うま味を見つめ、酒と向き合う「うま味と昆布と日本酒と」イベントレポート

うま味といえば昆布だし、そして日本酒にもうま味成分が含まれています。この二つと向き合ったり、ペアリングしたりするワークショップを開催しました。

うま味を見つめ、酒と向き合う「うま味と昆布と日本酒と」イベントレポート

日本酒を学んで楽しむ「日本酒レッスン」、14回目は「うま味と昆布と日本酒と」と題して、昆布と日本酒が楽しめる「おこぶ北淸」で開催しました。

まず、おこぶ北淸の北澤雅彦さんから昆布の味わいの違いや、なぜ京都に昆布が集まっているのか、などについてお話しいただきました。そして、日本酒とうま味のミニ・レッスンのあと、おこぶ北淸のおだしと日本酒のペアリング・ワークショップと続きます。

うま味のおさらい

今回のテーマ、"umami" (うま味)と "sake" (日本酒)、どちらも主要な英語辞書に掲載されています。そして、この二つの単語の検索数は年々増加しています。グローバルに人気を博しているのです。

「うま味」のおさらいとして、食べ物や飲み物の「おいしさ」は「うま味」を含む五味のほか、食感や温度、雰囲気や食体験などで構成されていることをお話ししました。たくさんの要素が組み合わさって「おいしい」と感じるのですね。

そして、うま味のブーストについて。うま味に塩を加えると味わいが強調されるし、違う種類のアミノ酸を組み合わせると相乗作用でうま味の強さがとても上がるのです。

つぎに、昆布だしと日本酒のうま味成分の構成を比べてみました。昆布だしはとても純粋なうま味成分で構成されているのに対し、日本酒は色々なアミノ酸が組み合わさって味わいが形作られています。

だしと日本酒の出会い

だしと日本酒の組み合わせといえば、「だし割り」や「ひれ酒」「いりこ酒」。(実は、ワークショップの後、伏見の酒でだし割りを作ったらどうなるかと色々実験しました。これは別の機会でレポートします)

そして、イエズス会の宣教師、ルイス・フロイスが16世紀に書いた記述をもとに、だしの味と酒の味が混じり合っていたかも、というお話をしました。

4種のだし、テイスティング

ミニ・レッスンの後は4種類のおだしをテイスティングしました。写真左から利尻昆布・羅臼昆布・真昆布。写真にはないですが、真昆布とかつおの合わせだしの4種類です。

利尻昆布はあっさりとした味わいで京料理によく使われます。関東でだし昆布として好まれる羅臼昆布は濃厚な味わいで昆布の味が前に出るタイプ。真昆布はあっさりとした中で苦味・うま味・甘味の強いだしが取れます。

参加者の皆さんからは、こんなコメントをいただきました。

利尻はあっさりしていて香りがいい、やさしくふんわり。羅臼は輪郭があって余韻がしっかり。真昆布はワイルドでパンチがある。あわせだしは、滋味あふれる、おにぎりが食べたくなる、幸せになる。

参加者のお話の中で興味深かったのは、実家は京都で利尻昆布を使っていたけれど嫁ぎ先の大阪では真昆布だったので、同じ昆布だしの味の違いにカルチャーショックを受けたというエピソードでした。

だしと日本酒ペアリング

いよいよメイン・イベント、だしと日本酒のペアリング・ワークショップです。

今回はおだし2種類(利尻昆布だし塩なし・真昆布とかつおの合わせだし)とお酒2種類で4通りの組み合わせにトライしました。選んだお酒は、スッキリ辛口タイプの「純米酒 辛口 開拓魂」とやさしくてうま味たっぷりの「天穏 山田錦 山廃純米酒」です。開拓魂は、室温と燗酒の両方で試しました。

こちらも、参加者の皆さんからたくさんの素晴らしいコメントをいただきました。

開拓魂(室温) x 利尻昆布だし

食欲が出る。フラットな印象、合わない。すっきり。

開拓魂(燗酒) x 利尻昆布だし

まろやか。燗酒にすると解決。ピリピリ感がよい。

開拓魂(室温) x 合わせだし

アルコールをだしがリセット。交互に安心感がくる。余韻が消えてしまう。だしの味が勝つ。

開拓魂(燗酒) x 合わせだし

飲み飽きしない。うま味やわらか。一体感がある。燗酒のほうがだしと酒が共鳴する。

天穏 x 利尻昆布だし

だしが酒に負けてしまう。甘味が喧嘩してしまう。だしと酒がやわらぐ。口の中にうま味が広がる。昆布のだしが溶け込む。

天穏 x 合わせだし

口の中で馴染む。よりうま味を感じる。相性がよい。最後まで甘い感じ。二つが一緒になり、料理になる。

実を言うと、イベント企画中は、全員にすべてのテイスティングコメントを言ってもらうことはちょっとヘビーかなと考えていました。でも、いざイベントが始まってその場の雰囲気に任せると、結局参加者全員ににコメントをいただくことになりました。

皆さんのコメントの深さと広さは想像以上で、ほとばしるように個性のあるコメントがどんどん出てきました。意見が分かれる(味覚は人それぞれ)ことも、どこか共通することが見えてくることもありました。このように、お互いに違いを認めあって、相手の味覚を尊重している空気感が伝わってきたのは嬉しかったです。実は講師の私が一番勉強になったかもしれません。これからも、このような体験を皆さんと共有することを続けていきたいと思いました。

(2019年1月20日・京都伏見「おこぶ北淸」にて開催)

※ イベントの様子の写真は、おこぶ北淸に提供いただきました。

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