ドライだけど、噛み締めると味わいが出てくるお酒「阿櫻 亀の尾 生原酒」日本酒テイスティングノート

〈日本酒レビュー〉地元産「亀の尾」の等外米で醸した酒。ドライで切れがよく、余韻にうま味がある。

ドライだけど、噛み締めると味わいが出てくるお酒「阿櫻 亀の尾 生原酒」日本酒テイスティングノート

ドライだけど、噛み締めると味わいが出てくるお酒

ちょっと冷えている、でもそんなに冷えていない温度(15度くらい)でいただいた。この店はよい温度で酒を出す。冷やしてもおいしい酒はたくさんあるけど。冷蔵庫から出したての温度(10度くらい)でベストな酒はあまりない。5度とかマイナス5度で保管するのはよいけれど、飲むのに適した温度は別の話だ。燗酒だけでなく冷酒もその酒にあった温度で出してもらうことは、とても嬉しいおもてなしだ。

味わう。フルーティーな香りはやや強めで、メロンやパイナップル、ときどきマジックインキの香りが心地よい。なめかな口当たりだが、甘味は少なくシャープな酸味がありドライな印象。キリリと切れてうま味がある余韻。以前、この蔵の亀の尾を飲んだことがあるけど、この酒にも同じように「亀の尾らしさ」と「阿櫻らしさ」を感じた。

酢の物や、脂身がおいしいシンプルな味付けの豚肉料理にあわせたい。

事実上純米酒だけど、純米酒と名乗れない

この酒は地元産の「亀の尾」を使って米と米麹だけを使って醸されているけれど「純米酒」と名乗ることができない。純米酒や吟醸酒と表示するためには、3等以上に格付けされた原料米を使う必要があるからだ[1]

お米の等級は食べたときの味や酒にするときの特性よりも、粒が揃っているかとか被害米がないかなどを基準にしている[2]。等級が劣るものが酒造りにも適さないわけではない。等級外の米を使うのは、契約農家の方が育てた米を一粒も無駄にしたくないという思いも込められているからだという[3]。結果的にコストパフォーマンスにも優れているのはよいと思うけど、純米酒と表示できない規定を見直してもよいのではと考える。

テイスティングノート

15°Cくらい、ワイングラスで

パイナップル・マジックインキ・メロンのフルーティーな香りはやや強め。なめらかに入って、すぐにシャープな強い酸味が広がる。甘味は少ない。酸味の尖りと相まって、ドライな印象。

そのままキリリと切れて、ミルキーで少しうま味がある余韻が佇む。後口にミネラル感があるのは、水由来だろう。以前、秋田県酒造組合のイベントで仕込み水を飲むことがあり、同じミネラル感のある余韻を感じたのだ。

大きめのグラスでのむと、パイナップルの透明でなめらかな香りが主になった。

ペアリング

シャープな酸味と同調させて春雨の酢の物に、ドライな印象とフルーツの香りを活かして脂が多めの塩豚に合わせたい。

(テイスティング日: 2021年4月22日)

_s-TN-IMG_4409

ラベル情報

阿櫻 亀の尾 生原酒

  • 〈醸造元〉 阿櫻酒造(秋田県横手市)
  • 〈仕込み水〉 -
  • 〈原料米〉 大潟村産 亀の尾 100%使用
  • 〈精米歩合〉 60%
  • 〈杜氏〉 川内杜氏 照井俊男
  • 〈特定名称/種別〉 -
  • 〈アルコール度数〉 -度
  • 〈原材料〉 米(秋田県産)・米麹(秋田県産米)
  • 〈製造年月〉 2021-03

  1. 「清酒の製法品質表示基準」(国税庁告示第8号) ↩︎

  2. 玄米の検査規格:農林水産省 ↩︎

  3. にしむら酒店. にしむら酒店一酒一会の会だより2021年4月号(メール版). ↩︎