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自然を感じながら日本酒を飲むって楽しい〜天野酒 蛍の宴 レポート〜

日本酒コンシェルジュ 江口崇 aka Umio 日本酒コンシェルジュ 江口崇 aka Umio

蛍の宴

梅雨の気配を感じる5月の末、西日本きき酒界の重鎮の方々のお誘いで、「天野酒」の酒蔵で開催された「蛍の宴」に参加しました。

亨保三年創業の歴史ある酒蔵・天野酒

天野酒醸造元の西條合資会社は享保3年(1719年)に創業した歴史ある酒蔵です。

大阪府河内長野市の南海河内長野駅からほど近く。駅から酒蔵までの道は「酒蔵通り」として整備されており、趣きのある佇まいを感じながらのアプローチ。酒蔵の建物のうち旧店舗社屋は登録有形文化財に指定されており、歴史を感じる風景です。

天野酒を語るには河内長野地元の天野山金剛寺について語らなければなりません。

中世には、大寺院が荘園を持っていました。その荘園から上がってくる年貢米を使って僧侶が酒造りをしていました。金剛寺で造られていた「天野酒」や奈良の菩提山正暦寺で作られていた「菩提泉」などが有名です。その後、寺院での酒造りは廃れてしまいましたが、当時寺院で造られていた酒の製法は、現在の日本酒造りのベースとなっています。

西條合資会社は昭和46年(1971年)、天野山金剛寺で中世に造られていた「天野酒」の銘柄を復活。さらに1990年には当時の製法を文献から再現して「僧坊酒」をつくりあげました。

天野酒の品質は高く、今年は全国品種鑑評会で金賞を受賞しました。

蛍を眺めているだけで癒やされる

酒蔵の隣を流れる小川、「石川」はホタルの生息地です。「蛍の宴」はそのホタルを眺めながらお酒と料理を楽しむイベントです。今年は例年より早めにホタルが飛び始めたため、イベント実施期間を1週間前倒したとのこと。人間がホタルに合わせるって、スローでいいですね。

ホタルが生息できるように、地域住民の方々による環境保全の取り組みがされています。この日は、大きめサイズのゲンジボタルと小さいヒメボタルの両方が見られました。両方見られる期間はそんなに長くないとのことです。

8時になると会場は消灯です。明るいとホタルが逃げてしまうからです。消灯してしばらくすると様子をうかがうようにホタルたちがこちらに近づいてきてはまた去って行ったり。横に飛び回るホタルもいれば、スーッと上昇する飛び方のホタルもいたり。

ゲンジボタルはずっと光っていますが、ヒメボタルは点滅しながら飛行します。蔵主の西條さんに教えていただいたカメラの設定(ISO200で30秒程度)で撮影したところ、ゲンジボタルの軌跡が撮れました。きれいな線になっています。点滅するヒメボタルの軌跡は点線になりますが、写真には写っていなかったようです。

客席の方に猛突進してきて手すりにぶつかってしまう好奇心の強いホタルもいました。(このホタルはしばらく気を失っていましたが、無事回復しました)

ゲンジボタル、ヒメボタルの種類や一匹一匹の個性の違いが感じられて、「あのホタルはおっちょこちょいだ」などと話しながらお酒を飲んでいると、なんだか心が癒やされました。

自然を感じること、お酒を飲むこと。両方ともリラックス効果がありますが、これらを一緒にするとよりリラックスできるし、楽しい! いい体験ができました。

天野酒 蔵出し生原酒

お酒は、「蔵出し生原酒」をいただきました。ほのかにみかんのような柑橘系の香り、水飴のような米を感じさせる香り、しっかりした酸味と旨味を感じる味わいでした。

蔵出し生原酒は専用のサーバが用意されていました。生原酒サーバ、いいなー。

料理は喜一のお弁当

料理は酒蔵と同じ河内長野市内の懐石料理喜一のお弁当。ひとつひとつ丁寧な見た目。繊細な味わいを楽しみました。喜一はミシュランガイドにも掲載されている著名な料理店です。

お弁当の他に、喜一の皆さんが地元の野菜の天ぷらや鮎の塩焼きもその場で調理!

川とホタルを眺めながらの鮎の塩焼きは絶品でした。

酒米の白糠を使ったスイーツ

日本酒の原料の酒米、吟醸酒の場合は玄米を40%、大吟醸だと50%も削る精米をします。米の中心に近い部分は雑味を生むタンパク質や脂質が少ないからです。

外側の方を削る時に出る「赤糠」は一般的に「糠」とされる部分で、飼料などに使われます。さらに内側を削る時には、出てくる粉はすっかり白くなっていて(白糠)、米粉として十分食べられる品質です。

ただ、この白糠は有効活用されていないのが現状です。そこで、天野酒の醸造元では、この「白糠」を使ってスイーツを作っています。かなり試行錯誤を重ねて開発したそうです。

今回は白糠を使ったバウムクーヘンにアイスクリームとココアソースをかけたものをいただきました。米粉らしい少しもっちりした柔らかい口当たりに舌鼓を打ちました。

蛍の宴限定のこの組み合わせには「白い蔵人」という名前がつけられていました。蔵主の西條さんによると、「白い蔵人」にするか「面白い蔵人」にするかでだいぶ迷われたそうです。

ホタルを眺めて天野酒のファンになる

酒蔵での開催なのに、お酒よりもホタル推しのイベントでした。蔵主の西條さんのホタルへの愛情を感じた夜でした。もちろんお酒もおいしかったです。天野酒をいただくのは3年ぶり2回めでしたが、すっかりファンになりました。

関連リンク

参考文献

日本酒の近現代史: 酒造地の誕生 (歴史文化ライブラリー)
鈴木 芳行
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日本酒の科学 水・米・麹の伝統の技 (ブルーバックス)
和田 美代子
講談社
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