/ どぶろくレビュー

栃尾どぶろく 雪中壱乃界 亀ノ尾仕込 蒸米・米粉|どぶろくテイスティングノート

日本酒コンシェルジュ 江口崇 aka Umio 日本酒コンシェルジュ 江口崇 aka Umio

α化米粉を使ったどぶろく

どぶろくの味わいの醍醐味は米粒の食感です。「噛む」ことで、飲むだけの酒とは違う「はたらきかけ」ができることがどぶろくたる所以だと考えていました。ところが、2019年11月に郡上で開催されたどぶろく研究大会で「米粉を使ったどぶろく」に出会うことで、新しい世界が開けました。

新潟県長岡市のNPO法人UNE(ウネ)のどぶろく、「雪中壱乃界(せっちゅういちのかい)」は、一般的な「蒸米仕込み」に加え、「米粉仕込み」でも造られています。この米粉、山形大学と地元企業で開発した製粉機を使って挽いた「α化米粉」を使っています。

α化について説明しましょう。生米の中のデンプンは生の状態では硬い結晶構造になっています。これを加熱することでデンプンの枝状の部分が広がり、やわらかくなります。これを「α化」あるいは「糊化」といいます。炊いたご飯や蒸した米の状態ですね。これを放置しておくとデンプンは再び硬い構造になります。β化あるいは「老化」といいます。冷ご飯をイメージしてください。

日本酒やどぶろくを造るにはデンプンを糖に分解する工程がありますが、そこでは米のデンプンをα化ささせる必要があります。デンプンがα化した状態していないと麹の糖化酵素が十分に働かないからです。一般的には酒やどぶろくを仕込むときは米を蒸すことでα化させます。「α化米粉」では蒸す作業なしにそのまま仕込めます。

一般の米粉はα化していないので生米と同じ状態です。そのままでは糖化があまりされません。そして蒸すのも容易ではありません。α化米粉を使うことで、通常のどぶろくにはない、なめらかな口当たりが実現できるのです。

UNE代表の家老洋さんによると、原料米は茨城県から種籾を取り寄せて地元で栽培した亀の尾。これを使ったα化米粉と米麹、酵母を使って醸しているとのことです。

蒸米仕込み

亀の尾を使った日本酒はだいぶ飲みましたが、どぶろくを飲むのは初めてです。この品種が東日本で広く栽培されていた昭和の頃までは、この地の農家のどぶろくもこの米で造られていたのだろうかと想像します。

栃尾どぶろく 雪中壱乃界 亀ノ尾仕込 蒸米

「蒸米仕込み」はメリハリのある味わいです。口当たり・味わい・香り・粒の素材感・噛む感触、噛むことで出てくる香り・のどごし・余韻、と時間の流れを楽しめるどぶろくです。米飴のような、なめらかな甘味、しっかりとした酸味、みかんと若いバナナの香りがくっきりと現れています。

42度の燗では味と香りがさらに広がります。枇杷の香りです。これはいい! 舌に残るピリピリとした感触がアクセントになります。60度ではサラサラな口当たりになり、米の存在感がアップ。後口は上品なりんご飴のようで、この透明感のある甘味が癖になりそうです。

米粉仕込み

次は「米粉仕込み」ヲテイスティングします。見た目はミルクのよう。口当たりはとてもなめらかで軽快です。飲むと少し塊があって、飲み口が単調になりません。若いバナナ・ココナッツミルク、カカオの果肉、そして奥の方にぬか漬けと心地よい木の香りが見え隠れします。後口の苦味も心地よいものです。

15度位に冷やして飲むのがよいですが、60度に上げてみるのも勧めです。米の顔が全面に出てきて、米を感じる、ポン菓子のニュアンスがスポットライトを浴びます。そのあとアルコールの刺激も現れてくるので飲みごたえがありますね。

栃尾どぶろく 雪中壱乃界 亀ノ尾仕込 米粉

テイスティングコメント

亀の尾 蒸米仕込み

メリハリのある味わい。時の流れを楽しめるどぶろく。

ごく薄く黄色がかった乳白色。12度前後では、炭酸ガスと酸味でシャープな印象。粒を感じる、噛めるどぶろく。粒の存在感があるのにやわらかい。バランスのよい粒感だ。甘味は米飴や水飴のよう。しっかりとした酸味は全体に濃醇さをもたらし、オレンジやみかんの香りが広がる。その後、若いバナナの香りが来る。かなりピュアでストレートなバナナ香。切れはよい方。ガス感と酸味、苦味がそうさせる。後口にもまだガスの感触が残り、オレンジピールとオレンジ果汁のニュアンス、ややうま味も持続する。

20度くらいでは、ちょっとダレる。枇杷の香り。収斂味も相まってとても強い枇杷のニュアンス。

42度に上げると、香りと味が広がる! 枇杷の香りが心地よい。舌にピリピリとした感触がある。この温度ではとてもおいしくいただける。

60度では、口当たりがサラサラになる。同時に米の存在感、いわゆる「米感」がアップする。味の幅が広がったお粥のよう。後口は上品なりんごの飴、米飴のニュアンス。透明感のある甘味が素晴らしい! すりおろした生姜を少し入れてもいいかも。

亀の尾 米粉仕込み(α化米粉)

15度くらいで。見た目は牛乳のよう。ごくごく淡く茶色がかった乳白色。口当たりはとてもスムース。思わず感触を再確認してしまうくらい。米粉を使っているが、ちょっとダマのような塊がある。溶けた米麹かもしれない。少し噛めるのがよい。どぶろくらしさをもたらす。全体的にはやや軽快な印象、少しマットなテクスチャ。苦味が際立ち、酸味とともにシャープな印象を形作っている。若いバナナ・ココナッツミルク・カカオの果肉・クプアスの果肉の香り。奥の方にほのかに、ぬか漬けと木の香り(心地よい)。トロピカルな白いフルーツの印象。後口には苦味と青いバナナの香りが残って、心地よい。

42度の燗で。サラサラでミルキー、ヨーグルトの印象が際立つ。酸味が強調される。そして切れがよくなる。これはよい! 45度では、酸味とアルコールの刺激が引き立てられ、やや「しゅん」とした印象になる。50度まで上げると、まず温度を感じるようになる。残念ながら膨らみがなくなり、バランスが崩れてしまう。ウエハースの香りが印象的。60度もよい! ミルキー、ウエハース、ポン菓子、そしてアルコールの刺激。

(テイスティング日: 2019年11月15日)

ラベル情報

栃尾どぶろく 雪中壱乃界 亀ノ尾仕込 蒸米

  • 〈醸造元〉 UNE(新潟県長岡市)
  • 〈仕込み水〉 -
  • 〈原料米〉 亀ノ尾
  • 〈精米歩合〉 -%
  • 〈特定名称/種別〉 濁酒
  • 〈アルコール度数〉 12度
  • 〈原材料〉 米(長岡産)、米麹(国産米)
  • 〈製造年月〉 2019-9-25

_s-tn-DSCF0257

ラベル情報

栃尾どぶろく 雪中壱乃界 亀ノ尾仕込 米粉

  • 〈醸造元〉 UNE(新潟県長岡市)
  • 〈仕込み水〉 -
  • 〈原料米〉 亀ノ尾(アルファ化した米粉)
  • 〈精米歩合〉 -%
  • 〈特定名称/種別〉 濁酒
  • 〈アルコール度数〉 13度
  • 〈原材料〉 米(長岡産)、米麹(国産米)
  • 〈製造年月〉 2019-5-17

_s-tn-DSCF0264

参考資料