自家熟成は、次の世代のために木を植えるようなもの〈盃のあいだ nº4〉

「商売は1世代25年くらいでしょう。今いい酒を買っておいたら、次の世代は25年熟成酒からはじめられるんですよ。だから自家熟成は林業と同じです」

自家熟成は、次の世代のために木を植えるようなもの〈盃のあいだ nº4〉

「商売は1世代25年くらいでしょう。今いい酒を買っておいたら、次の世代は25年熟成酒からはじめられるんですよ。だから自家熟成は林業と同じです」

熟成古酒研究会のアンテナショップ「熟成古酒処」でそう語るのは、長期熟成酒研究会・事務局長の伊藤淳さん。孫の世代のために木を植えるように、次の世代のために酒を買う。熟成古酒専門の酒販店を営み、一万五千本もの日本酒を保管・熟成させている伊藤さんの思いだ。

熟成酒にはロマンがある。それはひとえに、時に予想を超えた変化が起こるからだ。時が味を作り出す。酒の中に時間を感じるには、一世代では短すぎる。次の人のために熟成を仕掛ける、次の世代が熟成酒の素晴らしさを体験するための準備をする。これは我々が世代をつなぎながら、楽しいことを創り出し継承する行為、すなわち「文化」と呼ばれるものではないか。

この日、熟成古酒処で学んだもう一つのことは、この遊び。

江戸時代の製法で造られた「浅黄水仙」、澱が溜まっている。これを撹拌せずにゆっくりと5つの酒器に注ぐ。それぞれ味わいが違う。最初に注がれる瓶の上部の酒は荒々しく、次第にバランスが良くなり、4番目では少し澱が絡み、5番目では見た目もまったく違う白濁の酒。

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1番目と5番目、2段階飛ばし、一段階ずつと飲み比べると違いがわかる。とてもわかる。透明感のある甘味とドライフルーツの香りが次第に目立たなくなり、炊いた米や藁など米のニュアンスが強くなる。最後には米々しさが一人勝ち。

3人で飲み比べながら、時にはブラインドであてっこをしながら、ああだこうだと言い合いながら飲む。ワクワクする遊び方を教えてもらった。竹生嶋の「澱だけ古酒」でもやってみたいな。

今日も日本酒コンシェルジュ通信に来てくださり、ありがとうございます。時が詰まった熟成酒に乾杯!

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