私が日本酒のおいしさと出会った時(Umioのストーリー)
Umioさんが日本酒のおいしさに出会った時のストーリー。日本酒のものがたりワークショップで発表されたストーリーです。
私が日本酒のおいしさと出会った時
Umio
私が日本酒のおいしさに出会ったのは今から3年ほど前[1]のことでした。
少し日本酒に興味があったので、京都の中心部にある日本酒飲み屋さんに何度か足を運んで、店長さんにすすめられるままに飲んでいました。
その夜も、カウンターで一人で飲んでいました。いつものように店長さんに「きょうのおすすめのお酒をください」と頼みました。店長さんはグレーのラベルの日本酒をグラスに注いでくれました。
そのお酒を飲んで、少しびっくりしました。今まで飲んだことのあるお酒とちょっと違った感じで、やわらかくて甘酸っぱいお酒でした。おもわず、「これ、おいしいですね!」と言いました。
すると、店長さんが私の2つ隣に座っている男性をさして、「この方が造ったお酒なんですよ」と言いました。偶然にも、同じカウンターに酒蔵の方が2人、飲みに来ていらっしゃったのです。
お酒造りに携わる方にお会いするのはこれが初めてでした。驚きました。少し興奮しました。そして、拙い表現力で感想を伝えました。
「柔らかい甘さと新鮮な感じのする酸味がすごく好きです」
頭のなかにはシロツメクサの花が咲く春の野原の映像が流れていました。
するとその方は、後に酒造りのリーダー・杜氏さんだとわかったのですが、
「僕はまさにそういう風に意図してこのお酒を造ったんです」
とおっしゃいました。
私はそれを聞いて、とてもうれしい気持ちになりました。初めてお会いした方なのに、心が通じあった気がしました。ほんとうにおいしいお酒が、さらにおいしく感じられました。
私は、お酒を造る方などの職人さんは蔵や工房の中にこもってひたすらクオリティを追い求めている、というイメージがありましたが、すっかり覆されてしまいました。ここで酒蔵の方々と出会って、お話をして、お酒を作る方が街に出て飲む人と交流するという、京都のものづくり文化を感じました。ものづくりの本質は「つねに顧客とともにつくる」ことなのです。
お酒をつくった方のお話を聞きながら、そのお酒を飲むことはとてもたのしく、豊かな体験でした。そのお酒が大好きになりました。
このストーリーは2014年8月に開催された日本酒のものがたりワークショップで発表されたものです。
2011年9月 ↩︎