6. 日本酒が大好きだから、日本酒を売る|にしむら酒店 西村道隆さん インタビュー

西村さんは日本酒が大好きな消費者でもあります。「自分が美味しいと思うから売る」高語る西村さんに日本酒の魅力を語っていただきました。

6. 日本酒が大好きだから、日本酒を売る|にしむら酒店 西村道隆さん インタビュー

いまは一番、日本酒のいい時代

ここ5年くらいで、日本酒全体が劇的に美味しくなりました。たぶん、江戸時代とか大正時代には考えられなかった、どんなお金持ちでも飲めなかったような、すごいうまいお酒が、今は誰でも飲めるようになっていると思います。だから、今はほんとうによい時代です。

西村さんは、いちばん日本酒が好きな消費者

— 日本酒の良さはどんなところにあると思いますか?

米からくるうま味と香りですね。酵母菌、乳酸菌がつくる乳酸、米に若干入っているタンパク質・脂質を酵母が分解してつくるアミノ酸。それらの味わいの複合が素晴らしい。日本酒ほどうまい酒はないと思います。

日本酒を飲むときに、「どんないい香りがあるんやろか」とか、「口に含んだ時のうま味と甘味がどんなタッチでくるんやろう」とか、「後味はどんだけ、渋味とか酸はどんだけあるんやろうか」とか、「どんだけバランスがいいんやろうか」とか。

「この酒うまいな」と思った時に、つぎにどんな料理に合うか、「これに合いそうやな」とか。
「温めてみようか」とかに思いを巡らす。

料理との取り合わせ、味、あたたかさ、うま味成分で日本酒に勝るものはない。ワインと比べると料理と喧嘩する要素が少ない。香りの高い吟醸酒をのけといたら、合わない料理はほとんどない。その代わり、ワインみたいに、ずば抜けた相性はないんですけど。ワインの場合は「これ嘘でしょ!」ってなるくらい両方上がるのがある。そこは日本酒にはない。

でも、味の幅、温度帯の幅、うま味とか奥深さでいうと日本酒はすごいなと思います。

それから、日本酒は酔ってきても旨い。酔っても日本酒の味はわかる。日本酒はずっと味がある。他のお酒は、とくに蒸留酒とかは酔ってくると頭がくるくると回って、舌がわからんようになる。

日本酒のよさは、酔っている自分が温かいことです。やさしく、あたたかく飲める。僕は酒屋だけど、実は消費者なんです。いちばん日本酒が好きな消費者なんです。

ピクニックで楽しむ日本酒

インタビューを終えて

私がにしむら酒店で買物をするようになったのは2年ほど前のことです。「西村さんに日本酒を一から教わった」というある酒蔵関係者の強い勧めがきっかけでした。

お店に通うたびに毎回30分以上会話をしていたと思います。「もっと西村さんの話を聞きたい」、そう思ったのが西村さんにインタビューをしようと思ったきっかけです。

西村さんは快くインタビューを受けてくださいました。途中お店にくるお客さんの対応をしながら、2時間近くにわたってお話をしていただきました。

この記事で紹介できたのはそのうちのほんの一部ですが、西村さんの日本酒にかける想い、日本酒の素晴らしさ、日本酒をのむときのワクワクを感じていただければと思います。

消費者であり、プロである

昭和の終わりの第1次、平成の第2次、そして今は第3次日本酒ブームと言われています。一方で日本酒はマニアの世界で敷居が高い、というイメージがあります。「大吟醸とか用語がわからないので日本酒の世界に入りにくい」「知識なしに飲んだら怒られそう」といった声を聞くことも少なくありません。

西村さんは具体的でわかりやすい言葉で、ていねいにお酒の美味しさを説明します。お客さんの立場に立って味わいを伝えているのです。西村さん自身が日本酒のことを大好きな消費者であることが、このような接客を支えているのだと感じました。

西村さんのお話の行間から感じられた、「目利きの力」、「選ぶことに対する強い責任感」。西村さんのプロ意識、真剣さがここにはあります。

プロであると同時に消費者である。どちらも、ものすごく熱い。生産者と消費者をつなぐ役割はこのようにして果たされている、と思いました。

西村さんにお酒を選んでもらおう!

去年(2014年)の2月に私が東京で開催したイベント「京都の日本酒をあなたに」では西村さんにお酒選びの相談に乗っていただきました。東京の参加者の方に大変ご満足いただきました。また、京都で開催している「町家でお酒を楽しもう!」でも何度か西村さんにお酒選びのアドバイスをいただいています。

おいしい日本酒に出会いたい方は、京都北白川のにしむら酒店を訪れてみてはいかがでしょうか?

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  2. ひとつひとつ、おいしい日本酒を見つけていく
  3. 丁寧な言葉の積み重ねで日本酒の味わいを伝える
  4. おいしい日本酒と出会うには
  5. 日本酒を低温で熟成させる
  6. 日本酒が大好きだから、日本酒を売る

(2015年5月公開)