さらに時を重ね、フレーバーが調和する「独楽蔵(こまぐら) 悠五年 純米古酒」日本酒テイスティングノート

〈日本酒レビュー〉燗冷ましでは、きのこの香りが他の香りときれいに調和して美しかった。

さらに時を重ね、フレーバーが調和する「独楽蔵(こまぐら) 悠五年 純米古酒」日本酒テイスティングノート

蔵内5年熟成で出荷されて酒を、さらに室温で3年自家熟成させた酒だ。出荷年月の翌月に開栓したときはおいしかったけれど、家で寝かせてさらによくなった。開栓時にあった複雑な熟成の香りは、時を経てより調和し、味わいが深まった。

オンライン・グループ・テイスティングの会で5名で一緒に味わった。じつのところ、同じ酒を同じ場所でテイスティングして語り合うことは、オンラインでは成立しないと長いこと思っていたのだが、思い切って開催したところなかなかよい会になった。酒の味について対話するグループ・テイスティングのよさは失われなかった。参加いただいた方々に感謝である。

室温では古酒らしい複雑な香りが折り重なる。きのこを中心に、ナッツやドライフルーツの香りだ。開栓時と違うのはブランデーのような印象があったこと。アルコールの感じ方が蒸留酒だった。一緒にテイスティングした方々のなかでも、「度数が低めのウイスキー」と捉えた方や、「シェリー酒のようだ」とコメントされる方がいた。

温めると格段においしかった。とくに燗冷ましでは、きのこの香りが他の香りときれいに調和して、それを黒糖の甘味が支えるさまが美しかった。複雑に織りなす香味のよさを残したまま、上品な味わいになるのだ。

きのこのケークサレに合わせたい。酒と料理にあるきのこの香りが同調して、酒の黒糖のニュアンスが、ケーキ生地部分とマリアージュするだろう。

テイスティングノート

◯ 室温、清酒グラス

琥珀色、よい熟成色である。上立ち香はきのこ・アーモンド・レーズンなど、複雑な香りで構成されている。古酒らしい不快でないややムレた香りも深みを与える。

口に含むと、シャープな酸味。それから甘味とうま味が広がる。甘くて分厚い酒だ。それでいて、ブランデーのような蒸留酒の印象がある。アルコールの感じ方がそうさせるのかもしれない。香りは、黒糖・カラメル・メープルシロップ。上立ち香と比べ、甘さを連想させるものが中心になる。甘くて分厚い余韻にはカカオの香りも感じられる。

40度、平盃

なめらかなボディー感が出てくる。米を思わせる甘味に酸味があって、少しジューシーな印象がある。茸の香りと甘露飴のような甘味にダージリン・ティーの香りが寄り添う。落ち着いている。

50度、平盃

どっちつかずな印象になってしまった。痩せた感じがして、やや物足りない。そんな中、茸の香りと紅茶飴の香りが柑橘の酸味を追いかける。

◯ 62度、平盃

サラサラ感が心地よい。きのこの香りがしっかりと存在感を持っている。後半にキュッとコクの上がるさまがよい。余韻に干し草と米飴のニュアンス。

◎ 燗冷まし52度、平盃

よい! 思わず膝を打つうまさ! きのこの香りが程よい存在感で、突出せずに他の香味と調和している。黒糖のような甘味に統一されて、それを酸味が下支えする。

ペアリング

きのこの香りを活かして、きのこのケークサレに合わせたい。チーズの中では、チェダーチーズに合わせたい。3種類のキノコを黒酢でソテーしたものを作ってみたが、よく合った。

(テイスティング日: 2021年4月27日)

ラベル情報

独楽蔵(こまぐら) 悠五年 純米古酒

  • 〈醸造元〉 杜の蔵(福岡県久留米市)
  • 〈仕込み水〉 -
  • 〈原料米〉 -
  • 〈精米歩合〉 60%
  • 〈杜氏〉 -
  • 〈特定名称/種別〉 -
  • 〈アルコール度数〉 14度
  • 〈原材料〉 米(国産)・米麹(国産米)
  • 〈製造年月〉 2018-03
  • 〈その他情報〉 5年以上常温熟成させた純米古酒