サーフィンと酒造り〈盃のあいだ nº17〉
出雲での酒をめぐる旅を終えて京都に戻る途中、偶然立ち寄ったのがALOHAというカフェ。静かな浜辺で海を眺めながらマスターと対話し、この旅で感じたことの数々が繋がる体験をしました。
出雲での酒をめぐる旅を終えて京都に戻る途中、偶然立ち寄ったのがALOHAというカフェ。静かな浜辺で海を眺めながらマスターと対話し、この旅で感じたことの数々が繋がる体験をしました。
鳥取県岩美町にあるこのカフェを選んだのは、朝からずっと車を走らせていたお昼時にお腹が空いた時にスマホで見つけた、という理由です。まったくの偶然でした。
マスターの喜瀬さんは13年前にIターン、この地で民宿とカフェをはじめました。岩美町はかつて臨海学校の聖地として栄え、最盛期には70の民宿がありましたが、現在はその数も二十数軒に減少しているとのことです。
とても静かな町です。
名物のベーコンステーキ(極厚)を平らげたあと、映画「酒をめぐる旅」を製作する仲間と海を眺めながらコーヒーを飲んでいると、なんだか心が清められていく気がしました。日本海の控えめな空と海と砂浜の表情、上品な波音。思春期を日本海沿いで過ごした私は、冬の鉛色の海も知っているし、夏の穏やかな優しさも覚えています。
海を眺めながらまったりしている僕たちの会話に、喜瀬さんも加わってくれました。ゆったりとした時間が流れます。「毎日海を眺めていると、争わなくなる。自然と接していると、どんどん謙虚になる」と語るマスターは、サーファーです。この海はサーフィンの聖地でもあるのです。サーファーとしての喜瀬さんも、この地で過ごすようになって変わったといいます。
「サーフィンは競争だけど、勝とう、勝とうとは思わない、かっこよく見せようとは思わない。そうやって力を抜くと、上手になる。」
前日まで滞在していた出雲で、ある杜氏さんが語った「自分の造りたい酒に造ったら、いい酒はできない」という言葉を思い出しました。旅をすると点と点が繋がります。不思議なことですが、これが実際にその地に赴くことの意味かもしれません。
きょうも日本酒コンシェルジュ通信にきてくださり、ありがとうございます。日本海の浜辺に乾杯!