時が刻まれた漆黒の酒「浅黄水仙 江戸の仕込再現 2003」日本酒テイスティングノート

〈日本酒レビュー〉江戸時代の製法で造られ、20年近く熟成された酒。ドライフルーツ・コーヒー・黒蜜の複雑な味わい。

時が刻まれた漆黒の酒「浅黄水仙 江戸の仕込再現 2003」日本酒テイスティングノート

見た目のインパクトが強烈である。濃厚な醤油や黒檀のような色合いだ。

江戸時代の製法で造られたというこの酒の精米歩合は当時と同じくらいであろう90%と、現在私たちが食べているお米は92%と近い。いまは普通酒でも70%くらいまで削る。

ラベルにはどの文献をもとにしているかは記載されていないが、たとえば江戸中期に編纂された百科事典『和漢三才図会』にあるレシピに依るなら、現在よりも使う水の量が少なく、麹の量が多い。だから甘くて濃厚な味わいになる。

和漢三才図会に見る江戸時代の酒造りの方法
江戸中期の百科事典『和漢三才図会』に掲載されている当時の日本酒のレシピを紹介します。

濃厚で複雑、でも芯がある

上立ち香はカラメルと醤油。口に含むととても濃厚な味わいだけど、外観から得られる印象よりはさらりとしている。熟成の複雑な香りが幾層にも重なる。プルーンのようなしっとりした重めのドライフルーツ、ドライ柑橘ピール、ビターチョコレート、カシス、黒蜜。

室温ではプルーンジュースのような濃い味わい。温めていくと、酸味が際立ち、骨格ができてくる。こんなに濃いのに切れがよい。54度くらいでは、黒蜜のニュアンスが顔を出して、和の雰囲気が醸し出される。そしてバランスがよくなる。

複雑な香りを楽しむためには、単独で飲むのがよいだろう。ペアリングするならば、オレンジピールの入ったチョコレートやレーズンとダークチョコレートに合わせたい。

テイスティングノート

25度くらい、平盃で

上立ち香はカラメルと醤油。飲むとまるでプルーンジュース! 甘味、酸味、ドライフルーツのしっとりと落ち着いた香り。奥のほうに感じられる苦味もまた、ドライフルーツを思わせる。チョコレートに合わせたいおいしさ。

40度

酸味が際立ってきた。カラメルにレモンを加えたよう。よい。そのせいかより芯ができて来た。しっかりした骨格を感じる。切れはよく、余韻も心地よい。伝統的な製法で造られた醤油を思わせる香味がある。

54度

黒蜜のニュアンスが出てきた。黒糖、少し青さのある香りだ。一気に「和」の味わいになった。落ち着いた甘味と、先程の温度帯より控えめの酸味、そして後半のコク。黒糖の香りが際立つ。

わらび餅に合わせたいと思って、近所の和菓子屋さんできなこのわらび餅を買ってきた。わらび粉を使った真正のわらび餅だ。

この酒を合わせたら、酒が黒蜜の役割を果たすに違いないと思いきや、酒の甘味がわらび餅で打ち消され、酸味が際立つこととなった。蜜にはならなかったけど、酒の酸味と柑橘のニュアンスが引き立てられるのが面白かった。合わないことはない、といった感じ。

60度

さらに温度を上げてみる。口当たりは軽やかになる。でもちょっと軽すぎる。柑橘のニュアンスはコーヒーにあるそれによく似ている。余韻は黒糖とプルーンの香りが膨らむ。これはよい。

(テイスティング日: 2021年4月27日)

ラベル情報

浅黄水仙 江戸の仕込再現 2003

  • 〈醸造元〉 朝日川酒造(山形県西村山郡河北町)
  • 〈仕込み水〉 -
  • 〈原料米〉 美山錦(山形県産)
  • 〈精米歩合〉 90%
  • 〈杜氏〉 -
  • 〈特定名称/種別〉 -
  • 〈アルコール度数〉 15-16度
  • 〈原材料〉 米(国産)・米麹(国産米)
  • 〈酒造年度〉 2003
  • 〈製造年月〉 R1-10
  • 〈その他情報〉 江戸時代の清酒製造仕込みの文献を参考に製造した日本酒を常温で長期間熟成した日本酒