日本酒を片手に対話する「日本酒うんちく手帖 No.44-45 いっしょに食べる、いっしょに飲む」イベントレポート
神社のどぶろくや直会を紹介しながら、共飲・共食をテーマに皆さんとお話ししました。
2021年8月18日の「オンライン・日本酒うんちく手帖」、テーマは「いっしょに食べる、いっしょに飲む」でお送りしました。
狩猟時代から続く「共に食べること」の歴史や、お酒が入る宴会の歴史、そして神社で醸すどぶろくと神人共食についてお話ししました。ご参加いただいた皆さん、ありがとうございました!
今回はネタ本があります。原田信男著『共食の社会史』。
この本に出会って、今まで家族と食卓を囲んだり、友といっしょに酒を飲んだりしてきたこと、テイスティング・ワークショップを続けてきたこと、そして、神社で見聞きした直会などの神事、これら食べることについて体験したことや考えたことの「点」がつながりました。
まずは、「神人共食」について。
儀式の間に神が食べた神饌を神事に参加した人が下し物として食べることです。東大阪の善根寺春日神社で見せていただいた神事を紹介しながらお話ししました。
善根寺春日神社では、氏子さん達が自らどぶろくを醸し、それを他の神饌と共にお供えし、下り物をいっしょにいただきます。
こちらが「造酒斎殿」、神社の一角に設けられた酒を醸す場所です。
醸されたどぶろくと神饌を共食する直会です。
もち、大根、豆をきなこで和えたものです。これを自分たち(氏子の団体「敬神会」の皆さん)で醸したどぶろくとともに食べるのです。
現代的な方法で造るどぶろくですが、どこか「力」を感じる味わいです。宮司の髙松佑吉さんによると、20年ほど前までは酵母を添加することなく、自然に発酵が始まっていたそうです。「この場所だから、湧く」との言葉がずっと心に残りました。
続いて、酒や食べ物を持ち寄って山で共食を楽しむ「歌垣」について。
あわせて、岐阜県の飛騨一宮水無神社近くの「御旅山」で行われるお祭りを紹介しました。
神社からの行列の後は、丘の上で歌や踊りを奉納します。
その後、神社で醸したお神酒が振る舞われます。
飛騨一宮水無神社のお神酒は、爽やかで濃厚な味わい。口当たり・甘味・酸味・フルーティーでやさしい香りのバランスがとてもよいどぶろくでした。
2つの神社を紹介した後は、「無礼講」について解説しました。
儀礼をなくすことでよりお互いの理解や親睦をを深めようとしていた一方で、無礼講自体が規制の対象にもなりました。現在、別の理由ではありますが、酒で盛り上がる共食の場が制限されているので、タイムリーな話題です。
フリートークタイム!
フリートークでは、初参加の方も多く、いろいろな話題で静かに盛り上がりました! 主な話題は、
- 温度管理をしないで造るどぶろくのこと
- お神酒の回し飲みの意味
- ノリタケの徳利が最高!
- 徳利に一合入るかどうか
- 色々な酒器のこと
- 土器で酒を飲むこと、出土品で酒を飲むこと
- お酒の熟成のこと、熟成に向く酒、熟成酒は火落ちしない
- 軽やかな熟成酒でも燗酒にすると豊かな香りが感じられる
- 熟成酒にあるスパイスの香り
- インド料理に使われるスパイス
- 北インドと南インドでスパイスの香りの立たせ方が違う
- インド料理と日本酒のペアリング
- 伏見の食文化の中の川魚
- インドでは古米が高い、熟成した米の価値
などなどでした。
そして皆さんの飲んでいたお酒は、バライティに富んでいました!
大倉本家のPrototype、善和鳥(うとう)、御家ごろし純米吟醸、釜屋、ヤマサン正宗、白鶴(8号樽)、月桂冠THE SHOT赤、梅の宿生酛、玉川黒ラベル、富鶴上撰、SLたのしいねっ遠野カップ。
お気軽にご参加ください!
「オンライン日本酒うんちく手帖」は隔週水曜日20:00より開催しています。開催予定はTwitterやFacebookページで告知していますので、「参加したい!」と思った方はお問合せフォームか各種SNSのアカウントよりご連絡をいただければと思います。