ちいさなハレの場〈盃のあいだ nº7〉

帰り道、深夜近くだがまだ灯りがついているケーキ屋さんがあった。どうしてこんなに遅くまで店を開けているのだろう。

ちいさなハレの場〈盃のあいだ nº7〉

帰り道、深夜近くだがまだ灯りがついているケーキ屋さんがあった。どうしてこんなに遅くまで店を開けているのだろう。「すこしでもロスを出したくないからなのかな?」と思った。売れ残りのケーキを明日売るわけにはいかない。今日中に売れなければ廃棄するしかない。技と心を込めて、貴重な材料を使って作ったものを捨てるのは本当に心苦しいだろう。

ケーキを食べることって、そんなにない。とくにスイーツ好きでない限り、誕生日などのお祝い事でケーキを買ってくるのが普通かもしれない。会社などで大勢でお祝いすることも少なくなった。ホールサイズのケーキは小さなものが売れているという。小さいグループとか、小さくなった家族でお祝いのケーキを食べるようになったのだろう。

年に1回程度の誕生日、創立記念日などの大きな「ハレの場」より、ちいさな「ハレの場」。ちょっといいことがあったとか、プロジェクトが一区切り付いたとか、そういう時に「ちいさなハレの場」をつくることがトレンドなのかもしれないと思った。

たくさんの人が集まって、ほぼ1日を使って大きな「公式」なお祝い事をすることも時には大切だけど、プライベート度が高い小さな集まりで小さなことをお祝いするような「ちいさなハレの場」をたくさん持ったほうが楽しいし、持続的な幸福感が得られると思う。ひとりでも、仕事でいいことがあったとか、夕日が綺麗だったとか、好きな人の笑顔を見られたとか、そういう時にちいさなお祝いをするのもいいだろう。

お酒もそうだ。大きな宴会で一升瓶が何本も空いていくのも豪快で楽しいけど、より日常に近いところで「ちいさなハレの場」を作っておいしいお酒、そのお祝いのストーリーに合ったお酒を飲む。それは、消えつつある「毎日の晩酌」と「大きなお祝い事」の間にある場だ。

そこでケーキも食べるし、お酒も飲む。そうすることで日常がちょっとだけ幸せになるし、ちいさなケーキ屋さんや酒蔵さんを支えることにもなる。幸せな日常をつくる循環が回りだす。

今日も日本酒コンシェルジュ通信に来ていただき、ありがとうございます。日常の小さな幸せに乾杯!