酒器による熟成古酒の味わいの違い、ライブ配信と後日談
熟成古酒をいろいろな形のワイングラスで飲み比べたらいろいろな顔が見えてきた。
ワイングラスで日本酒の熟成古酒を飲んでみた。
先週(2022年1月30日)、長期熟成酒研究会の伊藤さんと、いろいろな酒器で熟成古酒を飲む企画をYouTubeでライブ配信した(アーカイブは下記から閲覧できる)。
その流れで家にあったワイングラス(シャンパーニュ・オークドシャルドネ・ボルドー用)を出してきて、特に相性を考えずに熟成古酒を飲んでみたら、それぞれのグラスがその酒にある違った顔を見せることに驚いた。
開くまで待てばよかった
配信のあとはZoomで反省会、お疲れ様会をするのだが、30分ほど経ったあとにグラスに残った熟成古酒を飲んでみたら、酒が生き生きとしているのに気がついた。酔いが覚めるほどだった。
配信中の注ぎたてでも違いを楽しめたが、時間が経過したあとの段違いの鮮やかさに興奮した。伊藤さんと二人で、「味が開くまで待っていればよかったね」と笑いながら話した。一発勝負のライブ配信では、普段の60%も気が回ればいいほうだ。
というわけで、配信後の興奮冷めやらぬうちの記憶を、ここに書き残しておこう。
飲んだお酒は「竹生嶋 壺中重星霜」、14BY(2002BY)だから、20年の時を刻んでいる。
3種類のワイングラスで「竹生嶋 壺中重星霜」をテイスティングする
容積の小さい順からテイスティングした。
アロマティック ・ホワイトワイン/シャンパーニュ
今回の3種類の中で一番小さいが、それでも香りの溜まる量は445ml。
注いですぐは、甘い香りがいっぱい。はちみつ、レーズン、甘酸っぱくてまだ水分の多いドライアプリコット、そしてバニラ。一つ一つの香りが明確で、全体的に甘酸っぱい雰囲気だ。
30分ほどたってからは、柑橘ピールの香りが残った。ちょっとすえたような香りが見え隠れするけど、飲んだら完璧! 甘味と酸味のバアランスがよく、生き生きとしている。ジューシーだ。
オークド・シャルドネ
オーク樽で熟成されたシャルドネのためのグラス。樽の香りはバニラやココナッツなど甘い香りだという。600ml。
まずは注ぎたて。穀物、玄米、その奥に杏や白い米の香り。口当たりはシャープで香りは強い。
30分ほどたってからは、最初に収穫を感じさせる乾いた藁の香り、上品な藁の香りだ。その後カカオの香りがほのかに。甘い香りは感じられない。飲むと、さらりとした口当たり。甘味、酸味、苦味が離れて感じられて、苦味が強い。後口にも苦味が残る。
ボルドー
960mlと大型。香りを貯める部分が1リットル近くある。
香りが面でやってくる。押し出されるようにやってくる。酸味を連想させるシャープで強い香りだ。藁、玄米、白い米の甘い香り、その奥に黒蜜、レーズンの甘い香り。香りに複雑性がある。色々な香りが顔を出す。
30分くらい経つと、香りがはちみつの甘い香りに一本化される。ピュアな甘い香りと、その奥にほのかに藁の香りが少しだけ顔を出すのがよい。
熟成古酒の枯れた良さが一番表現されるグラスだ。甘味、酸味が突出せずにまとまっている。
どのグラスが適しているのか?
それぞれのグラスで違った味わいがあった。時間が経つとまた表情が変わってくる。
この酒の場合、ボルドー用のグラスとの相性が最も良かったと思う。でも、別のグラスでは酒の意外な顔が出てきておもしろい。熟成古酒のどの顔が好きか、どの表情を出したいかによって選ぶグラスを変えるのが楽しい。
壺中重星霜に関しては、私の感じるところでは、複雑な熟成香がありながら枯れた艶が見えるボルドーグラスが一番好みだった。