言われぬ感情が押し寄せました。久しぶりに感じるこのワクワク感、高揚感。長いこと忘れていた感情です。
塩焼きにかぶりつき、酒を飲みます。湖の上で飲む「竹生嶋 花嵐」は格別のおいしさで、体に馴染みます。
マキノの燻製工房「杣人」のおつまみスモークとスモーク寿司は、本当によく酒に合いました。お酒が大好きな人が作ったんだなー、としみじみと感じる料理でした。とくにスモークチーズは花嵐のよい相棒でした。
酒が進むにつれ、酒友たちとの会話も弾みます。「桜きれいだね」とか「あれが竹生島?」とか「イサザは頭も食べるも?(全部食べます!)」とか、他愛もない会話が心を安らかにします。この空気の中にいると、なぜか心が清らかになるのです。
酒友とのおしゃべりが楽しくて、琵琶湖の幸とここで醸された日本酒がおいしくて、桜をしっかり見たのはお酒がなくなってからでした。
1時間ほどのクルーズのあとは、陸からも桜を楽しみました。琵琶湖を背景にした桜もまた、美しいですね。
花嵐を醸す吉田酒造に立ち寄り、みんなで車座になって蔵元さんのお話をお伺いしました。なかなかできない貴重な体験です。
そして、私も心のかけらが少しだけ入っている「吟花」を購入して帰途に付きました。前シーズンに酒造りのお手伝いをしたときのお酒です。飲んだら、麹作り、櫂入れ、醗酵の音、色々な思い出が走馬灯のように心を駆け巡りそうです。
(「吟花」はこのタンクで醸されました)
久しぶりの小さな旅で、かけがえのない時間を過ごしました。飲んで、食べて、おしゃべりして、風景を愛でる。これらを上手につなげるもまた、お酒の力なのです。
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今回楽しんだ海津大崎の桜について
琵琶湖のお魚を販売し、屋形船の運営をされている「中村水産」の取り組み
「花嵐」を醸すマキノの吉田酒造
写真にある桜色の酒器を作った作家、岡山高大さん
飲んだお酒「花嵐」のテイスティングノート