Azuma Kirin Saquê Nama @ サンパウロ Izakaya Matsu|世界のSakéテイスティングノート
〈世界のSakéレビュー〉ブラジルの居酒屋で東麒麟のNamaをテイスティング。やわらかく入り、フルーティーで後半はアルコール感でよく締まる酒。
ブラジル・サンパウロはここ数年、サンパウロでは日本の居酒屋スタイルがブーム。東洋人街にある老舗に加え、新しい居酒屋が続々登場している。その中で Izakaya Matsu は先進的な飲食店が集まるエリア、ピニェイロスに店を構える。
日本の居酒屋のような雰囲気。カウンターの中のスタッフは元気、活気にあふれている。客はブラジル人が中心で、主に飲まれているのはビール。日本酒は割高になるからそんなに飲まれない。
でも日本酒を飲もう! メニューにあったのは、輸入ものの冷酒、国産の冷酒、そして熱燗。国産の冷酒 Nama Saquê を注文。1杯22レアル、輸入の28レアルに比べると若干安い。
Nama Saquê はサンパウロ州カンピナス市にある清酒メーカー Azuma Kirin の生詰。品質管理に気を使って商品で、冷蔵庫で保管できる飲食店や酒販店に限定して卸されており、賞味期限は6ヶ月に設定されている。ブラジルでは一般的に、品質管理に課題がある。熱帯・亜熱帯の気候のうえ、日本酒はあまり回転しないこと、品質管理の知識が行き届いていないことが理由。その中で、徹底した品質管理でおいしさを提供しているのがこのNamaだ。
やわらかく入り、後半はアルコール感でよく締まる
冷蔵庫から出したての7〜8度でテイスティング。
やわらかなアタック。甘味は控え味で酸味もそこそこ。フルーティーな香りはメロンやマスカットの香り。そしてミルク飴の香りがほのかに。ほのかに蜂蜜の香り。やや、春野菜のようなえぐ味とうま味、苦味がしっかり。これは東麒麟の個性だ。
切れはよく、余韻はミルキーな香り、やや収斂味があるが気にならない。アルコールの刺激がヒリヒリと舌に残る。
苦味とえぐ味で構成されるボディー感、料理との相性はとてもよい
餃子ととんかつを頼んだ。とても日本的な味わい。90年代に感じた、独特のブラジル風味はどこかに行ってしまって、日本で食べるものと変わらない。むしろ、同じ傾向だけど材料がよいぶん、優れているのかもしれない。
とんかつがおいしい、豚肉そのものがおいしい。餃子は身がしっかりとしており、ニラの存在感が強い。太陽をたっぷり受けて育ったに違いない。
このほか、小魚の甘露煮をサービスしていただいた。故郷を思う味。ありがたい。
餃子と合わせると、酒は負けない、そして合う。ニラのえぐ味と酒のえぐ味が同調する。東麒麟独特のえぐ味と苦味は食中酒となる時、輝く。酸味は控えめで、「酸で切る」ことはないが、苦味が料理との共演に欠かせない。このフルボディーさで、いろいろな料理と合う。
燗酒
日本に持ち帰り、燗酒でも楽しんだ。
47度
やわらかく入るが、カカオやキャロブのような苦味で締まる。程よく膨らみ、バランスが良くなる。ふんわりしているけれども苦味でちゃんと締まる。切れた後の余韻のうま味と収斂味がコクを演出する。細かいところがうまくマスキングされて、落ち着いて味わえる。
60度
おいしい。温度そのものとカカオの香りが楽しめる。単独で飲みたい。
ブラジルの地酒、グローバル酒の未来を見る
改めて、品質の高さを感じた。生詰のフレッシュさもあるが、徹底した管理によるものだ。だからこそ、燗にしても楽しめた。
この、独特の苦味とキャロブの香りが、ミルキーでライシーな日本酒の味わいに付け加えられていることにより、ブラジルでしか出来ない地域の特色を楽しめる。この苦味はメキシコのNAMIでも感じられたので、熱帯の冷房施設で造ることによるある種の蔵グセかもしれない。
この特色を生かして、ブラジルならではの酒質としてプッシュしていくことが、グローバル酒としての発展形になると考える。そして、東京に運ばれる全国の地酒のように、世界で「ブラジルがつまった酒」といして楽しまれる日が来るに違いない。グローバル酒バンザイ!
(テイスティング日: 2018年11月17日、燗酒は2019年1月28日)
ラベル情報
Azuma Kirin Saquê Nama
- 〈醸造元〉 AZUMA KIRIN(カンピーナス市(ブラジル連邦共和国サンパウロ州))
- 〈仕込み水〉 -
- 〈原料米〉 弥勒米(あきたこまち)
- 〈精米歩合〉 70%
- 〈特定名称/種別〉 -
- 〈アルコール度数〉 15.5度
- 〈原材料〉 Fermentado alcoólico de arroz, água, álcool neutro, e dextroze(アルコール発酵した米、水、醸造アルコール、ブドウ糖)
- 〈製造年月〉 -
- 〈その他情報〉 賞味期限 2019-03-17、ロット番号 1585、生貯
ラベルの左側には原材料。
右側には東麒麟からのメッセージが書かれている。歴史ある日本の技術をつかい、この酒でしか味わえないおいしさをアピールしている。
Feito por Especialistas desde 1934.
Este saquê foi preparado pelo original método japonês, com grau de 30% de polimento do arroz. Nama Significa sem plena pasteurização. É um saquê raro, que deve ser mantido sempre gelado. Com sabor fresco, aromático e levemente adocicado, é uma experiência única.
1934年から、プロフェッショナルが造る酒
この酒は日本独自の方法を用い、精米歩合70%で醸造されました。"Nama" とは完全に加熱殺菌をしていないという意味で、冷蔵管理が必要な貴重な酒です。フレッシュな味わいと香り、控えめな甘さで、他にない体験をお届けします。(著者訳)