28BY まんさくの花 巡米吟醸 亀の尾・山田錦・愛山|日本酒テイスティングノート

〈日本酒レビュー〉酒米違いの吟醸酒(6種類)が楽しめるシリーズのうち3本をテイスティング。

28BY まんさくの花 巡米吟醸 亀の尾・山田錦・愛山|日本酒テイスティングノート

日本酒は本格的に個性の時代へ

「まんさくの花」の「巡米吟醸」シリーズは、酒米違いの吟醸酒(6種類)が楽しめるシリーズです。「さあ出かけよう! 酒米を巡る旅へ」というキャッチコピーが裏ラベルにあり、蔵元が発行する「まんさく通信」には、この商品の考え方についてこのように書かれています。

日本酒づくりの要諦は、米に由来する香味を大切にし、たとえ雑味があってもそれを活かしてまとめ上げ、全体の調和を図るべき

「雑味のないきれいな酒」一辺倒の時代は終わりを告げ、酒に個性を表現する時代になったと実感します。もちろん、「きれいな酒」が終わったわけでは決してなくて、「個性」の一つとしてこれからも続くでしょう。ただ、世界的な食の「地域主義」の流れと、個性を表すことで生き残るという現実的な課題の中で、個性のある酒はますます主流となっていくでしょう。

世界のSaké、その未来〈盃のあいだ nº26〉でも引用しましたが、NomaのRené Redzepi が彼の料理をして "We're decoding our soil, our region."(私たちの土壌・地域をデコードしている[1])と語っています。これがグローバルな食文化における地域主義の本質を明確に示しています。同じように、「巡米吟醸」は地域と原料である米を反映した酒なのではないでしょうか。

さあ出かけよう! 酒米を巡る旅へ

6本に使用される酒米以外は同じ条件(精米歩合55%・秋田流酵母・原酒・一度火入れなど)で、ほぼ同じ時期に醸されています。まさに、米の個性を感じるためのラインナップです。6種の米は、蔵のある秋田県を代表とする「秋田酒こまち」「美郷錦」「亀の尾」と、日本を代表する西日本の米「雄町」「山田錦」「愛山」となっています。

※ 30BYからは「巡米シリーズ」としてリニューアル、スペックを吟醸から純米(精米歩合70%)にすることで、より米の個性が感じられるようになっています。

飲み比べると個性が見える

28BYの6本から「亀の尾」「山田錦」「愛山」の3つを飲み比べました。これらは出荷後に氷温で熟成させたものです。どれも上品のほのかな熟成感があり、米の個性の違いを楽しめました。

「亀の尾」は濃醇で、複雑だけど控えめな熟成感。「山田錦」はオレンジピールの砂糖漬けを少し寝かせたイメージの比較的軽やかな味わい。「愛山」は熟成のニュアンスがあるけどまだまだジューシーで、うま味も感じる酒でした。

特に亀の尾と愛山で個性が光りました。山田錦はオードソックスなおいしさ。違いは熟成によってより際立ったのでしょう。

テイスティングコメント

28BY まんさくの花 巡米吟醸 亀の尾編

とろりとしたテクスチャ。やや鋭い酸味と丸い甘味。酸味は少しツンとする感じ。とても穏やかだが複雑な熟成香。幅広さを感じさせる農順な味わいでバランスが取れている。

28BY まんさくの花 巡米吟醸 山田錦編

亀の尾・愛山と比べると軽やかでシンプルな味わい。蜜のような甘味と柚子ピールの苦味。甘味はオレンジピールの砂糖漬けを寝かした感じ。全体的に穏やかな熟成感が漂う。余韻は熟成香と柑橘ピールの苦味。

28BY まんさくの花 巡米吟醸 愛山編

可愛らしさを感じさせる甘味と酸味。そしてコクがある。熟成したジューシー感がぐわっと広がる。ダイナミックレンジの広い酒。粉砂糖のような甘味にうま味も。余韻は長く持続。

(テイスティング日: 2020年3月21日)

ラベル情報

28BY まんさくの花 巡米吟醸 亀の尾編

  • 〈醸造元〉 日の丸醸造(秋田県横手市)
  • 〈仕込み水〉 -
  • 〈原料米〉 秋田県産亀の尾100%
  • 〈精米歩合〉 55%
  • 〈特定名称/種別〉 純米吟醸酒
  • 〈アルコール度数〉 16度
  • 〈原材料〉 米(国産)、米麹(国産米)
  • 〈酒造年度〉 28
  • 〈製造年月〉 2018-01
  • 〈その他情報〉 一度火入原酒

28BY まんさくの花 巡米吟醸 山田錦編

  • 〈醸造元〉 日の丸醸造(秋田県横手市)
  • 〈仕込み水〉 -
  • 〈原料米〉 兵庫県産山田錦100%
  • 〈精米歩合〉 55%
  • 〈特定名称/種別〉 純米吟醸酒
  • 〈アルコール度数〉 16度
  • 〈原材料〉 米(国産)、米麹(国産米)
  • 〈酒造年度〉 28
  • 〈製造年月〉 2018-03
  • 〈その他情報〉 一度火入原酒

28BY まんさくの花 巡米吟醸 愛山編

  • 〈醸造元〉 日の丸醸造(秋田県横手市)
  • 〈仕込み水〉 -
  • 〈原料米〉 兵庫県産愛山100%
  • 〈精米歩合〉 55%
  • 〈特定名称/種別〉 純米吟醸酒
  • 〈アルコール度数〉 16度
  • 〈原材料〉 米(国産)、米麹(国産米)
  • 〈酒造年度〉 28
  • 〈製造年月〉 2018-05
  • 〈その他情報〉 一度火入原酒

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参考資料

  • 巡米吟醸特別号. まんさく通信 Mansakuno Hana News. 日の丸醸造発行(発行日不明、2018年頃?)