「土田 菩提酛✕山廃酛」日本酒テイスティングノート

〈日本酒レビュー〉心に直接来る、なにか力強さのようなものを感じる酒。

「土田 菩提酛✕山廃酛」日本酒テイスティングノート

ピークがある酒

朋あり遠方より来るということで、京都の日本酒バーで酒を酌み交わした。少し前に馴染みの酒屋さんで買いそびれた酒があったので、ここぞとばかりに注文。

そして飲む。第一印象は「ピークがある酒」。さらりとした口当たりだが、すぐに強い酸味とコク、うま味、苦味が順にやってくる。チーズの香りの奥にカシスやカカオニブの香り。最後の正露丸のような苦味が心地よい。

店主は備前のぐい呑で出してくれたが、酒の味わいとイメージが合っていてよかった。よいペアリングだ。

独自製法、しかも酵母無添加

裏ラベルには「菩提酛に山廃酛をかけ合わせて酒母をたて造る独自製法」とある。その上酵母無添加だ。

土田酒造の商品ページをみると、残念ながら終売との情報。その理由は「菩提酛の菌を呼び寄せる力が強すぎて、他のタンクにも影響を及ぼす恐れがあるから」とある。酵母無添加だけでも大変な技術なのに、さらに強すぎる菌を釣るとは、脱帽である。終売になっても、飲んだ人の心に残り続ける味わいだ。

にしむら酒店のニューズレターによると、土田酒造は令和1醸造年度よりすべて生酛造り、米をあまり削らず一般米も使用、その上、ラベル記載のない添加物を使わない酒造りをしているという。特に米のくだりで未来を感じた。原点回帰しているようでいて、一段上のステージに進んでいる。螺旋階段を登っている。下から見ると同じ位置だが、横から見ると上にいる。

テイスティングノート

室温、備前のぐい呑で

さらりとした口当たりのすぐあとに、強い酸味とコク、うま味と苦味が順番にやってくる。一つ一つ明確に感じられるのだ。香りはチーズ・カシス・カカオニブ、それからブランデーを思わせる甘くて力強い香り。最後に来る苦味が正露丸のようで、心地よい。トニック感がある、ピークが明確に感じられる酒だ。

(テイスティング日: 2020年9月27日)

ラベル情報

土田 菩提酛✕山廃酛

  • 〈醸造元〉 土田酒造(群馬県利根郡川場村)
  • 〈仕込み水〉 -
  • 〈原料米〉 -
  • 〈精米歩合〉 麹米70% 掛米70%
  • 〈杜氏〉 -
  • 〈特定名称/種別〉 -
  • 〈アルコール度数〉 16度
  • 〈原材料〉 米(国産)・米麹(国産米)
  • 〈酒造年度〉 H30BY
  • 〈製造年月〉 -
  • 〈その他情報〉 【室町時代の製法「菩提酛」の土田流現代版】古の製法菩提酛に山廃酛をかけ合わせて酒母をたて造る独自製法。培養酵母、人工的な乳酸を使用せず、微生物たちと対話するかのように醸した自然派の酒。深甚なる日本酒文化、素晴らしき伝統の技術に感謝。

参考資料

  • 土田 菩提もと×山廃もと 1800ml【売り切れ】(2021年7月31日閲覧)
  • にしむら酒店 一酒一会の会だより 2020年7月号