あっさりと飲みやすい「白い銀明水」を飲んで麹と酒の未来を思う|甘酒テイスティングノート
京都の佐々木酒造が醸す、麹を使ったノンアルコール醸造飲料をテイスティング。
白い銀明水
近頃、オフィスのある京都・西陣エリアをよく散歩している。マイクロ・ローカルツーリズムだ。普段はお気に入りのカフェを目的地とすることが多いけれども、この日は西陣にある佐々木酒造の前を通りかかったので、ショップに立ち寄った。
あっさりとして飲みやすい麹ドリンク
そこで手にしたのは、「白い銀明水」。麹を使ったノンアルコール飲料、つまり甘酒の飲み物だ。発売当初の2011年にもイベントでお出ししたことがあることを思い出した。
その後、何度かバージョンアップを重ねておいしくなった。梅エキスを加えることであっさりとした味わいになり、ガラス容器がペットボトルになっていた。ショップの方によると、スーパーなどで扱ってもらいやすくするためだという。
コクがあるけど重すぎない。梅エキスの落ち着いて奥行きのある酸味が麹由来の甘味にを下支えしている。そのため味わいのバランスがよい。コクがなめらかに広がっていく。そして、ほのかに玄米の香りがある。切れもよい。
米麹由来のオリゴ糖やアミノ酸などの機能性成分を多く含むので、健康に気をつかう人やエナジードリンク以外でエネルギーを補給したい人におすすめの飲み物だ。
銀明水は仕込み水
このあたりは良質の水に恵まれている。平安時代には宮中の酒蔵を造る部署「造酒司」があったし、最近まで酒蔵が集まっていた。日本醸造協会会員名簿によると1953年には少なくとも6軒の造り酒屋があったが、現在残っているのはここ佐々木酒造のみだ。
昭和30年代まで「金明水」「銀明水」「たたみ屋井戸」といった名水が酒造用の共同井戸として使われていた。これらの井戸自体は現在使われていないが、佐々木酒造が仕込み水として使っているのが「銀明水」だとされている。その銀明水を使った麹飲料が今飲んでいる「白い銀明水」というわけだ。
「造酒司」から佐々木酒造までの散歩をリアルタイム収録した動画(解説付き)もアップされているので、ぜひバーチャル・散歩を体験していただきたい。そして、パンデミックが終息したあとは京都・西陣を訪れて同じコースを散歩してほしいと思う。
酒蔵の未来は麹にあるかも知れない
近年、造り酒屋が甘酒や関連ドリンクを造り、販売することが多い。これには2つの意義があると思っている。一つは、とても高品質な甘酒を造る力が酒蔵にはあること。酒造りの半分は麹づくり。高品質な麹をつくっているし、お酒のもろみの糖化(お米のデンプンを糖に変えること)ではと、てもデリケートで高度な操作をする技術がある。おいしい甘酒ができないわけがない!
総じて、酒蔵が造る甘酒は上品でバランスの取れた味わいが特徴だ。口に含んでから喉越しまでの流れに日本酒のような美しさがある。
日本酒蔵は「高品質な麹を使った飲み物を生み出すところ」と見ることができる。ワインやビールなど酒類の一つとしての日本酒というよりも、麹を中心とした酒をはじめとするいろいろな飲料や食品をつくり出す発酵産業として捉えると、未来が見えてくる。
世界的にアルコールの消費が減っている中、麹を核とした発酵食品産業としての、酒蔵の立ち位置が変化していくのではないか。
ラベル情報
(テイスティング日: 2021年7月2日)
ラベル情報
白い銀明水
- 〈醸造元〉 佐々木酒造(京都府京都市上京区)
- 〈仕込み水〉 -
- 〈原料米〉 -
- 〈精米歩合〉 -
- 〈杜氏〉 -
- 〈特定名称/種別〉 清涼飲料水
- 〈アルコール度数〉 アルコール0%度
- 〈原材料〉 米、米麹、梅エキス
- 〈製造年月〉 -
- 〈その他情報〉 栄養成分表示(100g当たり)エネルギー 88kcal タンパク質 1.0g 脂質 0.2g 炭水化物 20.5g 食塩相当量 0g | 賞味期限 2021-09-11
参考文献
- 堀池 昭. 1994. 名水を訪ねて(26)京都・伏見の御香水と酒造り, 地下水学会誌 36巻 3号.
- 経済産業省 近畿経済産業局. 夏季でも生産できる米麹を利用したノンアルコール醸造飲料. 2018. 近畿地域公設試験研究機関ガイド2018 公設試のすすめ.